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人は誰もが夢を見る  作者: 輝木吉人
悪夢の始まり
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第十話

陽菜と人夢は二人で彼方と別れてしまった地点に向かっていた。


「君、飛べないの?」


陽菜は高スピードで走り続ける人夢についていくのが精一杯になり、翼を生やして飛行体制に入って問いかける。


「そうか君たちは飛べるんだよな。魔法少女なんて便利でいいよな。飛行を最近試してるけど、爆発力だけでコントロールしてるからコスパが悪いんだよ。そんな便利な翼はないんだよ」


陽菜が低空飛行で移動する中人夢は走り続ける。しばらく行ったところで海が広がっていた。陽菜はこの海をまたぐくらい吹き飛ばされていたのだ。


「どうする?私が運んであげようか....?その向こうまで抱っこするとか」

陽菜は少しためらったが彼方を助けるためには恥を捨てなければならない。人夢はそれをみて思いきり手を横に振る。


「いや、そんなっ!!大丈夫だ。ロケットブースター方式の安定しない飛行だけど、向こう岸は見えてるし、このくらいなら何とかな」

「そ、そう?」


いざ断られると何故かもやもやした気持ちになるのを不思議に感じていた。

「さて、ごめんちょっとどいてくれる?暴発しちゃう可能性があるから」

言われるがまま少し陽菜が距離を取ると、ゆっくりとクラウチングスタートの体制に入る。呼吸を整えて足に力を込める。


「ブレーキできないから俺が吹っ飛んだらすぐに追いかけてきてくれ」

そういうと人夢は空中へと吹っ飛んだ。


「爆炎脚!!!」


「ちょっと待って!!早すぎるって!!」

陽菜は慌てて飛び立った。



かなりの速さで渡り切った二人は陸地に足を着けた。人夢が安全に飛行し終えた後に、額の汗をぬぐって一段落ついていると、陽菜は不思議そうにあたりを見回す。


「どうしたの?」

人夢は立ち上がって陽菜の横を歩く。

「おかしい。あまりにもブゼリアンの影が無さすぎる。巨大なブゼリアンが姿も気配も隠せるとは思わないし、彼方があっさり倒せたとも思わない」

「巨大なブゼリアンってのは前に俺たちと戦ったくらいの奴らか?」

「いや、一回り以上は大きかった。確認しただけでも四体はいたんだけど」


人夢も最近のブゼリアンに違和感を感じていた。羽が生えた個体が死んでいるのを見たからだ。

「翼を生やしたブゼリアンが墜落して焦げているのを見たんだけど、あれをやったのは君なの?」

「あぁ、多分それは彼方が、友達のもう一人の魔法少女がやったんだ」

「今探している子か?」

「そう。私なんかより賢くて計算高い子なんだ。結構時間が経っちゃったけど絶対無事だって信じてるの」


「あぁ、あいつなら大丈夫だ。さっさと探しに行こうぜ」

「どうして彼方を知ったような言い方ができるの?」

「いや、ブゼリアンの頭を正確に打ち抜いていたことが死体から分かった。俺はあんな性格に魔法を扱えないから、きっとすごいやつなんだろ?」


人夢は陽菜に笑いかける。


「そうだよ。彼方はいつも私を引っ張ってくれるの。容量の悪い私を叱ってくれることもあるんだ。でも、彼方は彼方で責任感が強すぎて、抱え込み過ぎちゃうこともあるから、私がそこはカバーしてあげないと」


(学校での様子とほとんど変わらないんだな。この二人は)

人夢だって彼方が簡単に死ぬとは思わない。いつもチャラチャラしてるけど誰よりも周りを見てるし、考えて行動している。だから自然と人が集まってきているのだ。タイプでいえば坂上と似ている。違う点でいえば周りに人がほとんど寄り付かないことくらいだろう。考え方や行動が似ていても人間性とでもいうべきか、素の部分がまるっきり違うのだ。


そんな風に思っていた時、いきなり歩いていた二人に木が倒れてきた。前触れもなく突然。いち早く気づいた人夢は陽菜の前に立ち塞がって腰の剣を引き抜き勢いよく切り裂いた。驚いた様子で背中にしがみつく陽菜を横目に人夢は木が倒れてきた方向を見つめた。


「ぐるうるるる....」 「きゃっ!!きゃっ!」


「くそ、気配を消したりこんなしょうもない小細工までするようになったのかお前ら」


ブゼリアンが数匹切り株の周りに現れた。気づけば辺りにはちらほらと影が見え始めている。

「少数で動いて、隠密作戦か、かなり知恵が働くようになったんじゃねえか?」

「そうだよ、最近のこいつらは前までとは何か違うの!」

「まぁこんなところで無駄足踏むわけにはいかない。下がっててくれ、すぐに片付ける」

人夢は自分の体の前に剣を構えなおす。


「ダメ。あなたの身柄がわからない以上、一般市民と同じ扱いよ。作戦は私が立てる。おとなしくしてて、こんなやつら一人で十分だから」


「わかった。なら背中側を頼むぞ!!」

人夢はすぐに前方のブゼリアンに切りかかった。

「ちょっと!!なに勝手に仕切ってるのよ!!」


二人は戦闘を開始した。横目でお互いの能力や素性を見極めようとしながら。

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