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異世界BSS  作者: 寝取られ先生
11/17

襲撃


「ああいう男ってなんというか、良いやつなんだけどノリがきついよなぁ」


「えぇ、私も得意な方ではなかったんですが、結局卒業までずっと絡まれていました」


「でもああいう奴ほど女にモテるんだよな」


「たしかに!女は絶えないタイプでした」


ムサクと別れたあと、入ってきた門のあるフルールの街の4丁目をルインと話しながら歩く。



「そんでああいう奴ってー


ピチョン


鼻先に水滴の感覚


「雨か」


昼まで晴れ渡っていた空は気づくと、どんよりと曇っている。

運が悪い


「おかしいですね、昨日の夜見た限りでは、南西に雲はなかったんですが…」


「ルイン、傘は?」


「いえ、持ってないです」


「だよねぇ」


周囲の人目を確認する。

あんなに賑わっていた街の人々はどこかへ消えたようにいない。


俺は腰に携えている剣【エクスカリバー】を取り出す。


「すまん、エクスカリバー。傘になれ!」

『申請を承認、実行します』


細身の剣はみるみる形を変え、黒い傘になる。結構気に入ってたんだけどな。


「ルイン、お前の分も作るか」


ルインの方を見る




ブォォォォンッ

耳元でなるエンジン音。


首元に回転する刃が突きつけられる。


「あががっ!」


バリバリバリバリバリバリバリバリ!!!


間違いない、チェーンソーだ。


高速回転するノコギリ刃は首元を引っ掻きまわる。

普通の人間ならすでに首と胴体が離れている、普通の人間なら。


「おいマジかよ!刺さらないんだけど!やっぱ異世界の武器はダメだな」

男の声がする。


「レオ様!クソっ!」

ルインが抜剣する。


「だーめ♪あんたは私」

突然の少女の声と共にルインは吹き飛ばされる。


「ルイン!」


ブチィィンッ

チェーンソーの刃が壊れ、刀身がバラバラになる。


「あっ、壊れちまった」

男はその場にチェンソーを投げ捨て距離を取る。


「グッ、ガハッガハッ」

ダメージはないが、首元に振動があり続けたせいか咳き込む。


「爆ぜろ!」

ルインも少女を魔法で吹き飛ばす


少女は華麗に爆風に乗り、男の側に降りる。






「いやー、やっぱ使い慣れてない武器じゃないとダメだねキットちゃん」


オレンジ髪の細い目をした男が、頭をかきながら少女に話しかける。


「あはは!アバンクださーい♪」

ピンクの髪をした幼い少女の手には、似合わない紫のダガーが握られている。




「レオ様!こいつら蠍座の一味です!」


「おぉ!お兄さん博識だねぇ」

アバンクが反応する。


「蠍座の一味って、蠍座を知らねーよ!」


「えー、知らないのぉ♪お兄さん常識不足ーキャハハ♪」

キットと呼ばれる女の子が声を上げて笑う。



「蠍座は近ごろ魔獣の台頭と共に、勢力を拡大する盗賊集団です。でもこんな街の中まで入ってくるなんて!」


剣を構えながら俺の隣まで戻ってきたルインが説明する。



「今度は私があの金髪頭やるー♪」


「なら俺は黒髪の眼鏡をやるか」


アバンクは先の曲がった特徴的な剣であるククリ刀を取り出す。




キットはその場で数回ジャンプしたと思うとこちらへ跳躍する。


やるしかない!

「エクスカリバー!」

傘を再び剣へ変換し迎え撃つ。


キィンッ、エクスカリバーの刀身にキットのダガーがあたり火花が散る。


そのまま鍔迫り合いの要領で押し返すも手応えがない。

体重の軽い少女は難なく着地し次の隙を伺ってくる。


「すごーい♪傘が剣になったー、マジックアイテムかなぁ?」




隣ではアバンクとルインが剣戟を交わす。


「さすがに、役人は訓練を受けてるから手応えあるなぁ!」


「くっ」


ルインもなんとか応戦しているようだ。



「よそ見しちゃダメだよ♪」

キットが再び切りかかってくる。


俺の胸を狙って放たれるダガーを剣で受け止める。


しかしダガーが剣に当たる瞬間に折り畳まれるように消えたと思うと、そのままダガーを逆手に持った手が現れる。


「お兄さん、しろーとだね♪バイバイ♪」

逆手のダガーは真っ直ぐ俺の喉元に入り、真一文字に切りつける。


だが俺の皮膚を切り裂くことなくダガーの刀身は折れる。

「なんで!?」



キットは俺を蹴りつけ、大きく距離を取る。


「アバンク!こいつおかしい!!」


「あ?依頼なんだから本気でやれや!後で代わってやるから待ってろ!!」

そのままアバンクはルインに容赦ない攻撃を見舞う。


一打目二打目はなんとか剣を合わせるルインだが三打目は間に合わずに横っ腹を切りつけられる。


「ぐあっ」


「ルインっ」

「させないよ!吹き飛べ!」


俺がルインの加勢に向かおうとすると、キットの放った魔法で吹き飛ばされる。


石畳を転がり、建物に当たり止まる。



その時、腹に剣撃を受け体制を崩していたルインに、アバンクのククリ刀の流れるような斬撃がはいる。


右足、左腕、左肩と段々ルインの血が滲む範囲が増えていく。


「死ねや!」

ククリ刀が首元めがけて振られる。


ルインはなんとか反応し、己の首元に来る斬撃に刀身を合わせる。


「バカが!」

アバンクはそのまま、反対に回転し刀身のない方向からルインの頭部を切りつける。


ぼたぼたっ

血が流れ落ち、ルインの頭から眼鏡が落ちる。


「ぐあぁっ」

ルインは首元への斬撃を避けた代わりに、両目を真一文字に切断された。


視力を失ったルインに再び、アバンクが迫る。


クソっ、このままじゃルインが!

俺は近くにある石を拾って


「当たれぇ!!!」

アバンクに向かって投げつける。


しかしその投石はアバンクのククリ刀で軽く弾かれる。


キィン

その石片は彼方の方向へ



「へっ、死ねや!」

アバンクはルインの首にククリ刀を振り下ろす



パァンッ!


アバンクが肩から体勢を崩し、吹き飛ぶ。


「なんだ!?」

アバンクが起き上がり、己の身体を確認する。


肩当てに石片がめり込んでいる。


「なんだと!?石はさっき弾いたはず」



完全に納得がいった。

俺はさっきの投石の際、『当たれ』と石に干渉した。


そのため、俺が投げた石片は対象に当たるまでホーミングし続けたのだ。

ならば…


「お前等、死にたくなきゃ、すぐに立ち去れ。今ならまだ命だけは許してやる」


俺はキットとアバンクに告げる。


「なんだとテメェ、まぐれで当たっただけだろうが!」

アバンクが俺の方へ斬りかかる。


俺は石片を握り、全力で投石する。

「殺せ!」


凄まじい速度で俺の手を離れた石片は真っ直ぐアバンクの頭部に向かう。


「当たるか!」

アバンクは石片の弾道上にククリ刀を置いて弾こうとする。


石片がククリ刀へ当たる瞬間、石片は意思を持ったようにサッとカーブし、ククリ刀を避け、アバンクの頭へ命中する


パアァァァンッ!


破裂音と共に、血の霧が飛んだかと思うと、アバンクの頭部は鼻骨から上が吹き飛んでいた。


頭部を吹き飛ばされたアバンクはその場で力なく転ぶ。





「うっ嘘!こんなことって…」

キットはさっきまで嬉々としていた態度を豹変させ、怯え出す。


俺はアバンクのククリ刀を拾い、キットの方へ放る。


「ヒッ」

頭を抱えて怯える少女に対して


「帰ってお仲間に伝えろ、俺達に手を出したらこうなるとな」


キットはアバンクのククリ刀を抱えて、遠くへ無茶苦茶な姿勢で走り出す。





「ルイン!大丈夫か!」

ルインのもとへ駆け寄る。


ルインは目を切断され、また身体の方もいくつか斬りつけられたため、全身から凄まじい出血を見せている。


血と降っていた雨によって赤い水たまりができている。


ひどい怪我だ…。



ルインの体に手を当てる

「この者の治療を要請」


『申請を承認、アクセスレベル99、変更可能です』

ルインの体が光に包まれ、傷が瞬く間に修復されていく。


1分もしないうちに、治療は終わった。


「レオ様には、なんと礼を申し上げていいか」

ルインが立ち上がる。


「礼なんて言うな!」

思わず声を荒らげる。


俺は自分の立場を徐々に実感していた。

襲撃してきた敵は、何故かチェーンソーを使っていた。

更に今回の襲撃は『依頼』とも言っていた。


そのことから考えられることは二つ

一つはこの世界には俺と同じ世界の武器を持ち込んだやつがいる。


そしてもう一つ、そいつは俺を消しに来た。


今回のはただの襲撃じゃない、俺を消すための襲撃だ。

つまりルインは、完全な被害者だ。



だからこそ問わなければならない。

「ルイン、何で俺について来てくれるんだ?」


ずっと気になっていたこと。

初めは脅し脅されの関係だった。


なのにルインはこの怪我を負ってもまだ俺への忠誠を持っている。


もし俺へのまだ恐怖により主従を築いているとするなら…。


しかしそんな思案をよそにルインの返答はシンプルだった。


「そんなの…そうするべきと感じたからですよ…」


あっけにとられたあと、清々しい笑いがこみ上げてきた。


そうか、そうだよな。

こいつとの出会いは…安い言葉で述べるなら運命だ。

そんな間に、理由付けなんていらないよな。




俺は、何を迷ってたのだろう。


俺の力は死者蘇生を除く、万象への干渉権。

改めて自分の力を認識する。


そうだ…俺には力がある。

万象へ干渉し、支配する力がある。


この俺様を舐めやがって。


俺とルインを害しに来た黒幕、そして理不尽な世界を作る神達。


一人残らず見下してやる、俺を下に見たケジメをつけさせる!



「ルイン、俺の眷属になれ」

俺の付け加えられた神としての本能が、そんな言葉を口をついて出させる。


神は眷属を持つものだ。

神に全てを捧ぐ究極の主従関係。

神への究極の忠誠と引き換えに、神は眷属に力を与える。


「…。いいですよ。」


『神【レオ】との眷属の契約を確認、ルイン=ザルツバーグの眷属化を開始します』



しばらくすると、ルインを包んでいた光が収まる。


「レオ様…」


雨が上がり、暖かい夕日の陽光が差し込む。


「この似合わん眼鏡はもういらないだろ?」

ひび割れたルインの眼鏡を持ち上げながら言う。

視力はもう回復してある。



「はい、このルイン=ザルツバーグ、今後ともレオ様に付き従うことをお誓い申し上げます!」


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