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第61章 エゴの功罪Ⅲ ⊿⊿⊿

コスモの絆☆☆☆ 第61章 エゴの功罪Ⅲ ⊿⊿⊿

~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~



Scene.86


Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆――――



惑星「名も無き影」にてマチコに再会したナティス。

桜はあの日に戻れたと言ったが、果たして本当なのだろうか。

僕の描いた希望の世界?その言葉の真意は何を物語っているのであろうか。


「それにしてもナティス君、宇宙から戻って来れたけど何か変わったね。」


マチコから不意について出てきた言葉―――

そう、僕はあの日の僕ではない、それは事実。

そしてこの星のマチコがあの日のままだと思い込んでいるものの、これは現実なのか?


「そうだね、変わったかもね・・・色々あったから。」


「そう、大変だったのね。それで宇宙って、どうだった?」


「ああ、果てしない。そして空虚だった。」


自分が発した言葉はあまりにも唐突な事に驚く。しかしそれはナティスにとって紛れもない正直な心境でもあった。


「そう、きっと帰る宛のない絶望感を味わったのね。でも帰ってこれてよかったね。」


そうかも知れない。そうだ、きっと僕は本当に地球に帰ってこれたのだろう・・・

ナティスはこの状況が真実かどうかを求めるよりも、この瞬間に真実として信じる事に決めたのだった。



Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆――――



桜は暫くの間マチコに預かってもらう事となった。

真知子と別れると再び部屋に戻る。

昔と変わらない日常がテレビに映し出されてゆくのをなんとなく見つめている。

ふと、「マヤの古文書」のことを思い出す。

あんなにも没頭していた古文書研究の情熱は、すっかりナティスから離れてしまっていた。

今思えばその研究の回答として、「惑星ムソルグスキィ」で立花博士が展開し完成形として存在していたものが全てなのだろう。

ある意味、ナティスにとって辟易とした世界観として映ったため、それによってすっかり興ざめしてしまったというのが正解か。

これまでの宇宙空間での出来事全てが曼荼羅の如く渦巻いており、研究の意味さえも遥かに超えた事象のほうが需要であり、今日のナティスを形作っているようだった。

ナティスの空虚さは未だ続いている―――



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



明くる朝早く目覚めたナティスは、外の空気を吸いに表に出る。

何たって久々の地球のようなこの星の空気に触れたかったから・・・


人もまばらな摩天楼はかつてのそれと同じく朝を迎えていた。これは確かな事実であった。

遠くに見える港へと向かう。


陽が高く昇り始めると、街行く車の数も増えていった。

何も変わらない朝の営みが活動し始めている。

そうだね、僕は生きている・・・ナティスは初めて生きている実感を感じたような気がした。


そういえばかつての地球では火山活動が活発化したのは丁度この頃だった。人々は地球の将来について事あるごとに不安感を募らせていたのだった。昨夜のニュースを見る限りではそのような出来事は不思議と皆無であった。やはり何かが違うのだろうか。


一回りして散歩を終えホテルへと戻る。部屋にたどり着くとAI情報を収集し始める。

しかしだ、何故かアクセスができない。すると電話が鳴った。マチコからだった。


「おはよう、朝ごはん食べた?まだなら一緒にモーニング食べに行かない?」


「ああ、まだだよ。じゃ待ってる。」


暫くして部屋のドアをノックする音がする。マチコが桜を連れてやってきた。

桜は相変わらず犬そのものであり、かつてのスパイ犬の面影は微塵も感じとれない。

人懐こく擦り寄って来ると僕のほうを見上げて尻尾を振った。


「夕べはゆっくりと休めたようね。すっきりした顔してる。」


「ああ。今朝散歩してきたからそのせいかもな。」


「そうなの。じゃあこの近くの喫茶店に行きましょう。」


二人はホテルからそう遠くない場所にある喫茶店に入った。

コーヒーの香りが充満した席には、ビジネスマンたちが食事をしている。

モーニングセットを二つ頼むとマチコが話し始める。


「さぁ、今日から忙しくなるわね。無事生還したあなたへの取材の予定がぎっしりよ。」


ナティスはその言葉に答えるでもなくコーヒーをすする。嗚呼、懐かしい味わい。


「ところで貴方が「マヤの古文書」の研究の一環として行っている宇宙開発実験についての見解だけど、実際に宇宙空間に滞在して新たな発見はあったの?」


唐突な質問に答えを見つける事ができないナティス。

「惑星ムソルグスキィ」での出来事を伝えるのにためらったから。このことは状況を精査してからでも遅くはなかろう。何故ならば余りにも超越した状況にマチコが付いてこれる筈もないだろうから・・・


「そうだねぇ・・・想像通りだったかもね。君の想像と大差ないと思うよ。」


「じゃあ、未発見の星で高等生物と接触できたってことかしら?高度文明での生活も体感できたの?」


ナティスは思わず持っていたコーヒーカップを落としそうになる。

だってマチコのその言葉は冗談に違いないから。


「異星人とのコンタクトはどんな感じ?やはり脳波へアクセスしてくるのかしら?」


さすがにこの言葉を聞くや、ナティスは動揺を隠せなかった。


「マチコ、僕達の研究はそこまで進んでいたっけ?」


「何とぼけてるのよ!まだ寝ぼけてるのかしら?いつも異星からのデータを分析しているじゃないの。何よ今更。」


これにはさすがに驚いた。それは僕が大学院の頃はまだ推測の域でしかなかった筈であり、実際に交信など出来ていなかったのだから。これは一体・・・

すると喫茶店のドアが開くと、一人の男がこちらに向かって歩いてくるのに気付く。


「やぁ、お待たせ!ああ、ナティスさんお久しぶりです。」


それは流石助手であった。一体どうして・・・


「ナティスさん、待ちましたよ。貴方が無事帰ってくるのを。心配しましたよ。それで、宇宙はどうでした?」


ん?確か僕が1000年ほどこん睡状態に置かれていた際に「惑星ムソルグスキィ」目差して去っていった筈ではなかったのか?桜のハナシによると・・・すると、流石にそっくりな別人か?


「流石さんたら、せっかちなんだから。ナティスさんはまだ帰ってきたばかりでお疲れよ。」


ナニィ?やはり流石・・・なんということだ。


「いやぁ、ゴメンゴメン。つい気になっちゃって。じゃ僕もホット一つ。」


流石が店員にコーヒーを注文する。3人は暫く無言でくつろぐ。

ナティスは俯きながら考え込む。

そうか、すると流石は先回りしてこの星にたどり着いていたのだろう。桜とも口裏を合わせているに違いない。マチコにも宇宙空間の出来事を公表していないのだろう。ならば時を見て流石と話し合う必要がありそうだな・・・下手な事を言うとこの地球と思しき星の社会活動に支障をきたしパニックに陥るだろう。下手な事は言えないな―――


マチコは学会があるとのことで桜を連れて先に喫茶店を後にする。

ナティスと流石が向かい合わせに座っている。

ようやく二人きりになったのを見計らったナティスが切り出す。



「流石さん、いつこちらに来られたのですか?」


「ええと・・・何のことでしょう?この喫茶店にはさっき来たばかりですが・・・」


「そうじゃなくて、この星にですよ。」


「え・・・ はははっ!ご冗談を。それではまるで私が異星人みたいではないですか!」


「またまた、だって貴方は僕が「炎の鳥」での旅の途上でこん睡状態におちいっている最中に旅立っていったではありませんか?」


その途端、流石助手はナティスノ顔を神妙な面持ちで覗き込む。


「あのう、ナティスさん・・・貴方は非常にお疲れのようですね・・・」


二人は暫くの間、無言で向き合う。











-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆















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