第55章 マホロバの友情Ⅱ ***
コスモの絆☆☆☆ 第55章 マホロバの友情Ⅱ ***
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Scene.80
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「お二方のお考えに従います。」
立花博士たちの安否を気遣う二人に向けスパイ犬桜はそう言い放つと、遠く浮かぶ「惑星ムソルグスキィ」を一筋に見つめている。
きっと離れ離れとなった仲間達のことを心配しているのだろう。
救出すべきか、このまま地球に向けて出発するのか・・・
未来のキーはナティスの手に握られていた。
ナティスはコーヒーを一口すすると重い口を開く。
「さぁ、出発だ。これからかつての地球を目差して進む。」
流石助手はナティスの横顔を伺うと、その両目には涙を浮かべているではないか。
その様子に聞くまでもなく、さすがの覚悟を悟ったのであった。
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「宇宙ステーション船トルストイ」を飲み込んだままの「炎の鳥」が鼻先を地球の方向へと向ける。ひと羽ばたきすると、その優美に輝く金色の両翼から、やはり金色の燐粉を撒き散らしながら加速度を増してゆく。
真っ暗闇の宇宙空間の彼方まで佇む星星を徐々に後ろへと追いやりながら突き進んでゆく。もう後戻りなど出来ないことを知った桜の瞳から涙のしずくが零れ落ちる。
鳥は果てしなく続く地球への帰路を、まるで生き返ったかのように勢いづいて翼をはためかすと加速度は一気に2乗倍に増してゆき、こちらへ飛んでくるように見える辺りの星星を右へ左へと交わしてゆく。
ナティスは果たして人類の末裔たちを見限ってしまったのだろうか?
いいやそんな事はなかろう。
きっと立花博士を信頼しての決断だったのだろう。そしてあれか一億年のときを経過したかつての火山に覆われた地球のその後の姿に新たな希望を求めての行動に違いない、と言い聞かせながらナティスの助手として任じた相馬船長の望みを胸に流石は共に旅立ってゆくのであった。
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どの位たったであろうか、目の前に銀河系が迫ってくる。
この銀河の名前はなんだろう。
ナティスは今や眼前に迫る銀河に吸い込まれてゆく「炎の鳥」に問いかけるように思考する。
すると何処からともなく脳波により察知したのか言葉が流れ込んでくる。
「此処はね、「神の都」という銀河です。それはまさに貴方の想像の世界でもありますよ。」
嗚呼、一体私はいつの間に何をしたと言うのであろうか?
そしてどうして「私の想像の世界」とやらが存在すると言うのか―――
ただ私は地球を目差していただけの筈。
1億年のときを超えれば炎に巻かれて丸焦げの地球でさへとっくにそれは沈静化され、再びかつてのように緑豊かな星に生まれ変わっているのではないかとの希望を抱いていただけなのだが・・・
そして新たな生命体が生まれ育ち、かつての地球のような生命活動が営まれ、ともすると人類と同じく高等生物が進化した結果、高度文明が構築されているのだろうと夢想していたのは事実であるが・・・
それにしても「神の都」という響きが気がかりだ。
一体誰が名づけたのであろうか?人類なのか?
いいや、私の知る限りではそのような名の銀河は存在していない筈。
そして神とは一体どのような存在なのだろうか?
そうだ、桜に聞いてみよう。
するといつの間に現れたのであろう、スパイ犬桜はナティスのコックピット席の傍らにお座りしてこちらを見上げているではないか。
「それはですね、いずれ解りますよ。」
意味深な言葉を一言告げると、再び黙り込む。
そういえば隣のコックピット席に居た筈の流石の姿が見当たらない。
「流石は何処へ?」
すると再び桜が返答する。
「地球時間で換算するとおおよそ1千年前に旅立っていきました。」
「なんだと?一体どうなっているのだ?」
「実は貴方が宇宙病に犯され、今日までこん睡状態に落ち行っていたのであります。その間流石助手は献身的に看病されていましたが、あまりの過労と宇宙空間特有のストレスのせいで、旅立っていかれました。」
桜の言葉にナティスが驚愕する。
私が宇宙病に犯されていたなんて・・・それも1千年の時を越えてしまった。
つい先ほど傍らに居た流石助手は旅立ってしまったというのは―――
「それで、流石助手は何処へ行ったのだい?」
「はい、他の一羽の「炎の鳥」に乗って帰られました。「惑星ムソルグスキィ」に。ですが・・・」
「ですが、なんだ?」
「その後の消息については私の脳波が届くエリアを超越してしまったため不明です。」
「そうだったのか・・・」
桜と話しているあいだにあっという間の速さで「炎の鳥」は銀河系の中へと突入してしまったようだ。しかし私は地球を目差していた筈なのに一体何故に名も知らぬ銀河へと吸い込まれなければならないのだろうか、嗚呼―――
ナティスの脳波を察知した桜が続ける。
「そうですね、これだけは申しましょう。此処は「炎の鳥」からの脳波によると、全てのものを吸い込むほどの大きな磁力が生じていて、我々の意志では如何様にもならないと言うことのようです。但し貴方の創造力によっては、全ての事象の方向性は決定付けられていくのだろう、と。」
「何だと?私にそんな力があるわけないだろう!君は私を馬鹿にしているのか?何か騙そうとしているんじゃないのかい?私は地球に行くことにしたのだから!」
まるで子供のように癇癪を起こすナティスを見上げると、桜はニコリと口を開いて尻尾を振ってみせるではないか。
「この犬め、やはり私の脳に何かインストールして操っているのだな?もてあそぶのもいい加減にしろ!くだらん遊びをしていないで早く流石を呼べ」
「いいえ、これが現実です。そして言わば貴方が導いた未来でもあるのですから・・・
私にはどうすることも出来ません。
そういえば、かつて立花博士がよく口にされていました言葉に「人類のみが持ち合わせたフォース」と言うものが存在するそうです。
その意味をいまだ私には理解できていないのですが、どうやら宇宙空間の一つの要素として人類は大きく作用し、宇宙に影響を与えうる存在であって、そして如何様にも操ることが出来る力がある、という意味合いのようですが・・・」
「な、なんということだ・・・・」
ナティスの顔面から血の気がサッと引いていった――――
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆