第56章 マホロバの友情Ⅲ ***
コスモの絆☆☆☆ 第56章 マホロバの友情Ⅲ ***
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Scene.81
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その頃マホロバ本宮の真っ白な大理石のリビングに戻った一同は不安に渦巻かれていた。
幸子率いる軍勢が今にも我々人類の末裔の「フォース」を牛耳ろうと企てているだろうことに、そして一体我々にどのようなパワーが秘められているのだろうと・・・
「あのう、私に一杯下さらない?こんな話聞かされちゃったら、呑まずにはまともな神経でいられませんわ。」
「ああ、オレにもくれ!」
雨宮女史とタイ国王のアベックは向かい合いながら従事にウイスキーのロックを頼む。
相馬船長の周りでは、いつものように議論が過熱していた。
「相馬さん、このままここに我々が滞在するのは果たして得策なのでしょうか?それよりもここから脱出して囚われの身になるのを防ぐべきでは?」
「それもいいが、一体どのような手段で脱出すると言うのだい?宇宙船すらないじゃないか。」
「さきほど立花博士からナティスさんの安否情報が入手されたようですが、ナティスさんはどちらに居るのですか?」
「さぁ、そこまでは申しておりませんでしたから・・・」
「もう一度立花博士にお願いしてナティスさんに救援してもらうことは可能でしょうか。」
「ほう、それは良い策かもしれないな。」
「それでは幸恵のターゲットになるだけでしょう、自殺行為ですよきっと・・・」
「それよりこのまま此処に滞在しているほうがいいな。ほら、立花博士だってこの「マホロバ宮」が不沈城だと言ってたじゃないか!」
「いいや、それって本当かい?もしかしたら立花博士こそ我々の「フォース」に期待しているんじゃなかろうか?」
「しかし、そんなものどうやって引き出すと言うんだい?我々自信が一体どうすれば「フォース」を操る術を知らないのだからな。そんなものが実在していればとっくに我々は使っていただろうし。」
「もしかして、「火事場のバカ力」みたいなもんじゃないの?そういう窮地に至ったときに発揮されるパワーなのかも。」
「これじゃあ机上の空論でただの時間の無駄だな。もっと現実的に・・・」
「現実?この今が現実なんだろうね。それとも我々は集団催眠にでも堕ち入っていて、まだ幸恵のツアーで訪れた「モモ宮殿」の中に居たりして、ハハッ!」
「確かにそれもありうるね。我々は既に緑化した頃から脳波をスパイされ、AIからも情報をインストールされてきたのだから、記憶を凌駕することだって幸恵に取ったら朝飯前の事じゃないかな?」
「嗚呼、なんとも恐ろしい・・・」
「へぇ、君にも恐怖の観念があったなんて驚きだねぇ。あれほどこの星に興味伸身で見るもの聞くもの全てに感動していたんだからねっ!」
「それはそれ。しかしこの期に居たってはすでに攻撃のターゲットにされるのをただ待っているだけじゃあないかね。立花博士から攻撃する準備の話もないのだから。」
「立花博士にとったらこれぐらいの事は「夫婦喧嘩」程度のことなのかも知れない・・・彼はナンタって既に「不死身」の体なのだから。我々人類が死のうとも生きようとも無関心なのかも知れないな。」
「ならば余計に脱出を考えたほうが得策だろうね。」
「だから、どうやって脱出するんだよっ!」
「もう、やめて!」
雨宮女史が耐え切れずに叫ぶ。
タイ国王が女史の肩を引き寄せてなだめる。
「雨宮さん、私は家族を遠き地球に置き去りにしてきてしまってからというもの、貴方だけが心の支えでこれまでの宇宙空間で生きてこられました。今の私には貴方が居ればもう何も要りません!どうかこれから起こる事態の中で残り僅かな暮らしかも知れないけれど、私達は共に小さな楽しみを見つけていけばいいじゃないですか、ね。」
「国王・・・ありがとう。私も貴方が何よりの頼みですよ。そうね、小さくても楽しいことを考えて生きましょうね!」
一同の動揺に揺らぐマホロバの夜は、今夜も深けていくのであった―――
Scene.82
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幸恵の今や側近となっていた浮谷教授。
気の振れたように苛立つ幸恵に再び懇願する。
「幸恵さん、どうか早まらないでください。貴方が宇宙病で死んだ筈の私を蘇らせて此処に導いた理由についてお聞かせ下さい。」
「そんなこととっくにご説明しましたわ。貴方を人類の末裔の長として、人類のみ持つ「フォース」によって、「幸せ」の名の下にこの星の明るい未来を構築してほしいと!」
「それはお聞きしました。ですが、貴方の望む「幸せ」の意味について、私にはどうも理解しがたいのです。」
「何を言っているの?あなた「幸せ」の意味も解らなくなってしまったの?」
「そうかもしれませんね。私は幸せについて今まで本気で考えたことがありませんからね。地球に家族を残して此処まで旅立ってきた時から、そんなもの捨ててしまったといったほうが正解なのかも知れません。もっとも、私のライフワークである「マヤの古文書」の研究に没頭していることが、もしかしたら私の幸せだったのかも知れませんが。しかし、今、解かりました。それも残酷にも「不幸」だったという答えが。
もしかしたら「幸せ」の形は個人によって皆違う形なのかも知れませんよ。」
「そうかしら?ほら、此処で共に暮らす植物星人たちも私と同じ一つの目的のために幸せに暮らしているではありませんか。この星での生活は金銭という観念も要りませんからね。好きなときに好きなものを手に入れることが出来るのですよ。美味しいものが食べたければお金を払うこともなく食事できるし、綺麗な洋服でさえ簡単に手に入ります。他に何を望むと言うのでしょうか?そもそもこの星には「エゴ」と言う概念がありませんから。人の上に立つことも、下に見下すことも、そのような欲望を満たす事は無意味なことなのです。皆平等に「幸せ」という一つの目標に向かってゆくことでドンドン幸せになっていくのだから、それ以上の望みはナンセンスですわね。」
「ある意味ではそうでしょう。貴方のお考えでは。貴方は果たして幸せでしょうか?」
「ええ、幸せですよ。植物星人もね。」
「それはどうでしょう。彼らはある意味不自由です。貴方に脳波を読み取られることで行動を抑制され、本来の自分らしさを矯正されては居ませんか?」
「え、何故かしら?」
「貴方はこの星のピラミッドの頂点に事実として君臨されています。それは彼らの脳波をコントロールすることによって忠誠を誓わせているからです。もしも離反者が現れそうになると貴方は脳波で察知して即座に対処なさっているでしょうから。そうすることで貴方は植物星人を操っているのですよ。貴方は先ほど、この星に「エゴ」と言う概念が存在しないと申されましたが、貴方が「エゴ」の塊ではないでしょうか?」
「いいえ、そうではありません。その証拠にここでは争いごとはありませんから。考えても見なさい、貴方方人類がそれぞれの「エゴ」を規制しなかった結果、戦争を起こし、利権の果てに環境破壊を巻き起こし、ひいては地球環境まで破壊してしまったじゃないの!貴方方人類なんて、ただの破壊者なんじゃないの?そのせいでこうして「炎の鳥」に救助された結果、こうして貴方方はこの星に連れてこられたのだから。少しは感謝しなさいよ!」
「それは・・・そうかもしれませんね。しかし、果たして植物星人達は「幸せ」なんでしょうか?僕にはまるで幸恵さんの考える幸せを押し売りされているだけのように思うのですが。」
「そうかしら?じゃあ、この星で争いごとがあって?そして人死にがあったかしら?」
「無いかも知れませんが・・・それで、植物星人に感情も無くしてしまって、欲もなくただ生きているだけの人生が果たして幸せなのでしょうか?」
「ええ、死なないのだから、「幸せ」です。」
「もしも、もしかしたら・・・本当は植物星人達も実は「欲望」を持っていて、それぞれに自由に行動し称え合って生きたいと考えているのかも知れないとも思うのです。そして貴方に知られない脳波以外の何かしらの方法でネットワークしながら、貴方のことを離反しようと企てているかも知れませんよ。」
「そ、そんなことって・・・・」
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆