神の力
それから村人たちの対応は早かった。
俺をすぐに解放し、俺に対し畏れを伴い服従した。
俺は村人たちに、今日の宿と明日の朝集まるように命じて、解散させた。
「レオ様、お部屋の準備が整ったようです」
村長の家の居間でくつろいでいた俺に、眼鏡をかけた男が声をかける。
えーっと、たしかルインだったよな。
「ご苦労だったなルイン、今日はもうあがっていいぞ」
「わかりました、レオ様。また何かご用でしたらお呼び付けください」
ルイン。この村で唯一、日本語が話せる男。
今朝までは知的で高圧的だったが、今になってみると知性を感じさせるゴテゴテとした眼鏡とは裏腹に、少し童顔でいわゆる草食系男子の典型のような顔をしている。
ルインは俺に服従こそしているが信頼はしていない。そう感じる。
いや、他の村人も同じか…。
そんなことを思いながら階段を上がり二階の部屋に入る。
部屋の中にはシンプルなベッドと本棚と鏡台。そして壁に掛けかけてある。武器の数々。
村長のものだったのだろう。
俺も人間の中では背が高い方であるが、村長は俺以上にでかかった。
今の俺は恐怖によって村人を従わせている。
だがそれではいけない。
女も男も同じだ。
女は恐怖感だけの関係は長続きしない。
女を長く服従させるには、他の男に抱かれるより俺に抱かれる方が良いと思わせること。
つまり俺を敬わせること。
人を敬うために必要なことは何か。
それは恐怖とは違う力を見せつけ、その力が彼らにプラスであること。
俺が今からやらなければいないことだ。
壁に掛けてある巨大な剣を両手に持つ。
見た目より軽く感じる。
おそらく俺の力は頑丈さだけではない。
「スタートアップ」
フォンというエフェクト音とともに空中に文字が出現する。
神の部屋と同じように俺の情報が表示される。
名前、身長、体重、etc…
あった。
パラメータ
PAC 99999999
PHY 99999999
wCA 99999999
特記事項
【神】
これか、相変わらずパラメータの項目はよくわからない。
俺は指で【神】の項目に触れる。
【神】
アクセス権限 99
万物の事象に干渉し、自在に変更できる。
※世界管理者より、アクセス権が99に制限されています。
その場合、対象と接触している場合のみ変更可能。また死者の蘇生及び魂への干渉は不可
なんだこれ、アクセス権限?
それにしても神ってなんでもありなんだな…
左上のばつ印を押し、設定を閉じる。
早速、手に持っている刀で実験する。
さてどうやったら変更できるんだ?
命令すればいいのか?
「剣よ、浮け!」
『申請を承認、実行します』
脳内に直接、機械音声が響く。
両手に抱えるほどの大きさの剣は、俺の手を離れ空中に静止している。
「おい、マジかよ!」
思わず驚嘆する。
まだだ、剣を浮かせた程度じゃただの手品師だ。
次は見た目を変更できるかだな。
鏡台に座り、体を見る。
神っぽいと言えば…
シャツを脱ぎ鏡をまっすぐ見つめる。
「翼よ生えろ」
『申請を承認、実行します』
直後、バサッという音ともに白い羽毛が舞う。
おぉ、すげぇ
マジの羽だ
部屋の窓を開ける。
飛んでみるか…
身を乗り出し、翼を羽ばたかせるが…
俺の体あっという間に落下する。
「飛べ!」
地面に落ちる直前、俺の体は静止する。
『申請を承認、実行します』
スィーっと体は浮遊していく。
翼いらないじゃん。
まぁ、いいや
次は破壊力を試したいな。
村を出て、森に入る。
しばらく進んだところで静止する。
ここなら誰にも見られないか?
森の中、虫の声だけが響いている。
もうすぐ夕暮れの時間。
街灯もこんな森の中には整備されてるはずもなく、辺りは徐々に暗闇に包まれていく
早めにやっとくか
中に浮いたままの剣を手に取る。
さて、出来るだけ多くの木を切断する。
目を閉じ、それだけをイメージする
今だ!頭の中での切断イメージは完璧だ
「うぉぉぉぉ!!!」
ブォンッ
空を切る音がする
どうだ?恐る恐る目を開ける。
木は…
一本も切れてなどなかった。
マジか…。
まぁ、いいか。別に戦う時があっても、死なないって最強だからな。
よし、とりあえず俺はこの世界ではマジの神らしい。
俺は捕食者で征服者で支配者だ。
前の人生よりも、可能性を感じる。
この力があればなんでもできる。
そう俺は自分に言い聞かせ、部屋に戻り眠るのだった