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89話 「噂の新人冒険者 その7」

「えぐぐぅ……(トマト……)」



 トマ兄が大きな猫の姿になりました。


 今のトマ兄を後ろから見ると全体的に毛先が赤っぽいです。頭部の髪から背中を下って足まで、全て毛先が赤色になっているのです。だから後ろ姿は完全に赤い毛ですよ。腕や尻尾にも赤い毛が生えていますね。逆に変化のない黒っぽいままのところは、顔、胸とお腹まわりぐらいですかね。


 つまり4足歩行の状態になると完全にトマトの色をした猫になっちゃうのです。これではトマ兄というかトマトな兄なのですよ。



「驚かせちゃったかな? これがアニマルパワーの本当の力さ」

「うぐぅー(トマトだあああ)」「おおお、かっこいい?!」バンバン!

「ええっ……、この姿が全然怖くないんだ。いつも子供に怖がられるんだけどなあ。まあいいや。僕はこれをビーストモードと呼んでいるよ」

「えぐぐうううう!(トマトモード!)」「もっと話聞かせて!」バンバンバンバン!



 子供たちは大興奮であった。アニーキ―はトマ兄に近寄り、僕はマト姉の腕を叩きまくってアピールしまくりである。




 ここでいったん稽古を中断して、トマ兄は親切に分かりやすい説明をしていきます。


 アニマルパワーを使っているときに身体強化の魔法を重ねると、その動物の持つ力をさらに引き出すんだそうです。トマ兄の場合は、猫としての身体能力と本能がかなり強化されるんだとか。魔力消費しているときだけ野生の状態に近づくんだって! だからいったん稽古を止めて魔力を止めたら普通の猫さんモードになったのね。なるほどです。


 そういえばアニマルパワーは、身体強化の強化版スキルと言われてましたね。スキルの力関係はだいたいこんな感じかなと思います。


 アニマルパワーで身体強化>>>アニマルパワー≒身体強化


 表現として≒を使ったのは、元になる動物によるからです。まあ強化の割合はだいたい同じぐらいだとか。こうみるとスキルってその人の体質みたいな感じがしますね。




「もしかするとメンテくんも僕みたいになれるかもね」

「えっぐ?!(本当?!)」

「こういう他の生き物の力を使えるスキルってユニークはないと思ったんだけどね。()()()()()()()()()()



 ん? 今何か引っかかることを言ったような……?



「そろそろ稽古再開するよ。二人ともしっかり見ててね」

「えっぐ!」「はーい!」

「にゃはははは、二人とも素直だねえ」



 稽古の続きが始まりました。次は本番だってね!



 ◆



 トマ兄がトマトモードになってイブシじいじと向かい合います。



「さあ、来るじゃ」

「はぁああああああ!」



 4本の足を使ってイブシじいじに近づきます。明らかにさっきまでのスピードとは別物ですね。あれが本来のアニマルパワーの力なのでしょう。ほら、一瞬でイブシじいじの前にたどり着きましたよ。



「グオオオオオオオオオッ!」

「――!」



 トマ兄の前足から伸びた爪がイブシじいじに襲い掛かります。オーラでなんとか防ぎましたが、イブシじいじはその場から吹き飛ばされてしまいます。ついにイブシじいじを動かしました。



「うむ、びっくりしたわい」

「ウラアアアアア!」

「ぬぬ……」



 トマ兄は、イブシじいじに怒涛の勢いで攻撃を仕掛けます。爪や牙を使うだけではなく、強靭なしっぽを使った攻撃がすごく強力そうです。人間にはない部位を使った猛攻ですよ。もはや頭の紙風船なんて気にしてないような感じです。稽古というよりただの模擬戦じゃない?


 しだいにイブシじいじが押される形になりました。オーラでなんとか耐え凌ぎますが、反撃の余地がなさそうです。



「あぐぅー!(じいじー!)」「じいじ頑張ってー!」



 子供たちはイブシじいじが負けそうになったので応援をしました。なぜか大人たちは笑っています。なんでしょう、この茶番感。なんか最近見たような……。



「じゃあそろそろ行くかの」

「――グァ!」



 危険を感じ取ったのかトマ兄は、イブシじいじから距離をとりました。



「うぬ、避けられたか」

「……グルル」



 イブシじいじから銀のオーラがぶわぁっと吹き出しました。それが槍のような形をしています。近づいていたら串刺しにされていたと僕でも分かりますよ。



「……銀纏い」



 槍が分解したかと思うと、全身にその銀がまとわりつきました。いつものオーラの色と比べたらめちゃくちゃ濃い色ですね。


 周囲では大人たちが出た―とか言ってますよ。僕はマト姉の顔を見ます。兄貴も説明カモンとマト姉を見ていましたし。



「にゃは、あれはイブシさんがいぶし銀って言われようになった有名な技なんだよ」

「……んぐぅ?」「すごいの?」

「私たちは兄弟は、あの技を使ったイブシさんと戦いたいと思っていた。あれは強いと認められた人にしか出さないの、ゴクリ……」

「へえ、そうなんだ。俺ね、いつもあれ出すとまぶしいから止めてって言ってた」

「えっぐ(僕も)」

「にゃ?! お孫さんにはそんな簡単に見せちゃうの?!」



 確かお家に遊びに来たときオーラを輝かせてカッコつけてましたね。それまぶしいって嫌がるとしょぼーんとしてました。あのときのイブシじいじはこれを見せて自慢したかったんだ。なんか悪いことしちゃったかも……。あとでお詫びに甘えておきますか。



「お兄ちゃん!」

「……わかった」



 トマト兄弟が目で何かを伝え合いました。双子なのでそれだけで通じたようです。



「もういいかの?」

「イブシさん……、ここからは全力で行きます!」

「うむ、では」



 イブシじいじの両足が激しいオーラに包まれます。そして、トマ兄が動く前にイブシじいじが先に行動したようです。


 いきなり目の前に現れたイブシじいじにトマ兄が驚きました。イブシじいじがまるでボールを蹴り抜くようにトマ兄を蹴ります。ずごおおおおおーーーーんという音とともにトマ兄が吹き飛ばされました。



「ウググ、危ねえ……」



 でもトマ兄は無事でした。僕の目では、蹴られる瞬間に自分から後ろに飛んだ姿が見えましたからね。というか防音の障壁にひびが入ってるけど気のせいかな?



「これも避けるか。がははは!」

「さすがイブシさん……。守りだけじゃなく攻めも強いですね」

「孫の前じゃからの。カッコつけたいんじゃよ」



 男とは年齢関係なく単純な生き物なのですよ。


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