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異世界BSS  作者: 寝取られ先生
13/17

プレゼント


崩落音はカラカラとした、石粒の落ちる音に変わり、大きく待っていた砂煙も落ち着いた


裁判官の席まで数十メートルほど吹き飛ばされたリカルドは俯いたまま沈黙している。


我ながら、ここまでの威力が出るとは恐ろしい。


手元を見ると【エクスカリバー弍号機】だった金属片があった。

刀身だけでなく持ち手の鞘まで大きく裂けている。


リカルドのそば付きの人たちがリカルドの巨体を揺すって起こそうとしている。


その揺れに気づいたリカルドは、おもむろに顔を上げると大声で笑い出す。


「こりゃ愉快!力量を見誤った俺の負けじゃな!」


裁判所を破壊した大惨事を豪快に笑い飛ばすリカルドを、俺含め全員がドン引きしている。


リカルドがその場に立ちあがる。

リカルドが持っていたはずの大楯は中央の装飾が潰れ、凹んでいる。


「レオとやら。貴様、何者だ?」

リカルドが訝しむ顔で尋ねる。


「その奇妙なまでの力、異世界人ではあるまいな?」

まずい、異世界人とバレれば懲役どころではない。


即刻死刑宣告だ。


「いや、なんというかその俺は「レオ様は記憶喪失なのでございます」

本質をついた質問に狼狽する、俺にルインが助け舟を出す。


「ほう、記憶喪失とな。しかしそれだけの実力者をこの俺が知らないのもおかしな話だろう」


「レオ様はそれまでガザト山で修行をされた身なのです。そして修行を完遂され、その武芸の力を伝承するため私を弟子にとってくださったのです」


嘘に嘘を重ねるルインを見て不安になってくる、この設定を俺は覚えられるだろうか


「なんと!あのガザト山でか、それならばその実力も頷けよう」


俺の剣の握り方を素人だと看破したリカルドがコロッと態度を変える。


「失礼した。それだけの武人に対して失礼な言動を、侘びさせてくれ」


リカルドは深々と頭を下げる。

仮にも一国の宰相、それだけの男が頭を下げるとは。


驚きとともに、リカルドという男に対して尊敬のような気持ちも持つ。





そこから俺らは手錠を外され(まぁ、俺のは既に引きちぎれていたのだが)所持品を返却され釈放された。


建物から出る帰り際、リカルドに呼び止められる。


「もう一つ確認させてくれ、貴殿は『魔獣の竜騎士』について知っていることはないか」


『魔獣の竜騎士』?

村から出る時に襲われたあの黒い魔獣の新タイプだろうか。


あっさりと知らないと否定すると


「そうか、実は帝国のいくつかの領土がそいつの襲撃を受けていると報告が上がっていてな。それだけの実力者ならもしかしたらと思ったのだが…。

すまない忘れてくれ」


それだけ言うとリカルドは去っていった。







3日振りに浴びた日差しはそれだけで涙が出てくる。太陽の下思いっきり体を伸ばす俺に街の人からの視線が集まる。


「ルイン、帰るか」

「えぇ、帰りましょう」


帰り道、3日前に襲撃にあった道には多くの露店が並んでいた。


あの日に露店がなかったのは雨だったからだろうか。


食品、装飾品、服飾品多くが賑わう中を歩く。


香ばしい肉の焼ける香りがする。

近くにある露店を見る、並べられた骨つきの鳥の足。

皮に、香辛料とオイル状の調味料を塗り込みパリッと焼き上げるチキンレッグだ。


露店の前に立つと頭にはちまきを巻いた店主が「いらっしゃい!」と威勢よく挨拶をする。


「これはいくらだ?」

「銅貨5枚だな」

「なら2本くれ」

会計台に金貨1枚を置くと、銀貨9枚と銅貨5枚が返ってくる。


「毎度ありー!」

背中に店主の声を聞きながら、店を後にする







両手にチキンレッグを持ちながら、ルインはどこだと探していると少し先に歩いたところで、足を止めているルインを見つける。


装飾品の露店の前で、何かをじっと見つめている。


気付かれないように近づくと、どうやら赤い髪飾りを見ているようだ。


真ん中に真紅の宝石をはめ、蝶の形状にデザインされた髪飾りはまさに、贈り物に適したと言う感じだ。


「ユキナにプレゼントか?」


ルインの耳元で囁くように言うと、大変驚いた顔をしてルインは離れる。


「レ、レオ様!失礼しました、つい…」


「別にいい、気にするな」

チキンレッグを頬張りながら、露店を見る。


厚化粧のおばちゃんが笑顔で立っている。

観音開き式に広げられた棚には豪勢な髪飾りが所狭しと並べられ、見るものを魅了する。


「確かに、あの赤いのもいいがこっちはどうだ?」


そう言って碧い髪飾りを指さす。


「お客さん、お目が高いね!あれは希少な翡翠鳥の羽核が結晶化した宝石をあしらってあるんだ、一級品だよ〜」


「ユキナは青いドレスを持っていたからな、あの髪飾りをつければ統一感が出て、さらに美しさが増すと思うが」


「確かに…!」

ルインは納得したようで、金貨15枚と言う大金を店主に渡し購入した。


翡翠鳥の結晶化した羽核とは真ん中のサファイアのような宝石のことだろう。

そこから青く透けた角が宝石をさらに輝かせて見える。






ルインは歩きながら、袋の中を何度も見返しては、満足そうな顔をしている。


ユキナは渡したらどんな反応をするだろうか、それより何と言って渡そうか、喜んでくれるだろうか


不安そうな顔と、隠しきれない笑みを交互に浮かべる様子は恋に浮かれる学生のようで、見てるこっちまで恥ずかしく、しかしどこか微笑ましい姿だった。


「ルイン、それを渡すのはユキナのことをもう少し知ってからだ」


えっ…とルインは少しショックを受けた顔をする。


「いいか、よく知らない相手からもらう物ほど女は嫌悪する物だ。逆に仲良い相手からもらう物ならガラス玉でも宝石のように嬉しがる。そんなものなんだ」


前の世界で急に高価なものを渡す男への対応に悩む娘の相談に乗ったのを思い出す。


「だからまずはユキナに声をかけるところからだな」


そう言うとルインは「はいっ!」と元気よく返事をして、共に街の外へ出た。




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