第七話
洞窟から出た二人は安全な場所を通って目的地に向かう。
身長くらいの丈の草むらをかき分け、道中のブゼリアンから身を隠すために、大型生物の裏に隠れてやり過ごす。
「人夢くん?なんでこんなおいそれと巨大な生物の側までこれるのかなぁ。」
「大きな体の奴ほど草食の場合が多いそれよりブゼリアン達の方が危険だ。待て、やつらの足跡があるこの先に巣がある可能性がある。」
二人は木陰に隠れながら進むが、一本道につきあたり、その先に複数のブゼリアンを確認する。
「くそっ。この先を通らないと遠回りになって時間がかかりすぎる。少しここで息を潜めて待っててくれ。」
瞬間、人夢は木陰から飛び出す。突如、背後から現れた少年に気づくまもなくブゼリアン達は切り裂かれる。
背中を向けたまま人夢は言った。
「春。もう出てきていいぞ。」
「本当に強いんだね人夢くんは、、」
「そんなことないよ。現実では力のない弱虫だし、この世界でだって弱虫だってことは同じだよ。」
ポンと肩に手を置かれて人夢が振り返ろうとした時、春にお腹に手を回され抱きしめられる。
「な、何やってんだよ春!?」
どぎまぎする人夢に春は言った。
「でも、私にとっては優しいヒーローだよ。それだけは変わらない。だから私、もとの世界に戻ったら現実の人夢くんに教えてあげるの。本当は強い人だって伝えて、そして感謝を伝える。」
「ば、ばか。俺は現実には記憶は持ち越せない。お前のことだって忘れてるのに。」
「関係ない。たとえ私のこと忘れても私は覚えてるから、私、現実のあなたに興味があるの。」
「やめとけ、幻滅するだけだ。この世界の俺とは何から何まで別人だからな。そんなことはいい。なによりもまず、両親との和解を先にするんだぞ。」
春に人差し指を向ける。
「分かってる。家出したこともちゃんと謝るよ。喧嘩したままお別れなんて嫌だからね。」
二人が進んでいくと、森林を抜けた先に丘が見えてきた。
「後もう少しでここに時空の穴が開く。」
時間帯も正確に覚えている。
あの日の丘。
嫌でもあの時の男の子の絶叫が頭の中で響く。
丘の上に登ると、そこには花畑が広がっていて、虫たちが蜜を吸っていた。花の香りが鼻をくすぐる。
「綺麗だね、、、。」
「前に来た時から時間が経って花が咲いたのか、、、、。」
ああ、あれから長かったな。俺は今までよく頑張って戦ってきたよと人夢は思った。自分なりに努力してきた、多少の痛みには挫けず、なれないことをしてぶっ倒れたこともあった。
「後もうすぐで向こうへの穴が開く。よく頑張ったな春。」
しかし、背後からの声に人夢は背筋が凍る。春もこの世界に突如聞こえてきた、よく知る言語に驚いていた。
日本語。
「オマエ、ヤハリマダイキテイタ、コンドコソコロス。」
人夢はその声質から全てを悟る。あの時の怪物だ。




