第53章 失いかけのsoulⅦ ΩΩΩ
コスモの絆☆☆☆ 第53章 失いかけのsoulⅦ ΩΩΩ
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Scene.77
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此処「マホロバ宮・本宮」の内覧会―――
縁側から見渡せる中庭に集った一行はその雅やかな景色にしばし見とれている。
小さな金色の「炎の鳥」の雛達が小川の流れる庭園のそこ此処で木の実をついばむ。
マホロバの秋はいよいよ深まって行く気配で、そろそろ木々も紅葉に色付き始める頃だろう。
果たして植物星人たちも季節の恩恵を受けてその緑の肌を紅葉に染めていくのだろうか、相馬船長には未だこの星の出来事の全容を解明するまでには遠く至らないでいた。
「立花博士、ちょっと宜しいですか・・・」
博士のもとに先ほどの従事が現れそう告げる。
何か覚悟を決めたような表情の立花博士。
「皆さん、暫くの間、自由行動とします。」
博士はそう言い残すと、従事を連れてその場を離れて行った。
一行はそれを不安げに見つめる。何か不測の事態が起こったのでなければ良いが・・・
相馬船長は一行に向かって話し始める。
「立花博士は元妻である幸恵さんと対立している背景に、それぞれの「エゴ」が存在しているようだ。我々は地球で生活していた頃、様々な利害関係に苦しめられた挙句、火山や気候変動による自然の驚異にさらされ、ついには地球から飛び出す羽目になってしまいました。そしてそれまでの「エゴ」というものの無意味さを宇宙空間において痛感したに違いありません。我々がこの「惑星ムソルグスキィ」に引き寄せられた頃には、我々にはすっかり「エゴ」という観念が消え去っていたようにも感じ、不安の中にもそれぞれに新天地への希望を抱いたことでしょう。そしてこの星に到着しました。幸恵さんの案内でこの星の探索は始まったのですが、ここに暮らす植物星人のことを知る中で我々は再び地球上で展開されていた利害関係が展開されている事に気付かされ始めたことでしょう。この状況は如何なものでしょうか。そして幸恵と対立する立花博士の「エゴ」のもと、我々人類の末裔は何かしら利用されようとしています。博士が仰っている「人類のみが持ち合わせているフォース」については未だ把握していませんが、おそらく人類にしか成しえない途方もない力が我々一人ひとりに存在しているということなのでしょう。それを利用しようとしているのではないでしょうか。」
縁側に佇む一行は無言で相馬の話に聞き入っていたが、ざわめき始める。
「それでは単に奴隷として労働を課せられると言う事ではないんですね?」
「単に奴隷として我々を加えるというのにこんなに手の込んだおもてなしをするとは思えません。立花博士において既に「マヤの古文書」及びAIからの習得によって宇宙の構造を解明しつくしている可能性があります。そして哲学・宗教学的な知見から察するに、我々が宇宙空間において存在しうる意味において宇宙の全てに作用する「フォース」を備えていることが解明されたと言うことでしょう。ひいては宇宙が生まれた根源的なところに重要なキーを持っているのと同意義だと考えます。その利権を彼らは利用しているのではないでしょうか。」
「私達にそんな力があったの?何だか怖いハナシですね・・・」
「念じれば花開くって言葉はご存知ですよね?我々が本気で何かしらの念を強めた結果、それが成就すると言う意味なのでしょう。それが「フォース」なのかも知れません。或いは無の境地の如く、全てを受け入れて心を空にしたときに、新たな安息を得ることができるのかも知れません!」
「ならば我々人類の末裔はこれからどのような行動を取れば良いのでしょうか。」
「例えるならば、この人生の長い旅路の末路には必ず人類特有の現象である「死」を迎える事は当然のことでしょう。そう、人類には限られた命が存在していますから。その限られた人生であるからこそ、我々は旅路の途中の如何様な出来事においても小さな幸せを感じ取ることが出来るのだと思います。例えそれが地球上であろうとも、宇宙空間やこの星においても我々は今、この一瞬を共有し思考している事で存在を実感し、存在の意味を追い求めるのでしょう。もしかするとそれらには何の意味もないかも知れません。ただ宇宙空間の一部として、敷かれたレールの上で輪廻しているだけなのかも知れません・・・・
しかし、己の中には確かな存在の実感だけが残ることでしょう。そしてそれぞれが有意義に生きることに喜びを得るのではないのでしょうか!」
一同がこれまでに経験した幾多の出来事を回想し始める。
果たして私は幸せな人生を歩んでいるのだろうか?
生きて死ぬのが人生?それに何の意味があるの?
宇宙という概念自体が我々の知見において勝手に解釈しているだけなのか?
宇宙はただただ輪廻する只空虚な空間なのか?
我々のこの思考はAIによるものか?するとAIが神の存在で我々はしもべなのか?
難しい顔つきの一行が思案に暮れている頃、再び立花が現れる。
「皆さん、今察知しましたよ、脳波で。中々高尚な議論が酌み交わされていましたね、ハハハッ!」
立花博士のぶっきらぼうな言葉に一同がキョトンとする。
博士はそんな彼らのことを気に留める様子すらなく続ける―――
「はやまりなさんな、皆さん。と言っても貴方方人類にはいずれ運命のときが訪れることでしょう。それは明日かも知れない。しかしだ、私のこれまでの1億年の知見の中にもその答えは存在していない。けれども人生はこうして続いている。それは自分の信念に忠実であるからこそだと思うのだよ。ほら、「信じるものは救われる」ってよく言うじゃないですか。私は人の言葉を全て鵜呑みにはしません。但し、その中から自分がチョイスした私にとって有意義なものだけを信じつつ、こうして未だ死ねない人生を歩み続けているのです。自分で納得できる人生を念じながらも、自分という存在の意味を確認し続けているのです。残り1%の人類としての可能性、「soul」を信じて!」
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆