表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/262

86話 「噂の新人冒険者 その4」

 次は、父が僕に質問する番です。


 父の手には僕が見たことのない魔道具を持っています。使い方や効果などを長々と説明しますよ。これ全然質問じゃないです。でも気になっちゃうのは仕方がないよね!


 トマ兄さんは手を上げます。正の感情ですね。うん、スキルチェックは正確な判断をしてます。



「はっはっは、メンテは興味津々だな!」

「本当に分かっているのかしらね。ただ単にパパの顔が面白かっただけかもしれないわよ?」

「パパはそれでもかまわないさ。はっはっは!」

「きゃきゃ!」



 言葉を理解しすぎると怪しまれますね。僕は名前だけ分かるようになったという赤ちゃん設定でした。仕方ないのでパパ変な顔してる~と笑って誤魔化しました。



 ◆



 父の次はイブシじいじです。


 オーラで僕を抱っこしたり、オーラで顔を隠していないいないばあをしたりと遊んでくれました。トマ兄さんは手を上げます。正の感情ですね。



「ふむ。メンテはオーラが好きかの?」

「きゃきゃ!」

「……それなら安心じゃわい」

「うぐぅ~」スリスリ



 イブシじいじはにっこり微笑みます。僕おじいちゃんっ子だから! とほっぺをスリスリして甘えておきました。


 ついでに顔を舐めようとしたらオーラでガードされちゃいました。ちゃっかりしてますね。



 ◆ 



 今度はタクシーさんですね。僕に質問をしてきます。



「メンテ様、ベビーカーの魔法は満足ですか?」

「きゃきゃ!」

「ほほっ、良かったです」



 今度は僕の耳元で皆に聞こえないようにささやきます。



「破壊魔法は良かったですかな?」

「きゃきゃ!」

「最高でしたか。もちろん魔物は見ていませんな?」

「きゃきゃきゃ!」←嘘で笑ってるメンテ

「ほほっ、魔物は知らないようですね」

「きゃきゃきゃ!」

「もっと笑ってくれたら防犯システムが派手にパワーアップするかもしれませんな」チラッ

「きゃきゃきゃきゃきゃーーーーーーーーーー!」←全力で笑うメンテ

「ほほっ、メンテ様は可愛いですなあ」



 大きな声でしゃべってはいけない内容ですね。このタイミングでこの質問をする。これはタクシーさんが何かを狙っているようです。



「タクシーさん、メンテが笑ってるけど何を話してたの? 隠してないで俺にも教えてよ~」



 コソコソ話が気になった兄貴が近づいてきましたね。どうやら話の内容は聞こえていないみたいで安心しました。



「ほほっ、メンテ様にベビーカーに新しい魔法を付けてほしいか聞いていただけですよ。改良しますか? と聞いたところ大喜びでしたな」

「えー、それだけ?」

「そうですぞ。そういえばメンテ様が一番笑っていたのは”防犯システム”という言葉でしたな」



 そう仕向けられたので! タクシーさんはチラリと視線を父に向けます。父にうまく伝わるのかな?



「もしかしてメンテはあの爆裂魔法をもっと見たいのかな? でもあれ禁止されてるよね。ちょっと無理なんじゃないかな」←アニーキ―

「はっはっは、メンテはあれをもっと見たいのか。だが使えないんだよ。う~む、困ったなあ」チラッ



 父も何かを察したので参戦です! わざとらしい演技をしてタクシーさんと話を合わせ始めました。



「そうですな。新しい魔法を開発するのはどうでしょうか?」

「さすがだなタクシー。私もそう思っていたところだ」

「え?! あれ以上にすごい魔法が使えるようになるの?!」

「はっはっは、そうなるようにしたいところだ。周囲に被害が出ない魔法であればいいんだろう? ママもそれなら良いと思わないかな? 防犯面でも役立つと思うがね」

「そうねえ、安全面を考えて欲しいわね。本当に」

「ならそういう魔法を組み込めばいいな。では時間があったら少し考えてみよう」



 父が勢いで母に聞いたら許可が出ちゃいました。



「父さん、完成したら見せてね!」

「はっはっは、分かったよ」

「ほほっ、これから忙しくなりそうですな」

「はっはっは!」「ほほっ!」「きゃきゃきゃー!」



 こうしてベビーカーの秘密を隠さなくてよくなったのですよ。破壊魔法も普通に使えるようになったのです。もちろん結果は……ね。



 いや~、今日のタクシーさんは本当に優秀な執事ですね!



 トマ兄さんは僕とタクシーさんの会話中、ずっと手を上げていました。正の感情ですね。やっぱりスキルチェックは正確ですな。素晴らしいスキルです。



 ◆



 最後に母ですが……。



「メンテちゃん、これが何か分かるかしら?」

「んぐぅ……」



 どーん! と置かれたのは哺乳瓶でした。



「これ”ほにゅうびん”っていうの」

「あぐぅ?」

「この中に飲み物が入っているのよ」

「うぐぅ?」

「この部分を吸うと飲めるのよ。やってみる?」

「……」



 急にラスボスが現れました。



 母はトマト兄弟を見ますがどちらも手を上げません。何も反応していないようです。それもそのはず。別に哺乳瓶が嫌いという気持ちはないのですよ。だから哺乳瓶を見ただけでは何も思いませんし。



「ほら、中にあるのはジュースよ。ミルクじゃないわよ?」

「……?」←よく分からないのという顔をするメンテ

「メンテちゃんの大好きなジュースよ。ほら、これで飲んでみて。きっとおいしいわよ」

「えぐぐ?」



 これを飲むのは罠です。母ならこれでおっぱいは卒業ね! と言い出しかねません。おっぱいタイムの存続のため、僕は断固拒否します。



 これだけは絶対に譲ることの出来ない戦いです。よし、久々に全力の暴れよう!



「哺乳瓶は嫌いじゃないのかしら? ミルクが嫌なのかもしれないわね」

「はっはっは。そうかもしれないな。試しにそのジュースを飲ませてみたらどうだい?」

「メンテちゃん、飲んでみようか?」






 バシッ!






「……メンテちゃん?」



 バシバシッ!



「ほら、少しでいいからね」

「えぐぅううううううううううううう!」



 バシバシバシッ!



 母はトマト兄弟を見ると二人とも手を上げていました。そうだ、もっと伝えるんだこの感情を!



「うわ、感情がむちゃくちゃですよ?!」←兄のトマ

「私も訳が分らないの。起伏が激しすぎてうまく読めないにゃ……」←妹のマト

「これはパニック状態? かもしれません。僕の経験だとそれが一番近いですね」

「えぐぐぐぐぐうぐ! あぐぐぅうううううううううう!」

「落ち着いてメンテくん。にゃ~、どうしたんだろう? 何か嫌なことがあったの……?」

「そうなのね……」



 嫌がる理由に少し心当たりのあるレディー。最初に吐いたことをまだ覚えているのかしらと思うのであった。だが、本当の理由はひどいものであった。




「だああああーー、んぐぅ! えっぐうううううううううう!」バシバシッ




 これがメンテのスキル”暴走”による影響だと分かる者は誰もいなかったという。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ