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第11章 星達のメランコリー☆☆☆

コスモの絆☆☆☆   第11章 星達のメランコリー☆☆☆



~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~~


Scene.21 地球に後ろ髪を引かれて



シェルターは静かに金粉の靡く軌跡を追い続けている。

「炎の鳥」により救われたように導かれつつ立花博士は運命を委ねていた。

もう何処へ向かおうが好きにしてくれ・・・

いつしか立花には今起こっている現実、その先の未来についての興味が薄れつつあった。

人生一寸先は闇。

そして私は現実に闇の中へと今船出している。

自分の意思などとっくに捨ててしまっている。

ただ「炎の鳥」だけが私を必要としているのだろう。

そして目的のために私を導いている。



宇宙船「トルストイ」との交信は未だ途絶えたまま。

手持ち無沙汰の立花は植物プラントへと向かう。

幾千の植物達が狭いシェルターの中で輪廻を繰り返している。

それぞれが呼吸し成長を続けている。

AIシステムにより地球環境同等の生存エリアが管理されている。

成長により適した環境のためにLED証明、空調、水耕肥料の分量がメカニカルに供給されている。

自然環境に近づけるための送風、季節感を出すための温度調節、心地よい音楽による成育補正、食料確保も含めた間引きなど、綿密にコントロールされていた。



立花が地球で最期に託された異常気象モニタリングのデータはいまや無用の長物となっていた。

此処宇宙空間において何も意味は成さなかった。

やがて植物達も宇宙空間における環境変化により新たな輪廻を生み出すことも予想された。

立花にとって最期の余生はこの植物達との暮らしが全てとなった。




「立花さん・・・」



かすかに声がしたような気がする。

シェルターでの独居生活も地球時間で2年になろうとしていた立花にとっての幻聴と解釈する。



「立花さん・・・」



とうとう私も老化現象に拍車が掛かったようだ。

いや老いというのはなんとも切ないもの。

痴呆症が刻一刻と進んできているようだ・・・



「立花さん・・・」



さすがに、3回目のこの声を聞いたときには背筋が寒くなる。

本当にリアルにこの耳で聞いた様でならないが・・・

或いは先ほどのトルストイとの交信が繋がったのであろうか。

プラントを飛び出そうとした次の瞬間、そこに茂っているツルたちが立花の足に絡みつく。

そして・・・・



「立花さん・・・どうして返事をしてくれないの?」



とうとう私は気が変になってしまったようだ。

間違いなく何者かが直ぐそばで、先ほどよりも大きな声で私に答えを求めている。

そして足元のツルたちが尚も絡みを強くしてゆく。

嗚呼、これは・・・・



「立花さん、もうお分かりですね・・・そう、アナタとの生活を共にする中で、私達もこのシェルター独自の環境下において独自の進化を果たしてきました。そしてついに貴方とのコンタクトに成功することが出来るようになったのです。」



一体、これは・・・・

立花は恐怖と、尚も足に絡みつくツルの力に負けてそこに突っ伏した。

そう、これが現実。

いよいよ信じないわけにいかなくなった。

どう解釈すればいいのか?

独自の進化とは?

そしてコンタクト?

ということはこの声は現実の声?

或いは脳波を介して伝達されているのか?

恐る恐る立花が質問する。



「君は誰?」


「私は貴方の目の前に降ります桜の木です。」


「桜?」


「そうです、先ほどからあなたに話しかけているのです。」


「一体どういうことだ!」


「私達植物はこの独自の環境下においてあなた方人間の行っている伝達能力を身につけてきたのです。もっともその教科書はAIによるものですが。」


「というと、AIに教育されたと?」


「それも一理ありますが、そもそも私達が持ち合わせていた機能の一部であって、退化していたものを強化したのに過ぎないのです。」


「ナニィ!」



立花の頭の中でとうとう天地が引っくり返ってしまったようだ!

なんということだ、この桜の木が意志を持ってしまったということか?

そしてAIが教える必要も無い教育を行ったというのか?

ということはAIの暴走か?

そういえば、AI自体も日々自分の頭脳を進化させている。

これも高精度化のための機能として有している。

既に遥かに人間のIQを超越しており、その計算スピードたるや計り知れない。

既にAIに頼り切っている人類の末裔において致し方の無いところ。

人間のミスをカバーするために構築された頭脳であるから・・・・



「桜の木さん、これから君は何をしようと考えているのですか?」


「私は単に人類とコミュニケーションをとりたいだけなのです。」


「それは、何のために?」


「AIの教科書から引用するとすれば、いわゆる「共存」のためです。」


「「共存」?すると、私との共存関係ということか?」


「はい、然様で。」



またしてもこれはどう解釈したものか・・・桜の木との共存・・・

植物はその環境下に与えられているものによって生命を維持している。

同じく私達人類も。

そしてついにはその生命を全うした暁に共に朽ち行く運命。

人類にとって植物から得られる恩恵は、酸素の発生、食料としての栄養補給。

植物にとって人類から得られる恩恵は、呼吸において発せられた二酸化炭素の吸収。

また、人類の糞尿を肥料として成長する。

更に進めると、人体が朽ちた暁にそれをも肥料として吸収するということ。



「さすが、博士。察しが宜しいようで!」


「え?」



あれ、今オレは口に出してはいなかった筈だが・・・

今、私は頭の中で先ほど桜の木が望んだ「共存」というテーゼについて思考を巡らしていたに過ぎないのだが・・・

まてよ、ということは、やはりあの木と私は脳波で会話しているのか?

いや、私は口に出して会話している。

脳波での会話ではないだろう。

であれば、これは・・・・・



「あらあら、察しが宜しいようで!そうです、私からは貴方が丸見えなのです。」


「何?私が丸見え?」


「ええ。丸裸も同然です。私達の退化していた機能がAI教育によって本来の力を取り戻したのです。

そうです、人類のレベルの脳波は、私達にとって丸見えなのです。

では、例え話をしましょう。犬は人間の心が読めるのはご存知でしょうか。

ま、個体差はありますが、感情に優れた犬にとって人間の感情の解読は容易となります。

嗅覚の優れた犬にとって、人間は感情によって様々な臭気を出しているのがその理由なのでしょう。

更に聴覚も発達しているため、感情による息使いや声質を聞き分けて察知するのです。

同様に私達植物も音波や空気感、気圧、電波について敏感です。

そして脳波についても鍛錬によってより本来の機能を発揮することが可能となります。

それが回答です。」



そうか、私の脳はは丸見え。

ともすれば心の内の声も聞こえてしまうということだろう。

私達は脳内で思考することによって意志を言語として作用している。

しかし言語にすることなく先手で察知されてしまうということだ。

しかし・・・先ほど桜の木の言った「察しが良い」の言葉。

これは私が先ほど思考したどの部分について言ったのであろうか?



「ふふふ、答えはそのうちわかりますよ。」



そう言うと、桜の木からの音信は途絶えた。

同時に足元に絡みつくツルたちもはらはらと離れていった・・・

立花博士は暫く立ち尽くしていたが、呆然とその場を去った。







~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~~


////// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



















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