第20章 昔日のブルースを口ずさむ⊿⊿⊿
コスモの絆☆☆☆ 第20章~昔日のブルースを口ずさむ⊿⊿⊿
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~~
Scene.35
金色なる神、或いは太陽神、フォース、輪廻、水と金、生死の探求、愛、虚空、存在、鼓動。
これらのワードのパズルを紐解きながら解き明かすのは一体誰なのであろうか♪♪♪
QQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQ
☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
その頃すでに大分植物の如く緑色化の進んだ立花博士は、誘引された挙句シェルター船が「炎の鳥」のハッチの中へと引き込まれてゆく状況下において、もはや成す術も失っていた・・・
嗚呼、私の人生ももうこれまでか。
後のことなどもうどうでもいい。
宇宙人だろうがなんだろうが好きにするがいいさ。
それにしてもこんな結末になろうとは予想だにしなかった。
果たしてこれが私にとって幸であろうが不幸であろうが、何も考えられない。
しかし植物達もこの場において同様な思いで居るに違いない。
そう、われらは運命共同体。
そして新たな運命が今、目の前に展開してゆく。
と、そこへ桜が現れる。
「立花博士、私達にこの状況が何を意味するのか気付いたことがあるのですが・・・」
「何だと?」
「ええ、私達に新たな「融和」が生じようとしています。それは目の前にある「炎の鳥」から得られた脳波なのか何のか、そのう、私達に察知されたメッセージにおいて解釈されたことですが・・・」
「もう少し詳しく説明してくれないか?」
「何と申しましょうか、非常に申し上げにくいのですが・・・・」
立花博士に一抹の不安が沸き起こる。
博士は覚悟を決めた表情となる。
「博士に分かりやすい表現を使用しますと、それはある意味「ブルース」のようなものでありましょう。博士もご存知のようにブルースとは黒人霊歌のような魂の叫びの歌で御座います。そしてあの「炎の鳥」からのメッセージはそれと類似の叫びのようなものであると察知しました。」
「何?ではあ奴は生き物であると?」
「いえ、それにつきましては未だ解読されていません。しかし、もしかしたらそうなのかもしれません。あの鳥の叫びなのか鳴き声なのか・・・それは少々悲しげなように聞こえてならないのです。」
立花はこの桜の言葉に驚愕する。
もしや「炎の鳥」が泣いている。
それは何を意味するのだろう。
そして何故に我々を誘引するのか。
ますます誘引の速度は増して行くばかり。
ついにハッチの内部へとシェルターが入り込む。
QQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQ
☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
やがて「炎の鳥」の内部へとシェルターが到着する。
そしてハッチは閉じられてゆく。
博士はモニターを覗き込むや捜査を開始するべくAI情報を駆使し、分析を急ぐ。
そしてあるアンサーが導かれた。
それはやはり悲しみにも似た、我々を哀れむような嘆きにも似て、せつなくも必死に笑顔を浮かべようと苦渋をかんでいる感慨にあふれている。
時としてそれは昔日の日々を嘆いていた時分の立花のことを哀れんでいるのかも知れず、この未知なる宇宙空間に孤独にも煌びやかに漂う「炎の鳥」の悲哀であるのかも知れず。
嗚呼、この鳥ももしかすると我々と同様、一抹の寂しさを携えているのかもしれないな。
その寂しさの中で必死に耐えて生きているのかもしれない・・・
そういえば、私がこの孤独なシェルターに連れてきてしまった植物達にとっても、この悲壮感を携えているのかも知れず。
嗚呼、私はなんという身勝手な行いをしてしまったのであろう。
私のエゴのせいで彼らにも無用な日々を過ごさせて、それを省みることも無くただ目的意識だけが私のエゴとして支配していたのだった。
あのまま今は遠き地球と共に運命を終わらせることが、私にとってももしかしたら幸せだったのかもしれないな。彼ら植物達もきっと無用な進化をする筈も無く、植物は植物のまま輪廻を全うしたかったに違いなかろう。
立花はそう考えると昔日のブルースにも似た感慨に浸る。
QQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQ
☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
立花の状況は感慨とは関係なく、理不尽にもこの「炎の鳥」の内部へと導かれた我々は事の次第を見守る。
そして立花のとった行動とは・・・・
多分、発作的な衝動に違いない。
そう、私のこれから行う未来は、私のエゴによって切り開くしかないと確信したのだから!
「た、立花さん、やめて・・・」
桜が悲鳴を上げる。
桜のその声も既に届かない様子で操作を始める。
そしてこの「シェルター船」のハッチは開かれた。
人類の新たな第一歩。それは今執り行われたのだ。
QQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQ
☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
立花がハッチから真っ暗闇の「炎の鳥」の内部へと降り立つ。
桜の静止も振り切って。
もしかしたら、発作ではなく何者かに呼び寄せられたような気がして。
ふしぎなことにその内部へ降りたとたん、辺りが金色に光り輝き始めた。
まばゆいばかりの金色に明順応した立花は、内部の先を見渡す。
どうやら通路のような構造になっており、奥へとその通路が続いている。
まるで何かに呼び寄せられるかのごとく、立花は一歩一歩その先へと歩き出していった。
すると奥から何やら人影のようなものを観とめる。
一体何者だろうか、こちらへ一歩づつ近寄ってくるのが遥か通路の彼方から見え始める。
息が止まりそうなほどに緊張感と鼓動が高まる。
老体の立花はその姿をハッキリと認めることも無いままその場に突っ伏した。
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~~
Scene.36
「おかえりなさい。」
立花はかすかに聞こえるその声のせいで気を失っていた自分に気づく。
先ほど突っ伏した場所ではなく、もはや違う居室のようなスペースの床に寝ていることに気付いた。
まだぼんやりとしか辺りが見えていない。
なんだか雲の中に居るような真っ白いエリアに居る様子。
ここはどこなのか?
そしてさきほど聞いたその声の主と思しき人影が現れる。
雲間から視界が徐々に晴れ渡っていくように、目の前に輪郭がハッキリとし始める。
もしかしたらまだ夢でも見ているのかもしれないが。
「おかえりなさい」
その人影の姿が目の前にくっきりと現れた。
そういえばこの声に聞き覚えがある、そして目の前には。
いいや、やはり私は未だ夢の中に居るのだろう。
きっと、気を失ったままで居るに違いない。
なぜならば・・・・それは妻の幸恵に違いなかったから。
「さ、幸恵?」
立花がそう言うと、目の前の彼女はコクリと頷く。
博士は未だ目の前で起きている事象に苛まれ続けている。
だって、幸恵は地球に置いて来たはず・・・
とうの昔にはぐれてしまって、そして彼女はあの地球にて人生を全うしたに違いないのであるから!
嗚呼、やはり私のこれは幻想に違いない。
しかし夢にしては妙にリアルでならない。
私としたことが、とうとう私の突飛な行動のせいで私自身の人生をも終わらせてしまったのではなかろうか?
ともすれば、私も既にこの世には居ない。
そうなると、やはり此処はあの世なのだろう。
測り知る術は私には持ち合わせてはいない・・・
「おかえりなさい、あなた。」
幸恵と思しきその目の前の女性は地球人そのもの、もとい、幸恵だ。
この期に及んで私はある疑義を抱いてしまった。
どうせ死んでしまった私であるにも拘らず、潔さもかけらさえも無く。
それというのも、この目の前の幸恵は、実は私の脳波を読み取った宇宙人の模倣によるフェイクではなかろうか、と。
そうだ、妙にリアルすぎはしないか?
だって私の五感は、シェルターに居たとき同様に生き生きとしているのであるから。
とても死んだなどとは思えない!
ああそうさ、どうせ私はエゴの塊。
いつだって、そう、私は幸恵や家族が止めるのさえ振り切って、私の目差す学問の将来展望をもって、家族と別れを告げてしまったのだから。
ああそうさ、なんとも哀れなこのご老体。
どうせ老害に決まっている。
植物達だって内心そう思っているに違いない。
今頃皆でクスクスほくそ笑んでいるに違いないな。
ざまぁみろって、エゴの塊のこの私のことを。
宇宙人達の餌食に成ってしまえって、思っているに違いない。
それにしても目の前の幸恵はやはり別れたあの時と何ら変わらずに佇む。
私を優しい眼差しでみつめている。
そして私に「おかえり」と告げながら。
そう、あの頃と変わらない。
私だけがご老体であって、幸恵はあの頃のままに微笑む。
なんて優しきその眼差し。
もうどうだっていい、再開できたのであるから。
そう、たとえ宇宙人であったとしても、そんなこと関係ない。
私は先ほどの怒りも静まり、祈りにも似た心境になっていった。
夢ならば、どうかいつまでも消えないでおくれ・・・幸恵、と。―――――
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~~
////// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆