第34章 それぞれのエゴの行方***
コスモの絆☆☆☆ 第34章 それぞれのエゴの行方***
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Scene.53
喫茶店ソナタで朝から議論を交わしている一同、クラブハウスサンドを頬張りながら、尚もアールグレイをおかわりし続けているのだった――――
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自然気象学者のハリスンは浮かない顔をしている。
「そうもおかしい。あくまでAI情報の解析結果を基にした仮説に過ぎないのだが、この星の磁場によるものなのか、地球の赤道基調の時点とは異なる星の回転が起こっているようだ。過去100年間のデータから見られる気象変動の乱れは、凡そ地球のそれとはかなり異なっているようにも思うのだが・・・」
その言葉に反応した宇宙物理学者のミックは何か閃いたように言い放った。
「地軸の振れ、所謂、極ジャンプが頻繁に生じているのでは?一つの仮説では有るが。海流のデータからは異常な海流が頻発している事実。一定の周期性は皆無であることから、極性が常に不安定に振れている可能性が見られる。」
その言葉に驚いた科学者の森が顔をしかめて寡占する。
「やはり。これは科学的な知見からも伺える。この「マヤ地区」の成り立ちからも、如何様な環境変化にもオーバークオリティー的に対応可能なシステムで構築されているような気もする。詳細な情報は何故かオブラートが掛けられていて踏み込んだデータは全く得られなかったが、確かなのは謎に満ちた完成度によってCITYのシステムが確立されているということだ。」
化学博士のナカムラーノは思わず唾を飲み込む。
「実にケミカル的な見解で誠に申し訳ないのですが、お聞きいただけると光栄です。実はワタシもこの星の組成分析の中で、かつての地球にて確認されたものとは異質な組成が存在していないと成り立たない事象がこの星の過去の歴史において頻発していると仮定しないと証明できない事象が見られるのです。それというのも、例えば地球上で言ういわゆる水、H2Oのような存在ではありながら、ともするとここではそれ自体がある化学変化により燃焼活動を引き起こすことさえ想定できるのです。もとい、でないと説明すら成り立たないのですから・・・・」
一同は一様に黙り込む・・・・・
どれくらいの時が流れたであろうか、静かな喫茶店の窓外に夕暮れの赤みが差し込む頃、振子時計の音だけがひたすらに響いているのだった。
口火を切ったのは地理研究の第一人者、モグロウ。
「皆さん、何か忘れていませんか?どんな星でも地殻変動などが気象に影響を与えるのは既知の概念ですよね。そして僕らが今現在共有しているAIデータの数々は、我々が知りうる短期間において得られている情報がベースとなっているので、立証性には遥かに欠落しています。私の研究過程の中での話として、例えば彼の地球の場合、その星自体が生き物であると考えないと成り立たない現象など多々存在しています。宇宙空間からの影響も作用している筈ですし、もっとも我々の知見なんてほんのちっぽけな存在であって、今日の宇宙の理屈の中では数%も人類は把握していないのも事実であります。
解明なんて崇高な域には凡そ到達など断じて達していません!」
生物学博士のトミマロも頷きながら、
「私もモグロウ氏の意見に賛成です。AIからの解析情報の正誤についても解釈の違いによって逆転する可能性さえ含んでいる。
我々は此処「マヤ地区」のAI情報のみに頼って一つのベクトルの中から答えを探求してはいるが、そもそもそれの真偽について誰が計り知れようか。我々がこの地においてそれを自らの目で、そう、人類の末裔として肌身において実証していくことが、我々研究陣に課せられた使命とも言えなくは無いかい?お、今の言葉、ちょっと格好良すぎるかなぁ、へへへッ!」
一同に俄かに笑みが浮かぶ。
冗談交じりな雰囲気になったものの、一同のその眼差しは研究者としての使命に燃えているのであった。
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ホテルのバーの席ではCIA長官、メキシコ法務官、キューバ軍部長官たちが尚も神妙にひそひそと会話し続けている。
「それでは、この星における我々人類の安全保障はどうやって守っていけば良いのかね?」
「それでしたらAI情報の推測になりますが、都市機能の構造把握を進めないと何とも・・・」
「そりゃそうだ。ワシらは与えられた情報以外、軍事施設の存在など何にも確かな状況の指標を握っては居ないのだからな?」
「キューバ軍部長官の仰るそれは・・・
もし、もしもの可能性としてのワタシなりの意見ですが・・・我々に与えられている情報が全てフェイクであった場合も考えないといけないと言うことですよね?」
「おいおい待てよ、君達はしばし考えすぎなのだよ・・・
そう、宇宙の長旅で頭が疲れているに過ぎないよ。
そう急いて考え成さんな。
先ほども言ったように意外とこの星の住人たちは支配しようという欲望自体、そのものが存在しないのだろうよ。
我々よりも遥かに高度な進化を遂げた植物星人にとって、我々の1億年遅れの陳腐化した思考形態そのものなど、既に取るに足りないものにさえなるのだよ、きっと・・・
アスタマニャーニャ!明日は明日の風が吹く!の理論で全てこなせば、ワシらは恐怖のあまり思考停止に陥る危険性や彼らに従事する必要性などは、これっぽっちも持ち合わせてはいないのさ!」
「ま、あくまで我々人類の末裔の推測の範囲での回答だな。
一つ危険な状況に落ち入っている事実としては・・・
それは、君達も実感しているように、我々の脳波を常に彼らに読み取られているということなのさ。
ある意味我々の思考の全ては情報開示として彼らの、もとい彼らの用いているAIシンクタンクとリンクして常に思考は吸い上げられており、言うなれば必然的に彼らの監視下に置かれているのも同じということなんだよ!
良きにつけ悪しきについても、全て我々の情報は彼ら植物星人たちに見透かされインストールされ続けているのだから!!」
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆