第60章 エゴの功罪Ⅱ ⊿⊿⊿
コスモの絆☆☆☆ 第60章 エゴの功罪Ⅱ ⊿⊿⊿
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Scene.85
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その頃ナティスは急速に加速度を増してゆく「炎の鳥」の中で生きた心地もしない表情で恐怖に引きつっていたのだった。
「神の都」という名の銀河によって強力な磁力が鳥を巻き込んでいった。
全てはコントロール不能のままでまるで急速に落下してゆくようにみるみる銀河の星星を流星の如く一筋の線を描きながら後方へと追いやってゆく。同時に迫ってくる星星は不思議にも取りにぶつかるでもなく、まるで鳥が何かのバリアで追われているように左右上下へと交わしてゆくのであった・・・
スパイ犬桜がAI情報を解読し、まるでCA.のようにナティスに伝える。
「アーアー、間もなく当機は「惑星・名も無き影」に到着予定です。大気圏突入時は大きく揺れますのでご用心を。」と。
「名も無き影」だと?
ナティスはその言葉に回想する―――
そういえば私が大学院で浮谷教授の助手をする傍ら、仲間内でバンドを結成し歌っていたっけ・・・その時に作った歌の名前こそ、「名も無き影」だったのだから!
「その星は一体どんな星なんだい?」
コックピット席の足元で伏せをしているスパイ犬桜に問いかけると、犬は顔を見上げて話し始めた。
「そうですねぇ、きっとそのうち解りますよ、フフッ。」
何やら意味深な桜の様子を不思議に見つめるナティス。
尚も流星の如く突き進んでゆく「炎の鳥」は大きく両翼を広げながら金色の燐粉を撒き散らし滑空してゆく。
ついに正面に一転の光が迫ってくるのだった・・・ナティスはそれを見てハッとする。
徐々に迫り来るその星は、まるでかつての「地球」そのものであったのだから!
蒼く光り輝くその「惑星・名も無き影」。
自ずとナティスの本能的な期待感とでも言うべきものが沸々と巻き起こる。
かつて自分も人類であったことを思い出したような気さえして―――
そして促されるままに引き寄せられて、鳥は大気圏へと突入して行くのであった。
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凄まじい揺れが「炎の鳥」に容赦なく襲って来る。
動揺する桜を胸元に抱きかかえながら、ナティスは恐怖の余り眼を瞑った。
やがて無事大気圏を越えた様子で振動が無くなる頃、再び眼を開ける。
それは・・・・一体どういうことなのだろうか?ナティスは夢見心地であった。
それというのも、そう、此処は地球そのものの青い海が眼下に広がっている。
青い空、白い雲が日差しに神々しく照らされ、皆もがゆっくりと近づいてくる。
海の水面に着水する前に鳥が一羽ばたきするや、後方ハッチから「宇宙ステーション船・トルストイ」が海面に落下する。そして「炎の鳥」は羽ばたいて去ってゆく―――
「ち、地球?」
ナティスが呆気にとられていると、胸元から桜は飛びのくとコックピット室の床面に着地する。いつの間にか首輪とリードをつけ、お座りしてみせる。
「桜、これって一体?」
ナティスの言葉に対して返答するでもなく、ただ尻尾を振って見上げている。
それはまるで散歩をせがむ、ただの一匹の犬であった。しかも赤毛に変色している。
遠くから救助船がこちらに到着する。
乗員が船からステーション船へとはしごをかけた。
「おお、ご無事で。お帰りなさい!通信にエラーが生じて対応できませんでした。」
ナティスは促されるままにステーション船から救助船によじ登った。
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ナティスは理解することを全て辞めることにした。
とてもじゃないが、あまりに理解の範疇を超えているのであったから。
そして船の一室で休息を取るように告げられたナティスは、ひどい疲れのせいで深い眠りに就くのであった・・・
やがて船はとある港に接岸した。
それは横浜港の様でもあった・・・
なんらかつての地球の都市が、まるで何事もなかったかのようにナティスを迎え入れてゆく~~~~
その後ナティスは港のみえるホテルの一室へと案内された。
再び眠りに落ちてゆくナティスであった・・・
再び目覚めたのは夕日が沈む頃であった。夕焼けに染まる空が何とも懐かしい。
眼下には摩天楼が彼方まで広がっている。
そして枕もとの時計に眼をやると、この星の時間で17:00を指していた。
テレビをつける。ニュースが流れている。
何やらサミットが開催される模様。テーマは「宇宙との共存」について・・・
かつての地球にいるような錯覚を拭えないまま、一先ず部屋を出ることにする。
エレベーターで階下へと下る。1階ロビーに到着。
エントランス越しに見える町並み。自動運転車が行き交う。
すると、あの茶色に変わった桜と、そのリードを持った女が目の前に現れた。
その女の顔を見るや、ナティスは茫然自失となる。
「長旅ご苦労様、ナティス。ご無事で何よりです。」
それはかつての大学院のクラスメイト、マチコそのものであったのだから・・・・
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無言のまま頷くだけしか出来ないで居るナティスは動揺を隠せないでいた。
茶色い犬、桜はかつてのスパイ犬の様子がすっかり消えていて犬そのものの様子で足元に擦り寄っている。オマエどうしちゃったの?
「ナティス君、本当にお疲れね。一言も喋らないし・・・大丈夫?」
ことの次第を飲み込めぬままのナティスはマチコに問いかけた。
「オレって・・・どうして宇宙に行ってたのかなぁ・・・」
「え、冗談辞めてよ、もう!ほら、浮谷教授との宇宙ステーション船の開発チームで実験船に乗って単独飛行に行ってたんじゃないの。そうねぇ、旅立ってから1年も彷徨っていたから無理もないわね。だって通信不能になってからアナタの船は行方不明だったのだからね。皆んな戻ってこれたのが奇跡だって言ってるわよ。あらら、まるで何千年も旅してきたように疲れきっちゃって、大丈夫?」
その言葉に顔面蒼白のナティスがロビーのソファーにもたれかかる。
何千年どころか1億年、もといこん睡状態で更に1000年は経過しているのにもかかわらず、私の学生時代の頃のままで目の前にいるマチコが微笑みかけている。
やはり私は未だ夢を見ているのであろうか?
すると、私のほうを見上げてお座りしている桜がウインクしたような気がする。
そして桜からの脳波なのか、言葉が聞こえ始めるではないか!
「良かったね、あの日に戻れて。これがあなたの描いた希望の世界なのね。」
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆