92話 「ちゃちゃ~」
前回までのお話。
トマト兄弟からいろいろ話を聞いた。
王都で何日か僕のスキルを調べましたが、トマト兄弟以上のことは分かりませんでした。だからお家に帰ることになりました。バイバイ、王都。
帰る前はいつもの恒例行事をしておきましたよ。祖父母に離れたくないの、まだ帰りたくないのいやだあああと嘘泣きをしました。案の定、メイクばあばが一緒に帰ると言うとレンタカーさんが頑張って止めていましたね。
これで次に会った時も優しくしてくれるでしょう!
それともうひとつ。ベビーカーの秘密を教えると、そんなわけないだろ、がははは! と笑っていました。実際に身体強化された馬を見ると、祖父母が二人揃って一緒に帰ると言い出して大変でしたよ。
王都の話はこれぐらいかなあ。
「――ということがあったんだ。ウインドネイル! って魔法でね。緑の爪が伸びたんだよ」
「王都楽しかったよー!」
「あらあら、二人とも良かったわね。私も行きたかったわ~」
お家に帰ったらキッサさんに報告です。今は兄貴とアーネのキッズが、王都で体験した出来事を楽しく伝えていますよ。
「それにしても猫魂ねえ……。ユニークスキルを貰えるなんてびっくりだわ」
「はっはっは。パパもママもびっくりしたぞ」
「初めて見たときは二人して何これ? って驚いちゃったわね」
祖父母にした説明と同じようなことを言ってますね。
「そうだそうだ、これを見てくれ」ドーン
「この紙は?」
「王都でメンタルチェックというスキルを持った兄弟に話を聞いたんだよ。その二人は、感情が分かる精神系のスキルを持っていてな。そこでメンテにいろいろと聞いてみた事をまとめて資料にしたのだ。読んでみると、メンテの秘密がよく分かるから面白いぞ!」
「へえ……って何これ。すごい事細かいわね」
「それね、レンタカーさんがメモしてまとめたんだよ! 俺もメンテにいっぱい質問しちゃったんだ!」
「息子がこれをねえ……」
ふ~ん、そうなのとキッサさんは資料を見て驚きます。ペラペラ。
「あら、名前を覚え始めたの。それは知らなかったわ」
「わたしもびっくりしたよー。だってね、わたしの名前も覚えてたの!」
アーネがキッサさんの見ている資料を覗きこみます。私もその兄弟に会いたかったなあと言っていますよ。アーネは遊びに行っていたので名前しか知りませんから。
「メンテ、こっち向いてー。キッサさんどこにいるか分かるー?」
「……」←メンテ
「あれー? 聞こえてないのー??」
「アーネちゃん、今は止めときましょ。後で聞けばいいわ。そのときは一緒に言おうね」←キッサ
「うん、わかったー」
僕は忙しいのでみんなの話だけ聞いています。
久しぶりにキッサさんに会ったからか、アーネと兄貴はキッサさんにくっついていますね。だから僕が相手をしなくても嬉しそうです。子供に優しいですね。キッサさんの相手はあとでやりますか。いつもの甘えっぷりを披露しちゃいましょう。
次は教会というか神殿のことを話していますね。ずっと僕の話題ばっかりですよ。
「そういえば教会で、メンテくんは大人しく出来たのか気になるわ」
「最初は大人しかったのよ。他の子の方が騒いでいたぐらいね」
「最初はってことはダメだったの?」
「そうねえ。静かに出来なかった原因は雰囲気じゃなかったのよ」
「何か違うことで興奮しちゃったのね」
「はっはっは、教会の関係者に天使さんがいたんだよ。あれはシスターさんかな」
僕以外にもが興奮している子供がいっぱいいましたよ。だからあれは問題ないと思います!
「そういえばコノマチの教会には、天使はいなかったわね。住民にも見たことないし」
「メンテちゃんは、初めて見るものには興奮するから仕方がなかったのよ」
その通り! 全然おかしくないよ!
「はっはっは。ギフトを貰った後に羽をさわらせろと大暴れしたからな」
「あはっははは、メンテちゃんらしい」
「そうね。ギフトを貰った後の方が大変だったわ」
まあ気になったからね!
「羽をさわったあとは抱っこしてとシスターさんに甘えてな。そのままおっぱいを吸おうとしたときは、さすがの私も驚いたよ。あんな人前でやる度胸があるとは、さすが私の息子だ。はっはっは」
「私はあのときが一番恥ずかしかったわ……」
「メンテなら仕方がないよ」←アニーキ―
「メンテだもんねー」←アーネ
「……メンテちゃんよね」←キッサ
だって僕赤ちゃんだもん! ……ってあれ?
なんだかキッサさんだけ変な間のある言い方ですね。頭を抱えるような仕草もしています。もしかして話が長くて疲れちゃったのかな?
よし、キッサさんを癒しましょう!
「ちゃ~」←ご機嫌なメンテ
「あら、メンテくん終わったの?」
このちゃ~は、おっぱいタイムが終わった後にだけ出すレアボイスである。この話が始まってから今までずーーーっとおっぱいを吸っていたのだ。ハッピーなスマイルで返事をしちゃうぞ。
「ちゃちゃ~?」←キッサさんを見つめるメンテ
「メンテちゃん、キッサはどこかしら?」
「ちゃちゃ!」←指プイ
「あら、本当に私のことが分かるのね!」
「可愛いでしょ? あら、そっちに行きたいのね」
「ちゃ~、ちゃ!」
そのままキッサさんい抱き着いて甘えます。すりすり~。
「あはっはははははは、メンテくんはいつまで経っても甘えん坊ね。本当に可愛いわ~」
「ちゃ~!」
あまりの可愛さに、どうやら私は疲れているのねと思ってしまうキッサである。メンテにやましい気持ちはない……、ないはずである。いや、ないのだ!
可愛さにどんどん磨きがかかるメンテであった。キッサさんに報告した内容は1日で使用人達に広まったため、メンテはみんなに愛想を振りまくはめになったという。




