07話 「初めて魔法を見た」
前回までのお話
一人称がぼくになった。僕ね!
ぼくメンテ、1か月半ぐらいでちゅ~。今日は僕の部屋にアーネが遊びに来たよ。
赤ちゃんのおもちゃって何があるのか。僕はガラガラしか知らないんだけどねえと心の中で思うが、ここは異世界なのだ。ちょっと期待していたのだが……。
「メンテちゃん~」
「あぐぅ」
「ほらほらー」
「うぐぅ」
ガラガラだった。丸い球体に棒が刺さっているタイプではなく、ただのボールのようなやつだ。
正直がっかり感があるが僕は赤ん坊。だが勝手に動いてしまう。僕の母はあやすのが上手なのだ。
「わたしもやりたーい」
母からガラガラを奪っていくアーネ。僕がガラガラを持とうと腕を動かすたびにアーネも動く。少しずらす、ずらす、ずらす。うん、完全に遊ばれています。
僕はまだ首がすわっていないので寝たきりの状態。手の届かない位置にガラガラを置かれると動けません。
部屋の扉が開いて父がやってきた。
「アーネとメンテは仲がいいな! はっはっは」
「わたしメンテの面倒みてるのー」
「よーしよし、いい子だ」
父がアーネの頭をなでる。アーネは嬉しそうだ。
「アーネ、ちょっとそのガラガラを貸してくれないか」
「え~まだ遊びたい」
「ちょっとだけだでいいから」
「……パパ、はーい」
「アーネありがとう」
父がガラガラを持つと何かを唱え始めた。
「火の力よ、ここに集まれ」
するとガラガラが赤色に光りだした。
「あぐぅ!?」
えっ!? いったい何が起きたの???
「この魔力ボールは魔力を込めると色が変わるんだよ。力を入れすぎると壊れてしまうから少しだけ魔力を使うのがポイントだぞ。ほらアーネもやってごらん」
「わかった、えっとねこう」
ガラガラは水色に光りだした。
「できた、見て見てメンテ~」
アーネ近すぎて見えないよ。ガラガラは光ってるけど温度の変化はない。というか魔力ボールって名前だったんだあのガラガラ。
「アーネはもう水の魔法がうまく使えるんだな」
「ママに教えてもらったの~」
魔法だって!? 生まれて初めてみたよ。ここは魔法が使えるファンタジーな世界だったみたいだ。
「最近のアーネはお姉ちゃんね。メンテが生まれたてからすごく成長したわね。ママ嬉しくて泣いちゃいそうよ」
「えへ」
「はっはっは、パパも嬉しいよ」
僕の姉はすごく頑張っているらしい。姉としての自覚が芽生えたのかなと思う。弟がこんなこと考えているのは黙っておこう。
「あぐぅ」バシッ
「あっ」
僕はアーネからボールを奪うことに成功した。ボールをぶんぶんぶん回す。しばらくしてボールの色が元に戻った。
「はっはっは、メンテが喜んでるわ」
「メンテちゃんはおもちゃに興味津々なのね。面白いわ~」
初めて見た魔法に興奮してめちゃくちゃ遊んでた。それはもう見た目も中身もただの赤ん坊でした。