第17章 過ぎた日は振り向かないから・・・
コスモの絆☆☆☆ 第17章 過ぎた日は振り向かないから・・・
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Scene.30
立花博士は進化した植物たちのその行く末が知りたくて使用がないでいる。
そして彼らが本当に私に危害を加えないかと心配はたえずに。
「博士、最近鏡は見られましたか?」
「鏡?何故そんなことを?」
「博士も此処での生活が大分長くなられましたね。ここでの食事といえば植物由来のものばかりだったでしょう。そのせいで貴方も私達の組成と大分近くなってきたと思えるのですが。」
かつての桜の木であった桜がそんなことを呟き始める。
「我々のシェルター船を導き続けている「炎の鳥」の目的である「融和」。その前に我々植物達との融和が既に始まっているとは思われませんか?そうです、博士が心配されている私達の進化と同時に、博士の体においても地上で作用していたものとは違う進化が見られるのです。ある意味それも「融和」の一事象かと・・・」
桜は博士にそう告げるや、手鏡を博士に手渡す。
その鏡を恐る恐る覗き込む立花。これは・・・
なんと、どうしたものか私の顔の皮膚の色が薄緑色を帯びているではないか!
「驚かれましたか?そうです。私達植物の組成が博士にも現れてきています。私の予想ですが、此処での生活を継続する限り、私達に近づくのも無理はありません。決して悪くは無いと思いますよ。」
立花博士は動揺を隠せないでいる。
黙って手鏡をみつめている。
「博士、貴方のお気持ちは分かります。地上での貴方の人類としての容姿に慣れ親しんできたでしょうから。
しかし既に地球環境とは大分異なる環境下においては異なる変化も受けとめるべきではないでしょうか。
私達も昔の地上での生活を、決して忘れたわけでは有りませんから。
しかし、私達も受け入れたのです。全ては新たな進化の過程だと。」
博士は立ち尽くしていた。
少なからずこの環境下での食生活や生存の術は彼らと何ら変わらなくなっているのだろう。
私は彼らの進化のことばかりに目が行っていた。
自分のことさえ顧みることも無く。
そう、それは私の教授生活そのものでもあった。
かつての青い星でのそれは、家庭すらも顧みず、自分のエゴを貫き通していた。
その結果、家族たちとも逸れてしまったのだ。
しかし、私はそれを全て受け入れる形で今に至っている。
私の身に起きたこのような現象についても同様。
これは受け入れるべきなのであろう。
「では、私も君達と同じような姿になるということかね?」
「多分、限りなく近づくことでしょう。残念ながら・・・」
やはり、そういうことか。
彼らは既に私を凌駕するほどの知見を共有しているに違いない。
彼ら植物達は、更に進化を続けている人類由来のAIからの情報の最先端までもが、人間において可能なレベルを遥かに超えたスピードで習得し続けているのだから。
そればかりか此処宇宙環境からの情報すらテレパシーか何かで習得を進め続けている。
もはや私の知識レベルなどとうの昔に超えたレベルに到達していよう。
私の将来は既に彼らに委ねられているに相違ない。
博士の中にある意味「諦め」にも似た想いが湧き上がってゆく。
「桜さん、「炎の鳥」からの新しい情報を入手しました。」
一人のやはり人類様の容姿をした植物が桜に近寄って継げる。
「そう。それで?」
「どうやら我々を誘引してゆく軌道が、「惑星ムソルグスキィ」に向かっている模様です。しかもどんどんその速度を速めています。2倍、或いは二乗倍に!」
それを聞くや、立花博士は居ても経っても居られず部屋を後にする。
戸外へ出ると、先ほどのふらふらした足取りはしっかりと成っており、駆け出してゆく。
やがて操縦室に到着すると席に着く。
そして・・・窓外には彼方にあの「ムソルグスキィ」が迫ってきているではないか!
これは・・・・ということは、もう一羽の「炎の鳥」と合流しようとしているのであろうか!
誘引の速度は増すばかり、そして・・・・彼方に黄金に輝くあの飛翔体が。
紛れも無くそれは、私達を誘引しているものと同様に、金色の燐粉を棚引かせながら惑星軌道を周遊しているのが遠巻きながら微かに現れた。
そして・・・我々のシェルター船を誘引する鳥の後ろから、ハッチのようなものが現れると同時に、急速にシェルターが引き込まれ始めて・・・・・
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Scene.31
相馬船長は覚悟を決めたように流石助手に指令を下す。
それは、宇宙船トルストイからこの得体の知れぬ「炎の鳥」へと降り立つことを意味している。
「これから鳥の内部の調査を開始する。
AI情報によるとボットによる内部環境の調査は可能と確認出来た。
その後宇宙服での耐性が見込めた時点で短時間での探索を開始する。」
「船長、早まっては居ませんか?」
「決してそのようなことはない・・・では君、このまま我々は囚われの身のまま此処に居ろとでも言うのかい?」
「いえ、そういう訳では・・・」
こうなってしまうと誰の意見も無駄である事は流石助手には分かっていた。
ただでさえ強情な相馬が今回は尋常でない好奇心をむき出しにしている。
やがて「宇宙船トルストイ」のハッチから探査用ボットが下ろされてゆくのがモニター越しに映し出される。
客室にも同時放映が開始され始める。
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「いよいよ始まったようだな!」
「嗚呼、これは人類始まって依頼の新たな挑戦の一場面ですわね。何だかステキね!」
カウンター席でいつものタイ国王と占星学博士雨宮女史が事の成り行きを見つめている。
相変わらず好奇心旺盛な二人。
「とうとう私達は人類史上の歴史的瞬間の場に立ち会うことになるのですね。」
「そうだね、既にそういう瞬間がいっぱいあったから、私にはもはや感動も無いが。」
「あら、冷めてらっしゃるのね、国王様は。」
「ハハッ!そうでもないさ。私の興味は止まないからねっ!では我々の未知との遭遇に乾杯!」
「あら、まるで宇宙人とコンタクトでもするような心境ですわねっ!イヤンッ!」
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////// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆