82話 「ギルドに依頼を」
前回までのお話
家族会議でスキルの結果を発表した。
僕のスキルを調べるため、王都のギルドに向かいました。
僕と一緒に行くのは父、イブシじいじ、タクシーです。僕の住んでいる町でギルドは見たことあるけど入るの初めてなんだ。しかも王都のでっかい方に入れるなんてまたとない機会だ。ベビーカーの乗ってGOです!
ギルドの中に入ると、いかつい感じのする冒険者がいっぱいいました。なんでこんなところに赤ちゃんが? という声が聞こえますね。なんだなんだと騒ぎ始めたのですが、イブシじいじに気付くとみんなが話しかけてきました。
「おお、イブシさん。その赤ちゃんは?」
「わしの孫じゃ。可愛いじゃろう?」
「「「「「「「「「「ざわざわ~」」」」」」」」」」」
どうやらイブシじいじはギルドでは有名なようです。帰ってから聞いた話だと冒険者達とよく仕事をしたり、弟子? もいたりするとか。この前もみんなで魔物討伐したらしいよ。へえ、イブシじいじは冒険者にめっちゃ慕わられていますね!
「あれ? イブシさんの横にいるのは暴走の……?」
「暴走のナンスじゃないか?」
「まじかよ。暴走の……」
ざわざわしている中で父の評判が聞こえてきます。どう考えても不名誉な感じです。暴走とか言ってるし間違いないよね。これ僕も言われちゃうのかなぁ……。
「どうしてお孫さんがここに?」
「おお、探しておったぞ。依頼を出そうと思ったのじゃ」
心で溜息をついていたら、イブシじいじに女性の人が話しかけました。受付の人らしいです。美人なので人気がありそうですね。どうせだから抱っこして欲しいなあ。……よし、アピールしよう!
「あぐぅ!」バンバンッ
「おや? どうしたメンテ」
「うぐううう!(抱っこ!)」指プイ
「あの人に抱っこしてほしいのか?」
「えっぐ(うん)」
「え?! わたしですか?」
父に頼んだらすぐに理解してくれました。さすがです。
「この子のお名前は?」
「メンテだ。息子が抱っこして欲しいみたいなんだがいいかな?」
「は、はい(やだ、この人カッコいい……)」
「よかったなメンテ」
「えっぐ!」
そして、受付けの人は抱っこしてくれました。ふむ、胸に張りがあっていいですね。胸にうずくまって堪能した後はパンパンと叩いて遊びます。ついでにかぷっと噛みます。あむあむ。
「――ひえええ?!」
「こらこらよしなさい」
「んぐふ?!」
「すまない、息子は甘えん坊なんだ。はっはっは!」
「い、いえ大丈夫ですよ。えっと~可愛い赤ちゃんですね」
父に剥がされてしまいました。でも楽しめたのでよしとします。
……おや? 周りからビリビリと殺気みたいなのを感じます。コノヤロー受付嬢に手を出しやがってとでも思っているのかな? でもタクシーさんがそれを上回る圧力を放って反撃しましたよ。気絶している人がいるような気もするけどまあいいか。自業自得でしょう。
「――ふおっ?!」
「サイレント?!」
「あれ本物じゃねえか」
「お前ら絶対に怒らすなよ! 殺されるぞ」
「「「「「「……」」」」」こくこく
ぼそぼそっと会話が聞こえてきます。タクシーも有名なんだね! というかナンス家(祖父母じゃなくて父の方)は悪い意味で有名な気が……。うん、きっと気のせい!
いろいろ騒ぎがあったけど無事依頼を出せました。依頼の紙が貼られます。そこに冒険者たちが殺到していきます。
【依頼内容】
下記のスキル持っている人を探しています。
・動物の力(特に猫の力がある人)
・テレパシー系のスキル
あるスキルについての情報を探しています。今後の魔道具作りの参考にお話を聞かせてください。
細かい条件や詳細は受付の方へ。
【報酬】
ナンスの店の魔道具
【依頼主】
ナンスの店代表 ダンディ・ナンス
「「「「「「「「「「うおおおおおお!!!!」」」」」」」」」」」
すごい雄叫びがします。魔道具欲しいとかいう声がたくさん聞こえます。
「くそそおお、俺が猫だったらなあ」
「このギルドにテレパシーのスキル持ちはいたか?」
「やべええええ、ナンスとか絶対報酬いいだろ」
「これってナンスにお近づきになれるチャンスじゃないか?!」
「あそこの魔道具か……。こりゃ争奪戦だぞ」
「ナンスはいろいろやらかすけど、発明は革新的なんだよな」
「そうそう。魔道具の出来はいいんだよ。魔道具は」
どうやらナンス家の魔道具は人気があるみたいです! 魔道具はね。報酬にお金がないのはそのためでした。何か父の悪口も混ざってるような……。うん、気にしちゃダメだね!
「よっしゃああああ! スキルないけど俺がやるぜ」
「いいや俺だあああ」
「ふざけんな、俺がやるってばよ」
「なんだと?! オラァ」
「てめえ、やりらがったな。戦争じゃああああ」
喧嘩が始まりましたよ。みんな楽しそうに笑っています。冒険者って仲が良いですね!
「ほほっ、この騒ぎならすぐ見つかりそうですな」
「うむ。そうじゃの」
「細かい条件は受付の人に頼んだから大丈夫だろう。よし、今日は帰るか」
「えっぐ!」
こうして僕たちはギルドを後にしました。
僕のユニークスキルは猫魂です。詳しい効果は分かりませんが、とりあえず猫が入っているので猫の力を上手に使える人を探すのが今回依頼した目的です。王都は人が多いので、冒険者に何人かいるだろうとのこと。ナンスの店で働く人の中には猫の人もいますが、皆戦闘には不向きだそうです。戦闘向きの人に聞くなら王都で調べて帰るのが最善ってことですね。
もうひとつのテレパシーは、使える人がいたら僕に使ってみるということです。赤ちゃんである僕との意志疎通が目的ですね。僕に力の使い方を教えてくれたり、僕の悩みを聞いてくれると嬉しいなあ。
◆
翌日、ギルドから依頼を受けたという人が祖父母のお家にやってきました。
「は、はじめまして。トマです。ギルドからの依頼で来ました」ぺこり
「同じくマトです」ぺこり
2人は猫っぽい耳としっぽのある若い男女でした。名前似ているから兄弟なのかな?