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88話 「噂の新人冒険者 その6」

 イブシじいじがトマト兄弟の稽古をするということで、みんなで庭に移動します。


 祖父母のお家の庭は、テニスコートぐらいの広さでしょうか。このお家があるのは王都の中なのです。これより広いスペースを探すのは難しいかもしれませんね。



「広さは大丈夫そうですね」

「まあギルドの訓練所よりは狭いがの。庭じゃから派手な魔法はなしじゃぞ」

「「わかりましたー」」

「風の防壁はっておいたから音は気にしなくてもいいわよ」

「「レディーさん、ありがとうございます!」」

「はっはっは、私がいればいつものことだと理解してくれるさ」

「「さすがダンディさん!」」



 さすが……? 王都にいたときは毎回やらかしていたとかそんな気がしますね。詳しく考えないでおこうっと。


 稽古が始めるのかなと思ったら、レンタカーさんが何かを持ってきました。紙風船? のようなものですね。それをイブシじいじに渡します。



「うむ、どこにするか……。そうじゃ! メンテ、じいじはどこかな?」

「んぐぅ」指プイ

「では頭に付けよう」

「……うぐぅ?」



 僕は顔を指差しただけですよ。



「ではルールを説明する。この紙風船は叩いたら光る。技を当てて光らせてみよ」

「「わかりました!」」



 へえ、潰れるんじゃなく光るんだね! あれも魔道具だそうです。ただの紙風船にしか見えないけどね。初めて見ましたよ。



「じゃあ行ってくるから見ててね。レディーさん、メンテくんをお願いします」

「うううう……」←嘘泣き

「にゃ?!」

「えぐぅうううううう」←涙ぽろぽろ

「どうしたの?」

「まだマトちゃんに抱っこされていたいんじゃないかしら?」



 マト姉は、トマ兄を見ます。メンタルチェックのお時間です。



「「……」」

「うううう……」←トマ兄を見つめるメンテ

「うっ。……じゃあ僕だけでやるよ」

「しょうがないね。私メンテくん抱っこしてるの」

「えぐぅ!」



 トマ兄は参ったなあという顔で手を上げます。抱っこされる嬉しさから正の感情ですね。


 こうしてトマ兄だけ稽古をすることになりました。ルールは簡単、イブシじいじの頭にある紙風船を攻撃出来たら勝ちだそうです。



 この世界で初めて見る対人戦闘なのです。映画感覚で楽しみますね!



 ◆



 イブシじいじが仁王立ちをしています。それに立ち向かうのはトマ兄です。



「いきますね!」

「うむ」



 トマ兄が地面を蹴って走り始めました。そのまま頭を狙ってとび蹴りを放ちます。しかし、バチっという音がしたかと思うと銀色のオーラがトマ兄の足を受け止めていました。



「まあまあじゃな」

「……っ!」



 トマ兄はオーラを蹴って遠くに離れます。その気になればイブシじいじは足を掴めたでしょうね。でもそんなことはせず、余裕の表情でトマ兄を見ています。まだ一歩も動いていないんのですよ。すごいね。



「えぐううう!」バシバシ

「にゃはは、メンテくんが興奮してるの」



 こっちを見ませんがトマ兄は手を上げました。正の感情ですね。稽古中なのに律儀です。



「……魔法使いますよ」

「うむ。孫たちに見せとくれ」



 トマ兄が身体強化の魔法を使ったのか動きが早くなりました。素早い動きでイブシじいじを翻弄します。でもイブシじいじはその動きに余裕でついていきます。オーラと手足を使った攻撃が当たるたびにバチバチっと音がしますよ。



「これが僕の身体強化ですが……、厳しいですね。全然隙がない……」


「えっぐうううううう!」バシバシ

「ちょっとメンテうるさいよ。静かにして」←アニーキー

「……」

「メンテくん怒られちゃったね」

「……」

「急に静かになったのにゃ?! 今の言葉分かったの??」



 兄貴に怒られてしまいました。僕は静かに稽古の様子を見守ります。まだ言葉が分かってないの感を出すため、チラチラ兄貴を見るアピールも忘れません。びっくりしたみたいな感じで。



「ではアニマルパワー!」

「うむ。いい判断だ」



 トマ兄は黒い猫の姿になりました。そのまま攻撃を繰り出します。さきほどの身体強化とさほど変わらないスピードですが、オーラに当たった時の音はドォーンと派手になります。パワーはこちらのほうが上なのでしょう。


 トマ兄は腕を大きく振って叩きつけるような一撃をします。イブシじいじはオーラで受け止めると、地面が割れてしまいました。でもまだ一歩も動いていませんね。



「悪くない力じゃ」

「ありがとうございます!」



 イブシじいじが仁王立ちをやめてゆっくり歩いて移動します。



「準備運動はこれぐらいでいいじゃろ」

「そうですね」



 なんと、今までは準備運動だったようです!



「見ててくださいね。もしかするとメンテくんが使えるかもしれない力なので」



 僕たちは静かに見守ります。トマ兄は深呼吸をします。そして……。




「グァアオオオオオオッ!」




 叫び声とともに体が膨らんでいきます。


 細見の体から全身筋肉質な大型な猫に変貌しています。さらに毛が逆立っていきますね。黒い毛の先っぽだけが赤くなりました。


 そのまま前足を地面について4足歩行になります。今までは猫っぽい人間でしたが、今では本当の猫のように見えます。



「よく見ておれ。あれがアニマルパワーの真髄じゃぞ」

「グオォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」



 威嚇するようにトマ兄は吠えました。その姿、まさに……。





「えぐぐぅ……(トマト……)」




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