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第3章 ムソルグスキィのテーゼ♪・・・

コスモの絆☆☆☆   第3章 ムソルグスキィのテーゼ♪・・・



流石助手にとって、この宇宙ステーション船「トルストイ」の命運が、ある意味無秩序な、この宇宙空間において船長・相馬に委ねられていることが疑義でならなかったのだ・・・




~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~~


Scene.08 立花博士のシェルター植物生活



豊かだ。

絶え間なく豊かな時間を費やしている。

私は何て幸せ者だろう・・・


立花博士は地球最期の人類となった今、そう、私が1年前に輩たちを失ってはいたのだが・・・そしてとうとう酸素供給が危うくなった頃、私の命でさえも最期の灯火を迎えるべきでは有っただろうに、どういう訳か、私はこうしてこの火山活動でドロドロの焼け焦げた地球の中で、そして何とか無事な形が残っているこのシェルター内で無事に暮らしている。


ともすれば高齢の私である時分において、アルツハイマーでも発祥して現実と虚構との狭間で我を見失い続けているのかもしれないが・・・もしそうであったならば、とうの昔に死んでいる身であり、この現在見ゆる映像の断片は私が勝手な自我において脳内で作り出している、いわばバーチャル空想の産物として成り立っているのかもしれないが。


なにせ確認しようにも、他人など此処には既に人っ子一人居ない。

この場において他の生命体としては私が研究用に持ち込んだ植物達のみである。

もっとも、あくまで仮説ではあるのだが、此処にある植物達のおかげで私に必要な酸素量がまかなわれているのは間違いない。1年前と同様に機能低下した酸素生成機の不調はそのままである訳で、輩たちが逝去したお陰で酸素濃度が保たれ、奇しくもこうして生きながらえている、と考えるのが現実的であろう。


そして私は十分なまでの植物達の営みにより、辛うじてそれらの成長における余剰分を食すことで生きながらえても居るのであった。

ベジタリアンとなってしまったこの私。

こんな状況でいつまで食いつないでいけるものか。

以外に体調は問題ないのだが。


現在このシェルター内の植物の種類は数万種にわたっている。

あろうことか、この特異な環境化において新たな輪廻が起こったせいだろう、私が知りうる上でも数百種類の新種が誕生しているのも不思議である。


もっとも、食すのに良い作用の植物ばかりではない。

私がAIデータを頼りに食すことが可能であるか調査したところ、ほぼ毒草の類が増加したに過ぎないのである。

薬品など何か他の用途に必要な効果があるのではないかとも思うが・・・


そういえば、私のライフワークである、「マヤの古文書」についての解読もこの一年間に進展があった。

もっとも私の勝手な解釈が支配しているのだが、これまでのデータの蓄積を利用することで内容の信憑性は高精度であると自負してはいる。


研究を進める中で、人類が誕生したことがこの星にとっての最大の問題となってきたであろうことが浮き彫りになったのだ!

無論、私は宗教などに傾倒しているわけではないのだが、純粋にこの星に引き起こされた現象、宇宙空間由来の影響、人類が引き起こした急激な地球環境破壊、そこから導き出した理論データを分析し主な根拠としており、筋道として相違ないことが証明された。


何よりも、この私が実体験の中で証明している。


人工物による影響がこの星の生態系や自然環境を大きく損ねたことが、地球の大規模な変異の引き金となってきたのだ。


それにしてもこのシェルター内環境は、地球環境にとって私の考える上での理想郷が凝縮されている。


水、空気、その連鎖が織り成す科学的知見による完成度は、生物にとっての地球として最も望ましい環境を構築している。

人類が吐き出す二酸化炭素などよりも、よっぽど火山活動のほうが彼ら植物連鎖環境にとって有益であり、地球の寿命を大いに引き伸ばす効果があろう事は容易に推測できる。


もしや・・・植物由来の高等生命体が支配する時代が過去にも有ったのではないかとの憶測さえしてしまう・・・・・


私の身体に必要なタンパク質は穀物から得ることが出来る。

しかし長年動物性の食料により成り立ってきた人類の末端である故、当然必要十分条件を満たしているとは言い難い。いずれそれによる影響が身体に発症する事で露呈するであろう。

だがそんなことなど、今やどうでも良いことではないかな。


ある意味、この地球上で引き起こっている現象も起因した経緯共々進化の一端であると考察する。従来までの自然・不自然の事象という定義などあまり意味はなかろう。



ここに居る植物たちにとって、どうやらクラシック音楽は心地よく捉えられているようだ。

音楽も人類による創作の一つではあるが、系譜として地球上で引き起こっている息吹のようなもの、そこに存在する音のハーモニズムがもしかしたらクラシックのリズムに近しい調べなのかもしれない。

すると、既に植物達は耳を持っている、或いは振動センサーを有しているのではなかろうか。


或いは絶えず響く共振による周波数帯が合っているのだろうか。

判らない。それは彼らに聞いてくれ。

しかし心地よく成長を促しているのは事実である。



「マヤの古文書」において、まぁもっとも、わたしの一つの見解ではあるのだが、「風は地球の音から生まれている」・・・このような説によって証明できやしないか。

古代からこの星によって引き起こされる水や自然現象の織り成す奏で、そして天空の電気的な轟音、更に宇宙空間からの様々な波長の照射によって、全てのこの星での生命体への影響が引き起こされている。

月からの海水の満ち干により波の奏でる交響曲、あらゆる音がこの星には渦巻いている。



そう、地球にとって太陽は絶対的だ。

現在は火山活動により厚みを増した大気である故に太陽光は望めない。

澄み渡っていた時代には日光は地表面に滞りなく突き刺していた。

あの頃が懐かしい。

植物たちにとっての基礎を司る必要条件となっている。

光合成なくして生きることなどできやしないのだから。

植物にとっての活動は、太陽を無しにしては語れないだろう。


そして、水の恩恵。生命体の体内には隅々まで行き渡っている。

人間にとっての血液、最も人間にとっても水の割合が7割ほどであることは周知の通り。

その意味において動物たちも違わず。


栄養分。これは体内で生成不能な栄養素を大地から吸収し成り立っている。

このシェルターの植物の大半は仮想的土壌、及び水耕栽培の水溶性養分を植物が吸収することによって受給している。

化学肥料による部分も大ではあるが、幾万ものその身をも枯らして輪廻することによってお互いにうまく養い合っている。バクテリア分解の技術、それにかかる菌類の代替物によって此処では可能となっている。そのうち自発的に行える進化の過程もあろう。


そう、私にとっての最大の研究案件である、「マヤの古文書」についての探求は果てしなく尽きない。或いは私の勝手な解釈の名の下、付け加えてしまっているかもしれないが・・・


その回答が、まさかこの眼前において恐ろしくも引き起こっていること・・・それによって私の解釈の信憑性がより一層高まる!


というのも、高等生物というのはなにも人類に限らず、全ての生命体において、機能的には成り立つのではないか・・・という疑義に行き当たるからなのだ!




Scene.09 トルストイに導かれた輩よ



これは何ということだ!

こんなことって・・・


生きていたのか! 立花博士・・・・・・・・・・・






惑星~ムソルグスキィは接近し続けているようではあるが、まだただ単に引力の範囲に到達したばかりの状況であった。成層圏までは未だ遠い。


その引力は尚も理不尽にも宇宙ステーション船「トルストイ」を引き込み続けているのだった・・・


私は立花博士の意志を次ぐべきなのだろうか・・・


ナティスはそこはかとなく沸き起こる自分の境遇について、ただ思案に暮れるだけだった。




~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~~



「相馬船長、私からの質問ですが、ご存知の範囲で結構なのですが、この「トルストイ」の乗員はどのような選考によって乗船することになったのでしょうか?」


その流石助手からの言葉に、わずかにキリッとしたように見えた相馬船長が口火を切る。


「おお、良いところに気がついたね・・・・実は、この船の運行についての画策が持ち上がったのは、かつてのNASAとは全く別の、その経緯を辿ると・・・


 東京都太田区に拠点を構えていた下町のロケット用パーツを製造していた町工場から派生した、とあるベンチャー企業が成り立ちだったのだ。


表向きは下町の町工場という体裁を保ちつつ、あくまでマスコミの表舞台には立たず、あらゆる政治的な柵や企業などの営利目的の機関とは一切接触のない立場を取っていた。 シンクタンク及びAI機関から逐次最先端の技術供与を享受する先鋭的教育機関、宇宙関連企業との協力の下、ビックデータAIを活用し人選をした賜物なのだ。


乗船時に選抜された200名とは、有名どころで言うと、タイ国王、NASDA理事、WHO長官、キューバ軍部、シリア事務次官、インド医療財団長官、てなところか、彼らは既得権益であるが企業家などの営利目的の輩は排除している。博士は故・浮谷教授筆頭に自然気象学及び宇宙物理学、占星学、易学、哲学、宗教学、生物学、民俗学、科学、化学、地理、物理、機械工学、臨床心理学、社会政治学、法律、情操教育関連などの上級博士、CIA長官、くらいかなぁ。」


それを聞くと流石は既に狼狽しきった表情を浮かべている。

相馬船長は続ける。


「もっとも、私も宇宙飛行経験を買われた上級パイロットであり、君もその助手であるのだが。」


我に帰ると、流石が再び質問する。


「一体この人選は何を想定しているのでしょうか?」


「そうさな・・・新たな文明の構築、とでもいうべきかな。」


「と、ということは、新たな人類の新天地において社会構築に貢献可能な人選と言うことで?」


「ああ、君も察しが良いね。しかし、私にはどうも「抜け」があるような気がして成らないのだが・・・」


「と、申しますと。」


「彼らの「エゴ」が交錯することによって、ともすれば理不尽な論争の末、何も決まらない可能性を秘めては居ないかと・・・」


「それもそうですね。ですが、それぞれのエキスパートを備えているのですから、間違いないかと。」


「君は甘い。絶対に対峙し続けるに違いないよ。」


「そうしますと、誰が主導権を取るのが懸命な策とお考えですか?」


「それは~~私達では?」


「え、私も?」


「そうさ、だれもこの操縦桿をコントロールすることなど不可能なのだから。」


「船長・・・もしかしてアナタは・・・」


「ああそうさ、彼らを牛耳っているようなものさ!」


「そ、そうですよね・・・彼らの命も・・・」


「そうだよ、何か悪い?」


「え、別に。」


「そうだろぅ、俺らがこの宇宙空間において進むべき道を選択しているのだよ。誰が何を言おうと、私の指先一つでどのような軌道にも機体を乗せることが可能なのだから!」


「そうですね、船長の良心次第ですよね。」


「は、まるで僕に良心が無いとでも言っているのかな?」


「いいえ、決してそのような事では御座いません。」


「なら良い。君は黙って僕に従っていればいいんだ!」


「は、はいっ!」


怪訝な面持ちの流石助手を他所に、この宇宙ステーション船「トルストイ」の運命、そして各界の清栄たちの運命は相馬船長の牙城に委ねられて漂うことになっていった・・・・






/////// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆












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