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人は誰もが夢を見る  作者: 輝木吉人
悪夢の始まり
30/45

第三話

「早いとこ距離を取ろう。陽菜が飛んで行った方向が分かんない...けど。とりあえず離れよう。」

ブゼリアン達は地面に倒れこんでいるものの、別に戦闘不能になったわけではない。今も続々と立ち上がろうとしながら彼方のほうを睨んでいる。


彼方は上昇してあたりを見回す。見慣れない景色であり、陽菜を探すのは困難かもしれない。

「仕方ない、勘を頼りにするとこっちの海がある方向。どこまで行ったか分からないけど、とにかく距離を....うわっ!!」


ブゼリアンが目から光線を放ち、彼方の行く手を阻む。地上にいるブゼリアン達は息を合わせるように連携せている。


「思った..より!!立ち直りが早い!!サンダーショット!!」


彼方はブゼリアンの目を狙い撃ち、隙をついてその場を飛び去る。


「待っててよ陽菜。今から探しに行くから。」

彼方も陽菜と同様に魔力を回復する時間が必要だ。とりあえず近くの岩陰に身を隠す。

(陽菜が生きている保証はない。でも、陽菜はきっとどこかで私を待ってる。)


















陽菜は少し眠っていたことに気付く。かなり回復しただろうか。陽菜は手の開閉を繰り返して魔力の回復、そして体力の回復を確認する。魔法少女の仕組みなんて根本的な部分を理解しているわけではない。

ただ人体よりも遥かに強く、潜在能力もまだ秘めていることは分かる。


「私も早く師匠みたいにこの力を使いこなさないと。あれ?まさか...!!なんでここに!!」


青い服に真っ赤な髪。腰につけた剣。陽菜の目線の先に岩にもたれかかって眠っているその少年を見て思わず立ち上がってゆっくりと近づく。少年の透き通るような赤い髪は風になびいている。


「きれいな赤髪。これ、なんか変身状態の私に似てるかも?」

陽菜は少年の髪に触れる。その時、少年は、人夢は目を覚まして間近に迫っている陽菜と目が合う。


「「あっ」」


「ご。ごめん!!いや、目が覚めたらたまたまここに転移し...いや!!たどり着いて!!」

「いやちょっと驚いただけで!そうだ。この前はその、ありがとう。」


陽菜は顔を真っ赤にして乙女モード全開で身を縮こませる。回復したはずなのに胸の鼓動が高鳴っているのを感じる。


「いや、まぁそれが俺の仕事だし。それにもう少し早く付いていれば、その友達が傷つくこともなかったし俺の方こそごめん。」


人夢は申し訳なさそうに頭を下げる。そもそも無関係の人間を巻き込まないようにするのが人夢の目的であり、使命だったのだ。最近はまったくそれが守れていない。

しかし、二人が不思議な力を持っているのを人夢は知っている。さっき現実世界でブゼリアンに襲われたときに助けてもらっている人夢は詳しいことが知りたかった。彼方がいうには今度説明すると言われていたが一般人相手に本当の説明をするだろうか。


しばらくの沈黙の後、二人は同時に話を切り出した。

「「君は一体何者なの?」」


人夢は面食らって唾を飲み込む。現実の無力な自分の正体を教えたところでややこしくなるだけだ。これ以上迷惑かけるわけにもいかない。

人夢が口ごもっていると陽菜が口を開いた。


「私は魔法少女っていったら早いかな。師匠から魔法少女としての素質。つまり不思議な力が眠っているって言われて引き出してもらったの。もう一人の私の友達も同じように。そしてあなたも私達と似たような力を持っている。もしかして、師匠を知ってるの何か関係があるとか?」


人夢は今日多くの事実を知った。自分以外にも不思議な能力を持っている人がいること。それにそれが魔法少女という存在だということ。しかし、人夢は陽菜たちの力と確かに似てはいるものの何かが違う気がしていた。


(なんで眠っているときにしか俺は変身できないんだ?それになぜ記憶を保ったまま現実世界に目覚めれない?)


「悪いけど君の言うお師匠には多分面識はないよ。この力はもともと持っていたんだ」

「じゃああなたはここに住んでるの?」

陽菜は思わず質問する。魔法少女とはいっても元の世界に存在する人間世界同士が密接につながった時しかここにとどまることはできない。


「いや、それはその。なんというか...」


人夢はもともとおしゃべりが得意な方ではない。このままだとぼろが出る可能性がある。

「まぁ俺のことは気にしないで!怪しいものじゃないからさ。そういえば前に一緒にいたあの子はどこに?」


陽菜は我に返るように八ッとした。

(そうだ。のんびりしている時間はない)


「お願い!!手伝ってほしいの、今、私の友達がピンチで、探しに行かないと!!」

「分かった。ついていく。絶対助けて見せる。」


人夢はとりあえず特撮ヒーローのジャクティスの決めポーズをまねて拳を前に出す。陽菜は驚いた様子でこちらを見てから、こつんと拳を嬉しそうにぶつけた。


「ありがとう」



好きな人にこんな笑顔で頼まれごとをされてやる気にならないわけがない。現実世界での野上人夢と赤崎陽菜では考えられない。でもこの世界ではヒーローであり続ける。強くなると如月春と約束したのだ。




(どんなブゼリアンでもかかってきやがれ。もう何も失いたくないんだよ。だから俺は容赦なくお前らを殺す)



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