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77話 「初めて歩いた日」

前回までのお話

王都の観光をした。

 観光が終わると、王都のお家には祖父母がいましたよ。僕達は予定より早いどころか急に来たからね。慌てて帰って来たのだとか。



「じいじー! ばあばー!」「じいじ、ばあば」



 アーネが駆けつけて、そのまま頭からドーンと突っ込みます。イブシじいじは余裕で受け止めますね。兄貴は、さすがにアーネみたいに飛びつきません。でもちょっとだけハグしちゃうのですよ。兄貴も案外子供らしいところがあるのです。


 その後、祖父母は両親と会話をします。内容はいつも通りなので省略しますよ。無駄はカットしちゃうのだ。



「メンテちゃんも久しぶりね。元気にしてたかな?」



 メイクばあばが、僕を覗き込んできました。僕は今、ベビーカーのお休みモードを使ってゴロりんしています。両親は、この新機能を見せたい魂胆もあるみたいなこと言ってました。なんでも祖父母におねだりした素材から出来ているんだって。では僕も協力して驚かせるように演じましょう!


 まずは体を小さく見せるために丸めます。僕のお腹が冷えないように薄い毛布が被せてあるので、それを利用して体を隠します。それからいつも通り目をキラキラさせ、母性をくすぐる小さな可愛い声を出します。さん、はい!



「……んぐぅ?」

「ふなああああああああああ!」



 メイクばあばを一撃でノックアウトしました。イブシじいじにも同じことをやりましたが、ちょっとフラッっときていただけでした。さすが頑丈なじいさんですね。いつも通り落ち着いています。



 僕達が王都にいる間、こんな祖父母のお家に滞在しますよ。



 ◆



 王都の観光をした日は疲れたのですぐ寝ました。そして、次の日になりました。


 朝食とおっぱいタイムの後は、みんなで畳の部屋で休憩しています。僕のお家だけでなく王都のお家にも畳の部屋があるからこだわりがあるのです。そんなことを思いながらも、僕はメイクばあばを呼びます。



「あぐぐー(ばあばー)」バシバシッ!

「メンテちゃん、おばあちゃんのところに行きたいの?」

「えっぐ(うん)」



 母の抱っこから解放された僕は、メイクばあばのところまでハイハイで移動します。



「メンテちゃん、おばあちゃんはここよ~」

「えぐぐえぐぐえぐー」



 メイクばあばが僕のことを呼びます。ですが、途中でハイハイを止めます。僕の様子を見ていたみんなは、頭にクエスチョンマークを浮かべました。



 よし、やるなら今だ!



「えっぐー(よっこいしょ)」

「「「「「「「「「――?!」」」」」」」」」

「あぐぅー(ばあばー)」

「あらー。メンテちゃん立てるようになったの。偉いわね」←メイクばああ



 僕は急に立ち上がってメイクばあばに突撃します。数歩歩いたところでバランスを崩しましたが、なんとかメイクばあばの足元に届きました。なのでそのままつかまり立ちをします。これでよちよち歩きに見えるはずですね。頑張って上手に歩けないの感を出しましたよ!



「――メンテちゃんが立った!?」←母

「メンテ?!」←父

「立って歩いたね」「メンテ歩いた―」←キッズ

「――」←声が出ないカフェ

「ほほっ」←タクシー

「……??」←イブシじいじとレンタカー



 みんないろいろな反応をしていますね。特に僕と一緒に住んでいるみんなは驚いてくれています。この演出は成功ですね!



「……え? みんなどうしたの?」



 祖父母とレンタカーさんは困惑しています。そこで僕が初めて立ったのと歩いたことを説明されます。同時に2つも出来ちゃったみたいにね。



「メンテちゃん、おばあちゃんが大好きすぎて立っちゃったの……?!」

「えぐえぐー(そうそう)」

「メイクや良かったのう。わしにも来てほしいもんじゃ」

「うぐぐぅー(じゃあ次ね)」

「いや~、お孫さんの初歩き見れて良かったですね。我慢せず泣いてもいいんですよ? 後のことは私に任せてくださいよ」

「「メンテ~」」←祖父母



 感動に包まれました。レンタカーさんは祖父母のことをよく理解している様子でしたね。まさかこんなぐらいで泣くとは思いませんでしたが。歩く練習して良かったですね。これからは隠れてコソコソする必要なく堂々と歩けますので!


 その後、みんなの元に向かって順番に歩きました。今日の夜は良いもの食べるぞーとか言ってましたね。赤飯とか出るのでしょうか? でも僕は赤ちゃんなので食べれないよねえ。


 今日はこれだけではありません。祖父母にはもっと僕のサービスを見せちゃうよ! へい、じいじばあば。僕と遊ぼー!




 メンテ11ヶ月、少しだけ歩けるようになった。メンテが成長すると、おばあちゃんに抱っこして貰いたすぎて立ったのよと皆で笑い話に使われることとになる。本人はこのときの事をよく覚えているが、演技していたことは秘密なのでへえそうなんだと頷くしかなかったという。これは大きな誤算であったという。



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