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96話 「部屋を訪ねる その2」

「ではアーネ様、先程の続きを出してください。ここからはミスネさんが先生です」

「アーネちゃ……様。本日はよろしくお願いします」

「うん、よろしくね。頑張るよー!」



 アーネはやる気満々です。ミスネさんも真面目モードですね。


 僕は母の膝の上からアーネの見学をします。ここはアーネのベッドの上です。ちょっと離れすぎていて何をしているのかよく見えませんね。



「えぐううううー」



 母の服を掴んで見えないアピールをします。するとカフェさんが新しいイスを持ってきました。こちらにどうぞと母がアーネの近くに座ります。これなら見えるね。カフェさんありがとう!



 で、勉強が始まったのですが……。



 僕はすっかり忘れていました。アーネは、まだ4歳なのです。



「これとこれの合計は何になるでしょうか?」

「えっとね……。1、2、3、4、5。答えは5個!」

「はい、正解です」

「えへへー」



 実際に物を並べて数を数えます。これは足し算ですよ。あとは引き算も出来ていましたね。


 僕はもっと難しい勉強でもしているかと思いました。でも4歳だからそんなに難しいことをするわけないのです。もしアーネが天才だったら英才教育してたんじゃないの? と思いますがね。



「では次は……」

「出来たー」

「はい、正解ですよ」

「あら、すごいわ。アーネは勉強頑張ってるのね」

「えへへ、すごいでしょー!」



 簡単な問題が出題されて正解しての繰り返しです。うん、普通だねえ。でもね、僕は問題よりもアーネが出来るのか否かに興味がありました。結果としてはアーネは頑張ってます。勉強に興味のない小さい子には真似出来ないかもしれません。そこは評価しても良いと思います。


 こんな感じで計算問題は終わりました。パズルとか迷路の問題もありましたが、これだた遊んでいるだけじゃないの? と思いながら見ていました。



 ◆



 次は言葉のお勉強です。


 読みはだいぶ出来るようになったそうです。あとは書きなんだって。国語の授業みたいだ。



「ではこの表を使いますよ。あいうえおを書いてみましょう」

「えー、絵本じゃないの?」

「え、絵本ですか……?」



 何に使うのかな? と思っているとカフェさんが答えてくれました。



「アーネ様は、あいうえお表には上手に書けるのです。ですが、その表がなかったら間違った字を書いてしまいます。そこで絵本に書かれている文章でお勉強をしています。最近では文字を正しく書けるようになり、さらに言葉の意味もしっかり分かるようになってきました」

「ただ書くだけではダメなのですね……、勉強になります」

「工夫も大事ですよ」

「――! わかりました」



 アーネだけではなく、ミスネさんへの勉強も順調ですね。



「ではアーネ様、本日はどの絵本にしますか?」

「じゃあ、メンテ選んでー」

「んぐ?」



 え、その役割僕なのと思っていると絵本を渡されました。どれもこれも見たことある本ですよ。全部アーネが好きで僕に聞かせてくるやつです。



「……うぐぅ」

「メンテちゃん、1冊選びましょうか」

「えっぐ!(そうだ!)」プイッ



 僕は指を差します。



「「「「え?」」」」」



 そこには棚がありました。でも絵本はないです。



「どこにもないよー?」

「棚ですよね? でも本はないですね」

「メンテちゃん、目の前のこの絵本から選ぶのよ。ほらこっち向いて」

「うぐ!」



 違う違うと僕は暴れます。すると黙っていたカフェさんが気付いてくれました。



「もしかして子供部屋を指差しているのでしょうか……?」

「「「――!」」」

「えぐえっぐー!(正解!)」



 というわけでみんなで子供部屋に向かいました。



 ◆



 僕は母に抱っこされながら子供部屋に入ります。みんなでいっぱいある絵本の前に来ました。僕があれだよと伝えます。



「これー?」

「あぐぅ」首ブンブン



 アーネはこれかなと僕の前に大量の絵本を持ってきます。でも全部違いました。近くにあるのですが気付いてくれるかな?



「メンテちゃんは何が読みたいのかしら……?」

「メンテ様、これですか?」

「あぐぅ」首ブンブン

「違いますか」



 カフェさんも僕に絵本を見せますが、首を振って違うとアピールします。



「どれですかねー」



 ミスネさんが絵本を探しているのですが、こちらにお尻を向けています。お、これはいい感じです。パンツが見えそうで見えないですよ!


 もうちょとだけ下げて……、そうそう。あと少し。



「メンテ様、これですか?」

「えぐえ……あう、あぐぅ(そうそう……って、違う違う)」首ブンブン



 おっと、危ない。間違えそうになりました。その絵本じゃないですよ。探しているのはパンツ! ……じゃなくて違う絵本が正解なのです。


 このままだと時間が掛かりそうです。仕方がないので目的の絵本に指を向けますよ。



「あっちなのー?」

「そのようですね」

「あ、待ってくださーい。ぎゃふ」



 ミスネさんがつまずいてこけましたが、アーネとカフェさんは放置して探し始めます。



「ミスネちゃん大丈夫?」

「奥様が優しくて泣いちゃいそうです……」

「うーぐぅ」

「メンテ様もお優しい……」



 元気出せよと僕はミスネさんの頭を叩きます。もし僕が抱っこされていなかったらお尻を叩いていたでしょうね。さっきからこのメイドはお尻見せすぎです。



「メンテ様、これですね?」

「えっぐ!(正解!)」



 カフェさんが戻ってきました。



「え~、これ?」

「うぐぐー!」



 僕は手足をバタバタさせて喜びます。



「……これみたいですね」

「もっと他のでいいじゃんかー。これとか」

「あぐぅ」首ブンブン



 これが見たいのでアーネの意見は却下します。この絵本のタイトルは……。





 『ゲイザーの冒険 とある島の物語』





「えー……」



 死んだような顔をするアーネであった。



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