第10章 黄金のシンフォニー♪♪♪
コスモの絆☆☆☆ 第10章 黄金のシンフォニー♪♪♪
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~~
Scene.20 昔日の地球よ
シェルターは尚も上昇し続けている。
前方に見ゆるあの古文書の伝説の中の「炎の鳥」によって今尚引き寄せられている。
一体これから何処へ向かうというのであろうか・・・立花博士の不安が募る。
「そうだ、宇宙船「トルストイ」に交信しこの状況を伝えよう。」
立花博士は何度か交信を試みる。だが、もはや繋がらなかった。
「嗚呼・・・」
絶望に弱々しく落胆の声を発してみる。
尚も何処へ行くとも知れぬその黄金の鳥は、煌きながら宇宙空間へと誘う。
優雅にも羽根を上下に伸ばしながら金の燐分を放ち続ける。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そういえば、マヤの古文書の時代に舞い降りた頃も、やはり今の地球と同じような状況であったような。
あの時代は酷い旱魃続きで、人々の暮らしもやつれていった。
農作物は枯れ果て、水も干上がり、とうとう水争いの戦までが繰り広げられ人々は疲弊して行った・・・・
呪術師は、いけにえに若い女に松明を放ち、祈りを唱え続ける。
貧困により愚鈍な民と化した時、人は愚かな行動をとるもの。
あまりの残酷さに観かねたのであろうか、「炎の鳥」はそこに舞い降りた・・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
シェルターの窓外の様子を伺う。
この星ともいよいよオサラバか・・・
そうだなぁ、私は研究に明け暮れて、気がつけばこの歳になっていた。
長い年月は人も星も変えてゆく。
この星で生きた人生。
果たして家族にとって良い父であっただろうか。
いいや、そんなことはない。
世間では週末には食事や旅行を家族で楽しんでいた。
私は専ら研究に勤しんでいた。家族を振り返ることも無く。
そう、妻は言ってたっけ・・・・
「アナタって人は、私や子供にとっては成功者ではないはね。子供の誕生日さえ忘れてしまって・・・
アナタにとって家族って、一体何なの?
それはアナタは立派に自分の道を歩んでいる。
周りの人もそれは認めているわ。
でもね、よその家族だって同じ事。
少しは家族のほうを振り向いてくれてもいいのに、
放って置けば何ヶ月も音沙汰なし。
これって・・・
家族じゃないんじゃないかしら・・・・」
嗚呼そうさ!オレは卑怯者。
家族を作っておきながら、とっくに頭から除外してきた。
私の研究にとって価値が見えなかった。
この価値観が全ての災い。
そして私は専ら研究に逃げていたのかもしれない。
そうさ、人間失格さ。
性格も破綻している。
君の周りの人たちは、それでも私に敬意を払った。
それで良しとしていた私。
世間体は形成された。
研究者とはそういうものと自負さえしていた。
君も理解してくれていた。
しかし、あまりにも度が過ぎた。
そんな私に周りの人は気を遣っていた。
私はそんなことも気づかずに居た愚か者。
家族が干上がっていたというのに・・・・
それでも私は己を正当化した。
全ては私が開拓する使命を司っていると。
私以外の者にその権利は無いとまで。
そう、うぬぼれていた。
多分、本当は私は嫌われ者。
他の者の意見などこれっぽちも聞いてはいなかった。
そして彼らの口を折り続けた。
「私が正しい。」と。
ところがどうしたことか。
こんな未来を私は想定していただろうか。
そして彼女は先に去っていった。
こんな狭い視界の私を置き去りに。
いい気味だろう。
してやったりだったろう。
こんな私の自信過剰をせせら笑ってくれ。
ほうらみろ、この様を。
もう少しで火に飲み込まれていたもんさ。
いっそ飲み込んでくれたほうが良かったかな。
実は、私はこれまでに無いほどの悲壮感に襲われていた。
だって家族を裏切り続けたのだから。
家庭を、子供達を差し置いて利己的に生きてきた。
果たしてそこに一体何があるというのか。
自分さえ良ければいいのか。
最低限、そうかもしれないね。
そう、まるで井戸の中の蛙。
このシェルター生活が始まって、一人死に、また一人。
とうとう蛙は一匹に成りましたとさ。
如何でしょうか。
そう、文豪トルストイは言っていた。
「人間の最大の悪は、鈍感であること。」
そうかもしれないね。
痛いほど判るとはこのこと。
そうさ、後の祭りさ。
そして祭りの後はいつも寂しい。
楽しかった季節はいつしか過ぎ去る。
そして理不尽にも時の流れは留まらず。
いつしか私は一人ぼっち。
そして地球で唯一人。
取り残されて実況し、誰に何を伝えよう。
やがて火山は流れつつ
いつしか私の身も焦がし
いっそ一息溶かしては
小さな煙となりにけり
そしてシェルター貝殻の
片隅寂しく佇めば
いつしか時の流れさえ
残り僅かな灯火の
在りしことさえ忘れ去り
そして静かに消えてゆく
それでも宇宙は広くって
手を伸ばしても届かない
小さなこの身の棲家さえ
誰も探しに来なくって
天田を見上げて涙ぐみ
小さな鳥の形して
やがて光が舞い降りし
嗚呼忘れてはいなかった
こんな悲壮な私にも
天は愛を授けるか
金色邑楽を放たりし
鳥はやがて大きくて
私の小さな貝殻の
棲家をお空に浮かべてて
妻の居りますその星へ
やがて導くことでしょう
大海原の宇宙にて
吟遊詩人となりにけり・・・
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~~
////// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆