第47章 失いかけのsoul ΩΩΩ
コスモの絆☆☆☆ 第47章 失いかけのsoul ΩΩΩ
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Scene.68
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「モモ地区」の宮殿で一夜を過ごした面々は夕べのホールに集合していた。
これから巻きおこる幸恵の言う「平和のため」の何かしらの活動に、それぞれは不安を隠せないままで一夜を過ごしていたのだった。
雨宮女史が隣の席の船長に話し始める。
「あのう、相馬船長さん、私達はこの先どうなってしまうのでしょうか?」
寝不足の表情の相馬船長は一つため息をつくと口を開く。
「そうですねぇ・・・私にもはや知る術はありません。しかし万が一我々がこの星の囚われの身になったとしても、何らかの救いはあると思いますよ。少なくとも現段階では我々は丁重に歓迎されているではありませんか。」
「そうですかねぇ。あまり勘ぐるのも良くないのでしょうが、しかし、私達は決して自由の身であるとはいえませんね。」
「そうかも知れませんね。事の次第に委ねるしかないのでしょう、今となってはね。しかし、私には一つの希望、それを先日旅立ったナティス君たちに託しているのですよ!」
「き・ぼ・う、ですか?」
「はい。彼らは今頃、我々がこの星に降り立った「宇宙船トルストイ」でこの星の探索に当たっていることでしょう。そして何かしらの回答を携えて、きっと此処に戻って来るに違いないと・・・ね。」
暫くして幸恵が現れる。
そそくさと壇上に上がると一同は静まりかえる。
「皆さんおはようございます。ゆっくりお休みできたでしょうか。
それでは早速ですが、今日からあなた方にはここ「モモ地区」宮殿において暫くの間研修を行っていただきます。それは、私たち緑の星人にとっての究極の目的である「宇宙平和計画」への第一歩として、あなた方人類と我々星人がタックを組んで行く為の第一歩にもなる活動と言えるでしょう。」
一同が幸恵の演説に耳を傾けている。研修そして「宇宙平和計画」?一体何のことだろう。
不安はますます増してゆく面々は、ただ長々と続く幸恵の言葉を理解しようとしていた。
1時間ほど続いたであろうか、演説が終了すると幸恵は一行をホールから戸外へと案内し始める。
リニア駅同様に真っ白尽くめの簡素な通路を奥へ奥へと突き進む。
彼方が霞むほどに先の見渡せないほどの長い通路が続いている。
既に5分ほど歩いた頃、ようやく突き当たりのエレベーターらしき扉が見え始めた。
幸恵が近づくと、スッと自動で静かに扉が開かれる。すると・・・
「さぁ、こちらへどうぞ。」
幸恵がその中へと一行を案内する。
一行は既に言葉を失っていた。
それは扉から放たれる金色の光が目に刺さってくるようであったため、その光の世界が果たして我々の身に何かしらの危険性が無いだろうかと戸惑っていたためでもある。
相馬船長が幸恵を引き止めるように告げる。
「さ、幸恵さん!これは一体?」
「ああ、ごめんなさい!ご説明もそこそこに。忘れていました、私はすっかり慣れっこでしてね。」
「此処は一体何でしょうか?」
「いずれ解りますよ!」
幸恵はそれだけ告げると、一向にサングラスを配る。
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濃いめの黒サングラスを掛けたやや怪しげなもはや緑にすっかり染まった皮膚の一行は、黙って光の中へと案内されてゆく。
そこは誰もが想像だにしない程に、ただただ黄金であるその巨大な空間は光の巣窟である。
この世の全ての、いや、この宇宙空間の全ての黄金を集めたような規模のその巨大なホールが眼下に広がっている。
一行を乗せたエレベーターはその絶え間ない光り輝く世界の中へと下ってゆく。
まるで溶岩が煮え立っているような眼下の世界がただ光の塊であるかのようで、濃いめのサングラス越しにも少しも判別を赦さないでいる。
溶岩の奈落の底へとかなりの速度で滑り落ちてゆくエレベーターの四方八方に絶え間なく広がってゆく広大な空間は、端の端さえ見渡す事は不可能であり、下の下さえもまだまだ気付かされる事は不可能のままの一行の動揺は絶頂までさかのぼっていた。
嗚呼、我々もこの黄金の世界に解かされて、とうとう此処が終の棲家となるのであろうか。それとも此処が金の採掘場であって、我々は此処で終身雇用としてブロイラーの如く奴隷となって最後の人類として飼いならされていくのであろうか。面々は虚ろな緑色に染まった表情を金色の輝きの中に浮かべている。
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「さぁ、そろそろ到着です。ようこそ!」
幸恵は虚ろな表情の面々と対比的に、なぜか楽しげにそう言う。
眼下にはようやく、やはり全く金色の地面が現れた。
エレベーターを降りる怪しい虚ろなサングラスの一行は、その迷路のような通路を右へ左へと抜けてゆく。通路の途中にはそれぞれ部屋割りがあるのだろうか、扉が無数に装備されている。いずれ我々もその一室を割り振られるのであろうか・・・まるで鳥小屋のように――――。
ようやく通路の突き当りまで到着すると、やはりスッと自動に開かれてゆく。
その先にも金色の通路は続いてゆく。何処までも迷路のように―――
我々にもはや思考の余地は残されていなかった。
ただただ照り輝く世界の中でこれまでの夢や希望のことさへも思い出す事はもはや絶望であり、従うものの術として先導者の後に身を委ねているようだった。
一つの無の境地の如く面々は思考を失い続けてゆく。
これまでの地球や宇宙空間のことさへも海馬の隅っこまで永久に消え去ってゆくのを感じていた。
「まずいっ!」
幸恵の後を追っていた相馬船長がふと我に帰ったように叫ぶと、足を止める。
「これは・・・マインドコントロール?」
その言葉に気付いて振り向く幸恵は相馬にニヤリとする。
「あら、どうされたのですか?」
「貴方は一体・・・もしや我々を騙そうとしているのでは?」
「あら、一体どうされたのですか?まぁ無理も無いでしょうか、いきなりこんな所に連れて来られたのですから当惑するのも無理はありませんわね。良いでしょう、少し種明かしをしましょう―――」
そう言うと幸恵は金色に輝く地面に座り込むと、体育座りの格好をする。
無言の怪しげなサングラス集団も同じ格好で座る。
「では、お話しましょう。これからあなた方にはここで生活していただきながら研修を遂行して頂くのです。それというのも、此処はいわば私が知る限りでは宇宙一の金の採掘場でありまして、かの「炎の鳥」もここから生まれてきているのであります。」
その言葉を聞いたとたん一同がざわめく。まるで我に帰ったように・・・
相馬が質問する。
「その、「炎の鳥」って、我々を此処に連れてきた?」
「はい、そのとおり。彼らは此処から宇宙中に巣立っていったのであります。」
「そうなると、ここは鳥の巣?」
「ええ、巣であり餌場でもあります。彼らの魂は此処から誕生し、此処で生涯を終えて輪廻しているのです。」
「輪廻って?」
「そうですねぇ、簡単に申しますと、我々植物星人はDNAを過去から引き継いで常に新陳代謝しながら寿命を全うするという概念も無く、まるで終わりの無い進化を遂げていますが、「炎の鳥」については貴方方人類と同様にある意味寿命のようなものがあって、ここで再び金として溶解し、更に輪廻の如く此処で金の卵として誕生し産声を上げるのです。」
「すると・・・「炎の鳥」はマシーンではなく、生命体なのですね?」
「我々やAIにおいてもそのテーゼの回答は未だに持ち合わせては居ないのです。だって我々がこのような進化を遂げ、異なる生命体として存在し、そして死んでゆく意味なんて誰も知り尽くす事は不可能なのですから・・・そう、今私達が存在している理由ですら、誰も解明していないのですからねっ、ウフフ―――」
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆