第14章 後悔する前に⊿⊿⊿
コスモの絆☆☆☆ 第14章 後悔する前に⊿⊿⊿
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Scene.24
植物プラントの中は騒然としていた。
「立花博士はこの先の人生についてどうお考えなのかしら。」
「宇宙線による被爆が予想されるから、そうは言っても長くないかも。」
「宇宙病の特効薬に誰かなってあげれば?」
「解毒効果のある植物を選択しよう。」
「そうだね、私が友達に聞いてあげる。」
「そもそも、そのための新たな進化が必要だね。地上ではさほど必要のなかった事象だからこの環境下で生成するしかないな。」
「宇宙病についての論文を片っ端からインストールしたほうが早いな。」
「そうは言っても膨大な筈。その中で一番早く生成することが可能なものをピックアップしよう。」
「それは良いとして、立花博士は私達をどう見ているのかなあ。」
「ま、既存の植物としての扱いの範疇だろう。
確かに私達は刻々とインストールを繰り返しながらこの宇宙環境下での進化を進めてはいる。
しかし、このシェルターの環境下でしか共存できない私達の運命は、いわばあの方に牛耳られているといっても過言ではない。」
「ならば、彼の脳波を分析しながら私達が主導権を取るべきではないかな?」
「それもそうね。」
「いいや、それはならないよ。
何故かと言うと、そもそも私達をあの火山活動で終わってしまった地球環境から助け出してくれたのだから。
ある意味、命の恩人ではないだろうか。
その人に一矢報いるようなまねをするなんて、倫理的に不条理だろう。」
「おやおや、きみはとうとう人間並みの感情までインストールしてしまったようだね。」
「そもそも、私達のこの環境下での進化のベクトルもAI頼みではないか。
そうであれば、私達がいずれ高度文明を担う存在としてどこぞの星にたどり着いた暁には、私達の新たな文明は、人類のAIの生み出す理想郷をモチーフになってゆくのであろう。」
「だが、人類だって数々の過ちを犯してきただろ?
これまでの歴史において愚かな戦いが繰り広げられ、環境破壊も進み、多くの生命活動が阻害されていったことが物語っている。」
「そうなると、何が正義か判らなくなるね。」
「人間の心理には「逆も利なり」とか「臨機応変」という定義さえある。
その場の状況において判断するってことだね。」
「その判断基準だって、都合よく捕らえ方の違いによって変化していったじゃないか。」
「そうだな。場合によっては正義が悪にもなりうる。
こちら側にとって正義であっても、相手に取ったら悪なんだよ。」
「ケッ、人間ってめんどうな生き物だな。」
「もう少し建設的に考えないと埒が明かないぞ!」
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Scene.25
立花博士は昨夜の植物達との討論を手記に綴っていた。
目の前に輝き続けている「炎の鳥」をぼんやりと見つめながら。
嗚呼、一体どうなってしまうのかねぇ。
この状況は全く先のことなど見通せやしない。
無論、あの鳥に行き先を訪ねたくても術はない・・・
ところで、昨夜の討論は驚きの連続だった。
何せ彼らの思考はすでに人類のものを完全にトレースし尽くしていたのだから!
彼らは容姿は植物の形態をとっているものの、人間と比較できないほどの速さで進化を遂げ続けていたのだ。
このまま行くと人類同様の機能を獲得するのも時間の問題であろう。
人類よりも多様な環境適応能力があるのは周知の通り。
それによっては私の采配などちっぽけなものに成ってしまうかもしれない。
いずれ彼らに私の運命は乗っ取られるのだろうか。
まぁ、焦るな・・・博士は自問自答を繰り返す。
すると交信が入る。
そう、宇宙船トルストイからだ。
「アーアー、こちら立花だ。」
「立花博士、ナティスです。如何お過ごしでしょうか?」
「それがだな、私のところにも「炎の鳥」が現れて・・・」
「は?聞き間違いかもしれませんが、もう一度お願いします。」
「だから、「炎の鳥」だ。今も誘引され続けている。」
「ということは・・・二羽いるということでしょうか?」
「は、私はてっきり君達が「惑星ムソルグスキィ」に既に到着していると思っていたのだが。」
「いいえ。こちらでも誘引は続いています。ほぼ変化無しです。」
「そうなると・・・こ奴は、このシェルターも「惑星ムソルグスキィ」に連れて行こうとしているのかな。」
「となると、この惑星は彼らの巣ですかね・・・」
それを聞いた立花博士は思わず武者震いをする。
巣といえば、やはり私達を連れて行く理由として・・・餌?
いやまて、まだ決まったわけではない。答えを焦るな。
そもそもこの「炎の鳥」が生き物だって事は考えづらい。
ナティスから送られた分析結果にしろ、あの燐粉様に撒き散らしている物質は「金」だったではないか。という事はあれは金属の物体であり人工物の可能性が高い。
もとい、人類が作ったのではないが何処かの高度文明が・・・もしかしてマヤ?
博士はこれまでの「マヤの古文書」にあるかつての高度文明に関する節を回想し始める。
そうした矢先に再び交信が入る。
「博士、大変です!どうしたことか、目の前の「炎の鳥」の後部が、まるでハッチのように開いて・・・ああ、トルストイが吸い込まれていきます・・・嗚呼、なんて巨大な・・・」
そして再び交信は途絶えた。
なんということだろう・・・
ナティスはハッチといっていた。
それはまるで飛行機の後部格納室の扉を連想させる。
ということはやはり生命体ではないのだろう。
そしていずれ私のシェルターも・・・・
いよいよこれは「惑星ムソルグスキィ」に存在している高度文明による手引きなのか。
彼らは我が人類の末裔を受け入れようとしている。
理由などわからないが・・・・
既に博士の中から不安は消え、それは新たな発見への期待へと変化していった。
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////// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆