第26章 彼の地、ムソルグスキィの支配者よ♪♪♪
コスモの絆☆☆☆ 第26章 彼の地、ムソルグスキィの支配者よ♪♪♪
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Scene.44
「ナティス君、先ほどの幸恵さんだという宇宙人の話、どう思う?」
相馬船長は表情の強張ったままのナティスに問いかける。
流石助手も緊張を隠せないままでいる。
「そうですね、私の解く「マヤの古文書」の文面から察するに、そのような一説は記載されていないようです。しかし別の解釈で何かを導き出すことは可能なのかとも思われます。」
「そもそも鳥達の意志としてきたが、あの幸恵婦人を象った宇宙人がこの星を支配しているというのは驚きだ。そして今、我々は未知の宇宙人と交信していたのだよ。これは私の記憶が確かならば、もっとも彼女に私達の記憶を書き換えられていないというのが大前提だが・・・なにしろ宇宙人と接したのは確かなのであろう・・・・・」
「それは不思議は無いですよ。私の人生の中でそのようなことが起きるのは信じがたいことではありますが、いわばこの宇宙空間に無数に広がる無数の銀河が存在しているのならば、異文明が存在して居たって不思議はありませんからね。しかし―――」
沈黙は続いていた。
それは客室においても同様であった。
「私達、もしかして見てはいけないものを見たのかもしれませんね。」
「ううむ、不安しか私には残っていないのだが。この現実を受け入れるべきなのか、果たして私達が集団催眠にでもかかってしまっているのだろうか―――」
「こんな思いをするなんて、何かわたしたちの方向性は誤っていたんじゃなかったかな。あのまま地球と一緒に運命を共にしていたほうが良かったかな。」
「そんなことありませんよ。地上に産み落とされたものは全て幾多の理不尽な運命に振り回されながらも人生を全うする必要があるのですからね。最もここは地上ではありませんがね・・・」
「しかし変幻自在とは正にこの事だな。宇宙人の本当の姿はどのように成っているのかな。アメーバ状の可能性もあるかも。」
「私達の運命を左右することが出来たり記憶に入り込んだり、正にアメーバそのもの。」
「我々を遥かに超越した高度な文明を持ち合わせているのだろう。或いはそのように集団錯乱を起こさせるだけのテクニックがあるのは事実なのであろう。」
「何しろ恐怖でしかないなぁ・・・」
「霊現象に近いものがあるのだろう。或いは次元をも超越できる何かが。」
「至って理解不能な事象だ。この宇宙空間において人類の英知なんて本当にちっぽけなものなんだね!」
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「大気圏に侵入の際は非常に揺れるものと予測できますので皆さんご注意下さい。」
いよいよ眼前に迫る巨星「ムソルグスキィ」。
一同は来る未来への好奇心と不安の入り混じった彼の地への第一歩に向けて思案する。
やがて振動が訪れる。
絶え間なく揺り動かされる船体に人々は不安に駆られる。
嗚呼、人類の存在とは一体なんだろう。
他の高度文明は一体我々に何を望んでいるのだろう。
そして彼の地で何を目的にして我々は行動するのだろう。
全ては宇宙人の手の内に委ねられているのであろうか。
あの宇宙人を信用して良いものだろうか―――
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振動が収まると「ポトン」と産み落とされたかのように船体が着地する。
すると例の宇宙人である幸恵からメッセージが流れる。
LIVE放送がジャックされたのか、はたまた乗員それぞれの脳内にテレパシーとして伝えられたような気さえする。
「皆さん、ようこそムソルグスキィーへ。さぁ地上へと降り立って下さい。」
それを聞いた船長・相馬が客員に宇宙服の装着を促す。
「先ず私が降ります。そして確認作業が済んだ段階で皆さんの降船を促しますので暫くお待ち下さい。」
ざわめく人々。
その中で尚も苛まれているナティスがそこにいた―――
嗚呼、私は一体何を信じればよいのだろう・・・宇宙人に操られた末にこの地に到着したことが、果たして人類の末裔の存在として正しかったのだろうか。
人類は地球上においてその役目を全うすることが自然な摂理ではなかろうか。
この、あまりにも不自然な事象をどこまで受け止めればいいのだろうか。
まてまて、とうの昔に船出した人類ではなかったか。
古文書においてもマヤの時代から人々は救いを求めた際に宇宙へと飛び立って行ったに違いなかろう・・・博士達の研究の到達した解釈においても同じこと。
そして私も研究者を自負しているならば、必然的に未来への探求を事欠かないのが筋ではないだろうか。
今更、間違っていたとしても後戻りなど出来ないな―――
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そして船長は降り立った。
草に覆われたような大地が果てしなく続いている―――
これなら人類も地球上と同様に生命活動を営むことが出来るだろう。
大気濃度や地質、温度についても地球上と変わらないことに驚く。
そろそろ乗員達にも連絡しよう。
宇宙服を装着した乗員達が船体から吐き出されていった。
一様にこの星の光景を新たな気持ちで観察している。
「へぇ、草が生えている。というか、草だらけ。」
「なんじゃこれ、地球みたいだぞ。」
「地球より環境良いんじゃないの?もしかしたら。」
「これなら住み心地は良さそうだ。」
「ほら、空を見て。鳥達が弧を描いて飛んでいる!」
「あ、炎の鳥があんなに?」
「数え切れない・・・もしかして食われる?」
すると船体の傍らにいるこれまで誘引し続けた「炎の鳥」のハッチから、例の宇宙人である幸恵が降り立つとこちらに近づいてくるではないか。
一同は恐る恐るその容姿に見入る。
宇宙服を着用するでもなく、生身の体そのままでいる。
「さぁ皆さん、ようこそ我が星へ。今日から私達と共にこの星で融和活動を繰り広げましょう。」
彼女はそういうと船長に近づく。
「この星のルールとしては、これまで地球上において行ってきた全ての罪を捨てて、欲望やエゴを浄化していただきます。
そしてその暁には新たな生命活動にふさわしい文明を構築していただきたいのです。
それがこの星との「融和」という事になります。」
その言葉に誰一人として理解したものはいなかった。
何れ明らかになるとは思うが。
船長は宇宙人である幸恵におどおどしながらも質問をする。
「立花博士の船はどこですか?」
「ええ、それはとうの昔に朽ちてしまいました。」
「とうの昔って?それはどういうことですか?我々は地球時間で1日前に見失ったばかりでしたが・・・」
「そうですね、あなた方の科学ではまだ立証されてはいないので理解不能かと思われますが、あれから次元の変異で地球時間とこの星の地上での時間に途轍もない差異が生じてしまうのです。ですからあの頃に到着した植物宇宙人たちの文明がその後勃発し、今に至っているのであります。かれこれ地球時間でいうと1億年ってところでしょうか。」
「な、なんですと!」
人類にとって、この星の全貌が誰も想像する術すら持ち合わせていないのだろうか―――――
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆