第15章 スパイラルがせつなくて・・・
コスモの絆☆☆☆ 第15章 スパイラルがせつなくて・・・
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Scene.26
宇宙空間での遊覧飛行は未だ行方さえ誰も知らぬまま漂い続けている。
なんと静かなこの宇宙。生き物の呼吸さえも聞こえぬままそれぞれの銀河は輝き続け、唯誰を待つでもなく巨星たちが回転運動を続けている。
違う時間軸にてそれぞれの自転、公転運動は互いに関係性を持ちながら何処を目指すでもなくその存在だけが誇示されている。
ともすれば宛を無くした星でさえ、何処を目指すでもなく方向性に誘われながら最期の輝きを瞬かせながら空間を流れてゆく。
誰のためでもなく、その静かな空間を織り成しながら生まれては枯れてゆく。
それぞれの時間軸は違えども、過去に戻ることは赦されないままに時の狭間に漂い続ける。
それらのある意味生命達は、過去の記憶を理不尽にも掻き消されながら一方向の未来へとある時は速く、ある状況下ではゆっくりとそれぞれの希望を無視して回転しながら漂い続けている。
無常にも時は流れてゆく。
それぞれの残像のその先に、一体何が待っていようともスパイラルは続く・・・・
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立花博士は疲れをおぼえていた。
この先のことばかりが焦燥感を掻き立てられる。
何故、何故私がこんな思いをしなければ成らないのか・・・
それは理不尽にも続く自分の意思とは関係ない誘引活動を危惧してのこと。
志は潔く勇気を振り絞ってはみたものの、やはり闇の中への誘いは心を不安にしていった。
正直な話、植物プラントでの進化の状況でさえも、これまでの植物に対する観念から逸脱したその進化の過程がまるで高度文明を構築しつつあることに恐怖さえ憶える。
この無の境地ともいうべき宇宙空間に居るにもかかわらず、身の周りにはかつての私の辞書の中には無かった、私の意志に反した進化の中で私だけが逆説的に老いという退化を強いられ続けることに、一人残された切なさだけが付き纏っているように感じる。
そんな渦中ではある博士だが、やめていた酒を少しだけ嗜むことでひと時の解放を憶えるのであった。
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Scene.27
トルストイが「炎の鳥」の中へ吸い込まれてからというもの、相馬船長と流石船長助手は慌しくAIデータの解析に追われていた。
彼らの身に巻き起こったこの想定外の事象の中で、必死に命綱を手繰り寄せるように・・・
「流石君、この飛翔物体について少しでも判ったことはないか?」
「ええ、今のところこの金の塊である鳥からは生命反応らしいものはありません。」
「自動運転の兆候は見られるか?」
「特に電波や波動は全く見られない模様。今現在それらはこの宇宙船トルストイに向けて発せられていないようです。」
「そうか・・・一体何を企んでいるというのか・・・」
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「炎の鳥」に引き込まれたトルストイの窓外は真っ暗闇のままでいる。
様子を伺うのみの誰しもがこの景色で不安に駆られるのは無理も無い。
トルストイの客室の面々は複雑な心境で事の成り行きを見守っている。
いつものテーブル席ではWHO長官メルトとインド医療財団長官グスタフが議論している。
「グスタフ君、我々はとうとう「炎の鳥」に食われちまったようだね、ハハッ!ワシ等の身にこれからどんなことが起こるのだろうね・・・解剖とかされたりして。」
「メルト長官、貴方はSF小説の読みすぎですよ。」
「そうかなぁ・・・まんざら当たっているかもしれないぞ。この金の塊の中で私達は最期を迎えるのかもしれないし、宇宙人たちが私達に興味を持っていることだけは間違いなかろう。」
「そうですね、私達でさえ新境地になろう「惑星ムソルグスキィ」で生息している高度文明について興味津々でしたから。当然の成り行きかもしれませんね。」
「ううむ、遅かれ早かれワシらより高度な文明人が存在していたならばこうなるのも当然だな。唯、私としても未練が無いといえば嘘になるが。とりあえず私達にできる事としては、今この船に乗っている乗員たちの健康と安全の確保だね。」
「はい、そのようですね。早速問診をするよう手配します。」
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別室のシリア事務次官、哲学、宗教学博士もまた例の如く議論を交わしている。
「とうとう私達の最先端技術の凝縮された宇宙船も捕獲されてしまったか!やはり地球の技術など虫けらに過ぎなかった事が証明されたということだな。奴らの腹の虫の居所が悪くならなければいいのだがな。」
「もしかしたら、これはいわゆる「ご招待」なのかもしれませんよ。安全を確保してくれたのかもしれませんし。あまり消極的に考えるのもどうかと。」
「アナタの度胸には敬服はしますが、どうみても我が文明では叶わない脅威と見るのが当然でしょう。
いいですか、これは間違いなくご招待なんかじゃあないですよ。半ば強引に誘引し続けられた挙句、我々は捕獲されてしまったのだろう。」
「またまた~、「炎の鳥」の、ほんの気まぐれなのかもしれませんよ、興味本位に。」
「捕獲ではなく捕食かもねっ・・・ハハハッ」
「や、やはり俺らは食われるのか?」
「単なる動物の戯れかもしれない。一つ言える事は、事はまだ始まったばかりということだ。結論を急ぐな!」
もともと議論好きな一同はウイスキーを手に好き勝手な持論を展開する。
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別席のCIA長官と法務官は不安を隠せないでいる。
「相手が敵ならば、君ならどうする?」
「私達同様、相手の出方を見るでしょう。既に誘引している最中も監視下にあり、自分たちの文明の中に取り込んでも問題ないとの結論に至ったのでは。」
「そうかもな、こちらも攻撃することも無くおとなしく引っ張られていたのだから。」
「これから何が起こるかはわかりませんから、武装の準備などは必要かと。」
「それって可能かな?第一、誘引し引き込まれるまでの間、我々は何も抵抗することすら出来なかったのでは?やはりワシらは家畜として従うしかないかも知れぬ・・・」
「それは困ります。」
「何を言っておる、またまた臆病風に深れたか?アスタマニャーニャだろうが、明日は明日の風が吹くの勇気は何処へ行ったのやら。」
二人はそう自分たちに言い聞かせながらも、表情が曇る。
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自然気象学及び宇宙物理学、科学、化学、地理、物理、生物学博士の面々の討論はヒートアップしていた。
「船長からのAIの解析結果は未だなのか!」
「飛行物体内の環境が我々に見合っているか確認中のようです。」
「ということは、この鳥の体の中に降りようというのか?なんと無謀な!」
「へぇ、わくわくするなぁ!オレも降りたい!」
「オマエは相当な変わり者だな、ハハハ。」
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カウンター席では、いつものタイ国王と占星学博士雨宮女史。
相変わらずサケが進んでいる模様。
「あらやだ、鳥さんの中に飲み込まれちゃったわね。」
「雨宮さんは怖いもの知らずだなぁ、もしかしたらここは鳥の胃の中で、消化されちゃうかもしれないよ。」
「大丈夫よ、きっとステキなレストランやブティックがあって私達を歓迎してくれるのよ!」
「ところで今日の占星学的な観点ではどのようで?」
「今日は「和解」とあります。長いこと諍い合って来た者同士がお互いの気持ちを理解し尊重し合う、ということです。もっとも地球の時間軸における暦での観点でありますが。」
「ならば私の手腕で友好協定でも組みましょうかな。新たな文明との友好関係を築く、ってね。ハハッ!」
「仲良しにこした事はないですものね。なんだかロマンティックゥ~!」
「そうさ、心配はいらんよ!」
そんな二人はどこまでもプラス思考のまま平和な未来を夢見るのだった。
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////// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆