第49章 失いかけのsoulⅢ ΩΩΩ
コスモの絆☆☆☆ 第49章 失いかけのsoulⅢ ΩΩΩ
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Scene.71
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一行の乗るリニアは音も無く静かにバリケードの中へと滑り込んだ。
と同時に勢いよくバリケードが閉じられる。
その中の様子は先ほどまでの草原地帯とは打って変わって何も無い。
もとい、全て焼き放たれたように焦土のようであった・・・・
「これは一体・・・」
相馬船長はその荒廃したエリアが彼方まで続いていることに恐怖を憶える。
一行も窓外の景色に言葉を失ったままで居る。
尚もリニアは先へ先へと理不尽にも突き進んでゆく。
「一体此処は何なんだろう、この星で始めてみる悲惨な状況だ。」
「おお、あの先にまだ煙が上がっているぞ!戦争でも起きたのか?」
「幸恵がさかんに「幸せ」について語っている本音には、不幸なことが巻き起こっていることが原因ではなかろうか・・・」
「もしかしたら、それを隠す理由で今まで我々に作り物の綺麗な部分しか見せなかったのだろうか。」
「一体我々は此処に何故連れてこられたのだろう、我々は幸恵の罠から助け出されたと思っていたが、これも研修の一貫なのか?」
不安な一行は何も把握できずに口々に想いを膨らませている。
「あ、あれは何だ?」
一行の一人が焦土の彼方から一台の車両を発見する。車両と言うよりは、何かしら馬車の様にも見えるが、遠すぎて未だ全容はつかめない。
すると、リニアが進路をそちらに向けて突き進み始める。
静かに滑るそのスピードにより見る見る車両が迫ってくる。やはり緑色の馬車のようだ。
ようやく全貌がつかめる所まで辿りついたところで、リニアが停車する。
窓の向こうの馬車が、少しずつこちらに向かってくるのが見える。
それは、やはり2頭立ての馬車であり、馬も緑色に染まっていた。
リニアのハッチが開かれてゆく―――
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一行はリニアから降りると、近づく馬車を怪訝に見つめていた。
それは一行の前に横付けられるや扉が開放される。
馬車の中からシルクハットにステッキのその人物が降り立つ。
その老紳士は、やはり緑の植物星人と思しき皮膚の色である。
するとこちらへ顔を向ける。
「やぁ!お疲れ様、皆さん。」
その風貌とその声は、紛れもない立花博士そのものであった!
ただその姿があまりにも緑に染まっていることに、誰もが直ぐには識別できずに居た―――
一同は立花博士がここに居ることを不思議に思い動揺していた。
「やぁ、待っていましたよ、いやぁ永かったなぁ、終にこの日が来るとは・・・なんたって1億年だからね。改めてお久しぶりです、人類さん。ま、先日バーチャルではナティス君とお話しする事はできたがね!」
相馬船長が疑問に思いながら話しかける。
「貴方は何故これまでの期間、そう、1億年もの月日をこうしてご存命でこられたのでしょうか?」
「嗚呼・・・ま、話せば長い話にはなるが、どうやら此処での食生活は植物由来であって、そうすると私はすっかり人類が抜けてしまったのであろう、私の見識では植物になってしまったのだろうね。この星は地球では考えられない事象に満ち溢れている。或いはこの星の環境に適応した植物の独自進化と進化するAIからの学習によってこのような形で高等星人として成り立ったのだろうね。」
難解な回答に一同がポカンとする。
立花博士の話が続く。
「すでにAIプログラムによって貴方方もこの星に関する事象の一部は把握されているものと認識する。そう、ほぼ植物星人となった私も1億年もこの星に居ると貴方方のお考えを全ての脳波によって認識することが出来るのだから。
さて、貴方方は幸恵による1週間のミッションを課せられていたようだが、それは貴方方にとっても不幸なことであるばかりか、我々反対勢力にとっての今後の脅威にもなりうる、とAI検証を通し知ったことで、私は慌ててリニアを送り込んだ次第なのだ。
そしてある意味、貴方方の脳波をコントロールすることによって、何の疑いもなくリニアに乗車させることにも成功したのだった。
そう、つまり我々は幸恵陣営とは言わば反対勢力的な立場として存在しているのである。
我々の住むこのエリアは、此処「惑星ムソルグスキィ」の中でも唯一と言ってよい安全な地帯なのである。
その訳はというと、幸恵の脳波によって我々の行動が監視されるのを防止するために、妨害電波で防御するシステムを構築して安全を確保していることにある。
しかしだ、幸恵陣営の開発した新型タンポポ爆弾による猛攻が先日展開されたことにより、この有様さ。このような焦土と化してしまった今、我々も新たな対抗指針を見出さねばならない状況下となったのだ。
ところで、貴方方が我々にとって将来的な脅威になると言う話に戻そうか。
先ず、私の「マヤの古文書」研究もこの1億年で大分解明されたものさ。
その中で我々人類には秘められたフォースがこの宇宙空間の成り立ちの中において特異なほどに必須な要素であることが明らかになったのだ。
私は長期間この星での生活を送ったお陰ですっかりその要素を失ってしまった・・・
しかし貴方方はこの星に到着してから日も浅い。
そこで幸恵はその要素の能力を利用するため、手中に収めようと画策していたのだ!」
更に難解さを増す立花博士の論説に一行は必死で理解を試みている。
相馬が質問する。
「端的に仰っていただきたいのですが、その人類のみの能力とはどのようなことを起こせるのでしょうか?」
その言葉を聞いた途端、急に博士が表情を曇らせる。
「端的に今は回答を控えるが、凄まじく驚異的であり宇宙的なのだよ。
貴方方にそれを伝えるのには、もう少し理解が進んでからのほうが得策かもしれないのだから・・・・
貴方方も地球に居た頃に、このような言葉を聞いたことがあるだろうか。
「人は、自分の思い描かなかったことを形にする事は不可能である。思い描いたとしてもその1%をもかなえる事は困難である。可能な限り大きな夢を描くことによってのみ、人はそこに近づけるだろう。」と。
実はね、これはかつての「マヤの古文書」にある一説から引用されたものだったのさ。
私はそれを解釈するまでに、この1億年の殆どの期間を費やしてしまったのだ。
そしてある一つの回答に信憑性を持つ出来事が巻き起こった事により、私は確信したのだ。これは正に脅威そのものである。
その後残念なことに、私の脳波は幸恵によって筒抜けになってしまったことで、幸恵の欲望が渦巻いてしまったのだ。
そして、ある意味私を含め地球の人類の末裔たちがこの星に導かれてしまった事でさえも、ともすると必然性から来ているのだから・・・・」
暫く一同が沈黙する。
立花博士が再び話し始める。
「これから貴方方は我々のエリアで共に生活する中で理解が進むことだからご心配なく。
さて、それでは皆さん、ここで立ち話も何だから、リニアでこの先へ進むとしようか!ようこそ、マホロバへ!」
博士がそう言うや、目の前に佇む緑の2頭立て馬車が変化し始める。
はらはらとまるで粉々に地面に降り注いだと同時に、別の形状へと変化してゆく。
すると3人の植物星人の形として露になってゆくではないか―――皆が圧倒される!
「彼らは我々と宇宙空間を旅してきた仲間達、その植物の末裔だ。その特性からいかなる変化も自在なのさ、それじゃあリニアに搭乗しようか。」
一同はリニアのハッチから乗り込んでゆく。
立花博士は相馬船長の隣席に着席する。
博士は何やら小声で相馬の耳元で呟く。
「君は般若心経の一説をご存知だろう。
「空即是色 色即是空」
端的に言うなれば、これが先ほどの回答として最も近い表現なのかもしれないね。」
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆