第46章 緑の大地の逆襲Ⅴ◆◆◆
コスモの絆☆☆☆ 第46章 緑の大地の逆襲Ⅴ◆◆◆
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Scene.66
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「宇宙船トルストイ」は鳥にのみこまれてしまった。
ナティスら運命共同体3人は「炎の鳥」の内部でこれから巻き起こるであろう囚われの行く末に只黙り込むことしか出来ないで居た。
真っ暗闇の鳥の内部がにわかに明るくなってくる。
そして真っ白内部が眼前に映し出されていった。
すると船内放送が流れ始める。
「アーアー!ようこそ我が鳥の中へ。これからのミッションについて説明しよう。ひとまず我々はこの「惑星ムソルグスキィ」の大気圏外へと脱出することになる。君達は一億年前にこの星の内部に到着して以来のことになるね。久々の脱出になろう。そもそも何故この星から脱出することになるのかは、君達にある任務を遂行して頂きたいからなのだ。それというのも既に君達も認知済みのことであろうが、この星の支配権が幸恵の手中に納まり始めたからである。この星がこの一億年の間に植物星人によって開拓されてきたまでは良かった。
初期の頃は例の立花博士率いる「マヤの古文書」にのっとった豊かの星の構想において忠実に再現してきたのであったが、幸恵率いる反逆勢の凄まじい繁殖によって当初の平和が捻じ曲げられたことが発端となったのだ。植物星人たちの儚い平和はそれにより脅かされていった・・・
突然変異した反逆勢は幸恵によって作り出された遺伝子組み換え種であり、それは幸恵にとって都合の良い従順なまさに「ブロイラー」のような存在となった。新種は一様に感情を失い、幸恵の脳波によるコントロール下で半ば奴隷のように忠誠を強いられたのであった。交換条件として快適な生活が無償で享受できるという偽の「平和」を謳い文句に情報操作されているため、新種たちはこれが自分たちにとっての「平和」なのだと錯覚していった。そして幸恵の独裁政権が誕生して行ったのだ。それ以来立花博士の率いる植物星人たちは徐々に行き場を失って隔絶したコロニーを形成する羽目になったのだ。幾度と無く
巻き起こる攻撃は日増しに大きくなっていった結果、今回のタンポポによる攻撃となったのだ。
そこでだ、君達に植物星人たちの新たな居留地を開拓していただきたい。それというのもかつての君達人類によって生命活動を営んでいた「地球」がその候補地として持ち上がった。君達が脱出せざる終えなかったかつての火山活動もこの一億年でようやく再び君達が生命活動するのに必要な環境がよみがえり、そのタイミングで植物星人たちの脱出計画を遂行しようというのだ。」
「地球」――――ナティスはこの唐突な宇宙人「炎の鳥」からのミッションに動揺する。
そうか・・・あれから我々はこの星に到着することで一億年の月日をワープしたのであった。その間に地球環境がかつてのように蘇ったのか!
再び鳥が囀り始める。
「君達にとってもそれはそれは悪くないハナシではなかろう。なつかしの地球に帰れるのだから。このミッションについて君達の同意があれば早速詳細な協議に入ろうと思うのだが、ナティス君、君の意見はどうだね?」
同意?ナティスが首をかしげる。
それを察知した鳥が再びさえずる。
「そうだよね、こりゃ滑稽だね!こんなところまで勝手に誘引しておいて、ミッションについての同意を求めるなんていうのは!しかしね、最低限君達の願いを叶えたいのだよ。それというのも、私は幸恵のような「エゴ」の塊の独裁者が嫌いでね。ま、私の勝手な思い込みとでも笑ってくれてもいい。しかしね、君達には自分たちの未来の人生を自分たちで選択して欲しいのだよ。それが自然というものさ。」
選択?我々の未来?
傍らで聞いていた植物犬の桜が突然言葉を遮る。
「私はそのミッションには従えません。私達はこの星、「惑星ムソルグスキィ」で数え切れないほどの輪廻を繰り返して此処まで育ってきました。私もかつては地球から派生してきたことには違いありません。しかし、この一億年の月日は私たちにとって掛け替えの無い長い月日であったのです。ここで育った記憶は全て良い想い出となっています。立花博士と過ごした夢のような日々、皆で開拓してここまで積み重ねてきた礎を無にしたくはありません。この月日は全て、この「惑星ムソルグスキィ」を愛しているからこそ叶って来たと言っても過言ではありません。きっと仲間も同意してくれると思います。立花博士もこの星の大地の一部になっているのです。簡単に脱出など出来ません・・・・」
するとこれまで沈黙を崩さなかった流石助手が呟き始める。
「私も桜の意見に賛成です。理由は少々異なりますが・・・・私は既に地球を脱出するときに決心を決めてきました。そしてこの「宇宙船トルストイ」と運命を共にしようと。そしてこの星にたどり着いたとき、私は心から新天地への憧れを抱いたのであります。例の「マヤの古文書」の内容にも影響させられましたが、新たな星での生活に自分が何処まで挑んで行けるのか興味が突きませんでした。その矢先にまたもやこの星を脱出することなど考えられません!私にはやらなければならない義務があります。そうです、立花博士の抱いた熱い思い、それを継承してきた桜さんの仲間達は我々がこうしている瞬間も幸恵の猛攻に対峙しているのではありませんか。そしていまや崩れようとしている新天地の理想郷としての構想をエゴの塊の新種たちに凌賀されてしまっていいのでしょうか?ナティスさんだってそう思いますよね?」
ナティスは流石の熱意に押されてはいたものの、深いため息をつく。
それから遠くを観る様な眼で話し始める。
「私は・・・・地球に戻りたい――――」
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Scene.67
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歓迎会の宴は夜遅くまで催された。
会場の一同は幾分先ほどまでの不安感から解放されているようだった。
幸恵の席に陣取った目つきの悪い植物星人がその様子を伺いながら何やら話し込んでいる。
「と申しますと、処分の方向で?」
幸恵はボルドーのグラスワインを一気に飲み干すと囁く。
「そうです。やはり人類は人類よ、あの連中を制御するのは不可能ね!」
「そう申されましても、何か他の利用方法があるのではないでしょうか?」
「無駄よ!感情の起伏の激しい人類がいくら植物化したって、根っこの感情の振れは到底拭えないから。いずれ離反する筈。適正のかけらもありゃしない。ならばさっさと葬り去ったほうがこの星のためよ。」
暴君と化した幸恵の目つきが異様にギラギラと光る。
彼女のエゴの餌食となる人類の末裔達はそんな暗い未来が待つことなど露知らず、談笑に浸ってゆく――――
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆