第65章 さらば「惑星ムソルグスキィ」Ⅱ ∑∑∑
コスモの絆☆☆☆ 第65章 さらば「惑星ムソルグスキィ」Ⅱ ∑∑∑
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Scene.90
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ナティスの前に突如として現れた浮谷教授に対する疑いは依然として残る。
そして、悪名高い女帝として君臨し続けてきた幸恵もよりによってこの星に連れてきていることも、信じがたい事実となっていた。。
「浮谷教授、私は貴方を正直疑っています、余りにも唐突なのでして・・・貴方本当に教授ですか?教授である事を何か証明できるものはありますか?」
その言葉に一瞬ギクリとしたような表情を浮かべた事をナティスは見逃さなかった。
さてはこの星「惑星・名もなき影」の星人が私の脳波を読み取るか何かの方法で作り上げたアンドロイドなのかも知れない。或いはとうとう植物星人たちがこの星まで支配下に入れようとして到着し変化しているのかも知れない・・・いずれにしても疑わしい。
「ハハハ、無理もなかろう、ナティス君!そうだね、あの「惑星・ムソルグスキィ」での生活が余りにも長すぎたからね。私でさえすっかり地球にいた頃の人類であった頃の思考が大分塗り替えられてしまったから・・・常に脳波をコントロールされ続けていた世界では、決して隣人でさえ信用する事など出来なかったのだからね。君が私に疑いの目を向けることも半ば当然の事だな。しかしナティス君、こう考えてみてはどうだろう?シンプルにね。私にとって君の力が必要だ。そして幸恵も。君の力を貸してほしい。これは私からのお願いだ。信じる信じないは君の自由だ。まずは幸恵に会って話を聞いて欲しい。」
浮谷の切羽詰ったような嘆願にナティスはしばし言葉を失う。
そして回想する―――浮谷教授のこのような表情を私はかつて見たことがあったであろうかと。そういえば一度だけ、浮谷教授が一度亡くなる際に「マヤの古文書」の解読の引継ぐよう私に嘆願した事があったのだが、あの時の・・・
そしてナティスは決断したのだった。
「教授、わかりました。ですがこの貸しは高くつきますよ!」
そう言うと口元に微笑を浮かべる。
浮谷教授は少しホッとしたような顔つきとなる。
「いいんだね?私に協力してくれるんだね?そうか、ありがとう!」
そして浮谷教授に従って部屋を後にすることとなった。
桜はマチコに事情を話し迎えに来てもらうこととなった。
その時にマチコは浮谷教授の名前が出た事に何故か動揺している様子であったのが少し気に掛かった―――
ホテルのロビーを出ると自動運転車のタクシーに乗り込む。
浮谷は幸恵のいる場所と思しき地区の名前を指示する。
「「モモ地区」へ案内しろ。」
その途端、ナティスの顔は一気に青ざめていった・・・まさか、此処は?
その動揺に浮谷教授は気付かぬ様子で無言でタブレットを操作する。
ナティスは高まる胸の鼓動を封じ込めながら自問自答し始める。
――――まてよ・・・きっと偶然だ。そうに違いない。かつての「惑星・ムソルグスキィ」の地名と同じイントネーションであったが、きっと偶然の一致だろう。早まるな、脳波を読み取られては居まいな?
嫌な汗がナティスの額から滲み出す。きっと気のせいだろう。そうに違いない。此処は「惑星・名もなき影」なのだから。マチコもそう言っている。桜だって・・・え?マチコも本当は植物星人であって、進化して緑の肌色をしていないだけであって、桜もいつの間にか変色し、緑に日焼けしていた筈の浮谷教授でさえも普通に地球人のようだし、ましてや私もすっかり地球人のようであって・・・全てまやかしなのか???嗚呼・・・・・
そしてナティスはどうやら気を失ってしまった―――
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「ナティス、大丈夫?」
ナティスが気付くとホテルのベットの上に横になっていた。
何故か桜も脇で心配そうに見つめている―――
どうやら元のホテルの部屋に戻ってきたようだ。
「もう、心配したわよ。気を失っちゃったって聞いて呼び出されたのよ。」
「え?誰に。」
「浮谷教授よ。」
「君、教授のこと知っているの?」
「何言ってんのよ、私達の教授でしょ。しかしあなたは重症ね、宇宙空間から帰ってきてからへんなことばかり言って・・・もしかして貴方ナティスの格好をした宇宙人だったりしないわよね・・・え、じゃあ私を人質にこの地球を乗っ取ろうと画策していたりするんじゃ・・・」
「ハハハ、こりゃ傑作だ!マチコ、テレビの見すぎだよ。」
マチコのひょうきんな態度にひとまず落ち着きを取り戻すナティス。
浮谷教授とのアポは明日に予定された事を告げると、真知子は帰っていった。
すっかり犬の桜が脳波でアクセスする。
「ナティスさん良かった、無事で。私を置いて教授に連行されていったから心配しましたよ。」
「なあに、心配は要らないさ。それより君、あの浮谷教授と思しき人のことをどう思う?」
「思しき人、ですか?あの方は教授ではないのですか?」
「うん、そのようだが、半ば信用できないような気がしてね・・・そうだ、元植物星人の君なら浮谷教授の考えている事が見通せたりしない?ほら、こうして僕と脳波でコミュニケーションするような形でさ。」
「それが・・・どうも妙なんですよ、貴方とのコンタクトはこのように可能なのですが・・・他の人の脳波を読み取ろうと試みてはいるのですが、まるでアクセスをファイヤーウォールでシャットアウトでもされたように交信不能に陥ってしまうのです。もしかしたら私もこの「名もなき影」で生活するようになってからというものこのような茶色の毛色になったばかりか、すっかり植物星人としての要素が消えてしまったのかも知れませんね。」
「そうなのか・・・私は元々この星のような地球環境で育ってきたから違和感は感じなかったのだから気付かなかったが。すると君とコミュニケーションできるのもあと僅かなのかもしれないな・・・」
ナティスは桜の寂しそうな表情にしばし切なさを覚えるのであった。
そしていつものホットコーヒーを注文する。
ノックされドアが開かれると一人の星人が入室する。それはおよそ10代の、どこかあどけなさの残る女性であった。
「君、この町に来てどの位?たぶん地元ではないだろう?」
「え、何故解るのですか?私の製造は彼の地イースター島製でございます。」
ナティスと桜は眼を丸くしながらそのあどけない娘の顔をまじまじと覗き込む。
そして彼女の言葉にすっかり呆気に取られてしまった。
確か今、製造、とか言ったよね・・・・ということは、この娘は星人ではなくて、精巧に作られたアンドロイドってことなのか?――――
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆