第40章 俺たちの旅路Ⅲ***
コスモの絆☆☆☆ 第40章 俺たちの旅路Ⅲ***
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Scene.59
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ナティスと流石助手の乗る自動運転車は一直線に伸びる草原の一本道を尚もひたすらに彼の「宇宙船トルストイ」目差して突き進んでいる。
すっかりうたた寝をしてしまったナティス。
それは陽光のせい。
気付いた頃には陽光もだいぶ西に傾いていた。
先ほどの夢と思しき立花博士の会話。
もう一度頭の中で回想してみる。
立花博士が言っていた「絶対神」。
それが幸恵の正体なのであろうか。
そしてあの夢は僕が勝手に描いた想像の世界なのか?
或いは脳波にインストールされた虚像の世界なのか―――
ナティスの選んだ旅の行方が霞み始めていた。
「間もなく「宇宙船トルストイ」に到着します。」
自動運転車からアナウンスが流れる。
「ナティスさん、いよいよ旅の始まりですね!もう僕なんかなんだかワクワクしてきましたよ!」
虚ろなナティスとは正反対に上機嫌な流石助手。
ようやく到着した頃の姿そのままの「宇宙船トルストイ」が目の前に現れ始めた。
そういえば浮谷教授の遺骸が此処に保管されたままのはずであるが・・・ふとホテルに現れた浮谷教授のことを思い出す。
ま、そんな筈はないな。あれもバーチャルな虚像に過ぎないに決まっている・・・・
ようやく巨大な船体の傍らに自動運転車が停止した。
そそくさと荷物を取り出すと例のカードキーをポケットに取り出す流石助手はハッチのノブにそれを翳すとハッチが開く。
ソーラーの充電状況を調べるために、早速コックピット室へと向かう助手を尻目に、ナティスは先ほどの気がかりを解消すべく荷物室へと向かう。
荷物室には数多く陳列された遺骸のカプセルが並んでいる。
宇宙病の餌食となった輩たち。
せっかくの期待がこんな形で終わってしまった彼らのことを思いながらも、浮谷教授のカプセルを探すべく作業に取り掛かろうとした矢先、奥のほうで一つのケースが開かれていることに気付く。
「まさか!」
はやる気持ちを抑えながら、そのほうへと近づくナティス。
そして・・・ネームプレートに懐中電灯を照らすと、そこには教授の名前が書かれてあった。
「こ、これは!」
カプセルの中身はもぬけの殻だった。
そう、そこには浮谷の遺骸は安置されて居なかったのであった。
と、言う事はだ。僕の目の前にあの時現れた浮谷教授は本人の可能性がある。いや、本人に間違いなかろう・・・これって一体?
ナティスはキツネにつままれたような表情をぶら下げて流石の居るコックピット室へと向かう。
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流石は既に機体の機能のチェックを終えて準備に入っていた。
ナティスは力なく流石の座席の隣に座る。
怪訝に思った流石がナティスに問う。
「どうしたんだい、ナティスさん?そんな顔して。」
「う、うん。ま、後で話そう・・・」
不可解ではあったが流石は「宇宙船トルストイ」の発進準備を終えると、機体が垂直に持ち上がってゆく。
夕闇に沈む頃、二人のたびは荒野の彼方目差して始まっていった―――
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その頃怪訝な表情の一行を乗せたリニアはようやく目的の場所に到着した模様で静かに停止する。
幸恵の案内で一行は開かれたハッチから、先ほど同様に真っ白なプラットホームへと降り立ってゆく。
真っ白な通路を先へ先へと歩き出すと、やがてエレベーターの入り口にたどり着く。
一体この「モモ地区」の宮殿の広さはとてつもなく計り知れない規模だと一同が気付く。
リニアで数時間も走り続けていたのだから・・・
エレベーターに乗り込む一同。
誰の口にももはや言葉など持ち合わせては居ない。
先ほどの幸恵の話の緑の星人同様に、感情すらももはや無くしてしまった様な気さえする。
「さ、こちらです。」
幸恵に促されるまま辿りついたフロアの中へと入ってゆく。
そこはまるで巨大なホテルのロビーのようなホールであった。
一同は通路の先にある一室へと入っていった。
どうやらそこは会議場のようであった。
一同は促されるまま着席すると、テーブルに置かれたWelcome drinkを呑み始める。
それは中々上質なアールグレイだった。
幸恵も席に着くと話し始める。
「皆さん長旅お疲れ様でした。
これより一週間後と遅ればせながら、あなた方人類の末裔がこちらにお出でになったお祝いとしまして、ささやかではありますが歓迎会を開催したいと思います。」
すると従事たちが待ちかねたように次々に料理を運んでくる。
一同の座る大きなテーブルはたちまち豪華な料理に埋め尽くされていった。
「では皆様の今後の明るい未来を祝して、乾杯!」
幸恵の晴れやかな表情とは裏腹に困惑を隠せない一同がそれに従う。
幸恵は祝杯の音頭を取り終わるとそそくさと部屋を後にしていった。
「国王、先ほどの話、如何に思われますか?」
雨宮女史は戸惑いを隠せないでいる国王に問う。
「そう申されましても、私の頭は既にパンク寸前で・・・それより今日は何だか悪酔いしそうだ。」
「そうですよね。私だってあんな話聞かされたら不安になっちゃう・・・もしかして、あの人がこの星を牛耳っているのかしら?そして私達は明日からこの星で奴隷として働かされるのかしらね。そう考えたら怖くって・・・」
「いや、どうだろう。まだ何も決まっては居ない筈。しかし、幸恵は「平和のため」と言っていたから心配するのも無駄かもな。ま、とりあえずご馳走にありつこう。」
やはり不安を隠せない相馬船長も、この状況下に居ては次の一手を模索してゆくだけだったのだ。
植物星人の進化の末は「ブロイラー」として永遠に幸恵に従い続けることであり、そんな幸恵の描いた平和が、星人の想う平和と果たして一致しているのであろうか、と。
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆