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65話 「つかまり立ち」

前回までのお話

部屋から抜け出す赤ちゃんがいました。

 僕メンテ。祖父母が帰って4週間は経ったかな。年齢は10ヶ月ちょっとになります。


 こども用の小さな椅子の前にやってきました。チラっと確認しましたが誰も僕を見ていませんね。近くにいるアニーキ―は、魔力ボールを使った魔法をアーネに見せています。アーネは私もそれしたいと暴れています。これはいい感じのチャンスですね。


 椅子に手をつけて立ってみるとなんとか立てましたよ。手を放して維持しようとすると足がカクンとなり倒れてしまいます。頭が重くてバランスが取りづらいですね。でも体が軽いせいか倒れてもあまり痛くないです。頭を打たなければ練習し放題ですよ。赤ちゃんってこんな感じなのです。



「えっぐぅうううー!(ママ―!)」タタタタッ



 床に座っている母に向かって全力のハイハイです。そのまま抱き着くように飛び掛かります。



「あらあら、どうしたのメンテちゃん?」

「うぐー!(見てて!)」



 僕は母をつかまり立ちに利用します。膝に手をつきますが少し低いようですね。でもいけます。まるで∩みたいな形でつかまり立ちをしました。



「つかまり立ちが出来るようになったの?!」

「ん~ぐぅ(そうだよ)」



 母がつかまり立ちをしている僕の胴体を持ってたかいたかいしました。すごく喜んでますね。僕も笑顔できゃきゃきゃと笑っちゃいます。



 やはり変な演出は不要ですね!



 そのまま僕はアニーキ―、アーネやメイドたちの前に連れて行かれ、つかまり立ちを披露します。こうして僕のことが屋敷に広まっていくのでした。



 ◆



 今日の僕はベビーカーに乗ってキッサさんと屋敷の中を散歩をしています。キッサさんは週1ぐらいのペースで屋敷を歩き回って相談することがないか聞いてます。僕と一緒だと悩んでいる人もしゃべりやすいんだって。きっと赤ちゃんパワーに癒されたいのでしょうね。僕の笑顔でメロメロにしてあげましょう!



 今回の行き先は、このお家で一番人が多い場所と思われる休憩室ですよ。僕がそっちは行きたくないと泣くことでキッサさんを誘導し、行き先を決めているんだ。


 中に入ると、僕とキッサさんは使用人たちに囲まれました。うむ、女性ばっかりです。これだと男性は入りづらいですね。


 で、やっぱり僕がつかまり立ち出来るようになったことを聞いてきますね。今日はこのために来たのです。だって変な噂が独り歩きするの怖いんだもん。広められる前に見せちゃえー!



「メンテくん、私で立てるかな?」

「えっぐ!(出来るよ!)」



 まずはキッサさんが僕をベビーカーから下ろします。優しく床に下ろすと、僕はキッサさんの足元にハイハイで近づきます。そして、僕はキッサさんの足を掴みながら立ちます。立ち上がったらニッコニコ笑いながら出来たよアピールです。すごくご機嫌な赤ちゃんでしょ?



「メンテくん、一人で立てたね! 偉いよ~」

「ふぐぅ~」



 キッサさんが僕を抱っこして褒めてくれました。嬉しかったので目の前にあったキッサさんの首でも舐めちゃいましょう、ぺろぺろ~。



「ぎゃあああ?!」

「きゃきゃ!」



 そして、次は私がという声が殺到します。今日はみんなにやると決めていました。だから一人ずつ順番につかまり立ちをしますよ。疲れたふりをしてごろーんとするとスカートの中が見えますね。これはいいね! 立って寝ころんでを繰り返しましょう。


 寝ころんでしばらくすると僕を抱っこしてくれるので、そのときは必ずおっぱいをちゅぱちゅぱします。これは完全におまけです。頑張ってるしこれぐらい許されるよね!




 こうして僕は、たくさんのメイドさんに披露しましたよ。その中でも一番つかまり立ちがやりやすかったのはモドコ・キスイダさんのときですね。忘れているかもしれませんが、彼女はアニーキ―と年齢の近いお友達ですよ。


 モドコさんは、僕の胴体をうまく持って歩けるようにしてくれます。おお、これなら立って歩く練習も出来ちゃうね。さすが子供に慣れているモドコさんです。この様子を見て、他の人たちも真似し始めましたね。



「きゃきゃきゃきゃきゃ!」

「「「「「ざわざわ~」」」」」



 僕も練習が出来て大満足です! もっと遊んで!!



「メンテくんすげえ」

「なんてうらやましい……」

「……ちょっと胸舐めすぎじゃないか」

「胸だけじゃなくてスカートの中にも入ってね?」

「わざとなのか遊んでいるだけか分らんぜよ」

「俺と代わってくれないかな」



 なにやら男性たちからよろしくない声が聞こえますね。もしかして男性の皆様から怨嗟を買っちゃいました? 僕はちやほやされまくってますからね。



 こうしちゃいられません! 僕は男女や年齢に問わずみんなに甘やかされたいのです。



 よし、僕はただ単に立てて嬉しいだけの赤ちゃんアピールを全力でして誤魔化しましょう!



 ◆



 僕は男性の方に向かって歩き始めました。今メイドさんとモドコさんがやった歩く練習をしています。この抱え方だから僕は行きたい所に進めるのですよ。このメイドさんには悪いですが、バランスを崩して男性側に移動したように見せましょう。


 僕がわざと倒れると、メイドさんは頭を打たないように手で防いでくれました。演技なんだけど心配かけてごめんね。あとでちゅぱりますね。倒れた後は僕が周りをきょろきょろ確認して、一人の男性と目が合ったように見つめ合います。もちろんこれも演技です。そして、ニコニコ笑いながらハイハイで男性の方に移動します。


 こっち来るぞという声が聞こえましたが無視して高速ハイハイです。



「うぐぅー」

「えっと、メンテくんどうしたんだい?」



 目をキラキラさせて首を少し傾けます。見つめ合ったままニッコニコの笑顔になって、両手を男性に向けます。抱っこして~。



「へ? おらと遊びたいのかい?」

「えっぐ」

「メイドさんじゃなくていいのかな。おらおっさんだよ?」

「ううう……」←嘘泣き

「ああ。分かったから。ほらほら、泣くんじゃないよ」

「あぐううう!」



 この男性は抱っこしてくれました。確かこの人はお家の警備している人ですよ。力があるせいか軽々と持ち上げちゃいます。たかいたかいや僕を飛行機のようにして遊んでくれます。一通り遊んだ後は抱っこしてくれました。そろそろ頃合いでしょう。ここで僕の作戦を開始します。



「ちゅぱちゅぱ~」

「ぬおおおおおおおお?!」



 服を舐めてべったべたにします。僕を離そうとしますがぎゅっと抱き着きますよ。嘘泣きもかねてくっつきます。満足するまで離れません。しばらくしたら下りたいアピールをして次の人に向かいます。



「ちょちょちょ、ちょっと待ってよメンテく~ん?!」



 次の男性には、つかまり立ちを披露します。足のズボンをわざと下に引っ張って脱がそうとします。この人だけベルトをしてないのが見えたので。



「えっぐうううう!」

「ズボンがああああああ、あっぶねえ」



 なんとか立てました。焦っている男性を笑顔でキラキラ見つめます。で、そのまま抱っこが始まり終わる頃にはめちゃくちゃ舐めます。それから次の人、次の人と順番に遊んで服をべたべたにしていきます。


 この部屋にいる男性全員と遊ぶと、みんな疲れた顔をしていました。それを見ていたキッサさんが近づいてきます。



「大変だったでしょ~」

「そうですね。服がべたべたですよ……」

「メンテくん楽しかった~?」

「あぐうううう!」

「またおじさんやお兄さんたちと遊ぼうね」

「だあぶぅううう!」



 キッサさんは僕を抱っこして部屋から出て行こうとしましたが、メイドさんに囲まれてしまいました。そして、またみんなで僕と遊び始めます。ゲヘヘ、もっと甘えさせて~。


 僕の周りはさわざわしていますが、僕には男性たちの声がばっちり聞こえますよ。人間って聞き分ける力があるからね。



「疲れたー」

「服がやられちゃったよ」

「ああ、なんでも口に入れるんだな。俺はメンテくんが口にするのはおっぱいだけかと思ってたぜ」

「俺も俺も」「俺も~」「僕もね」「わしも」「おらもさ」「わいもそう思ってたよ」

「違ったんだなあ。誰でも舐めるから困ったもんだよ」

「赤ん坊にあれこれ嫉妬しても意味ねえなあ……」

「そうだな。遊ぶと毎回こうなるんだろ? メイドの仕事ってすげえよ。尊敬するわ」

「「「「「ざわざわ~」」」」」



 男性のみなさんは、僕がおっぱい以外にも何でも口に入れるんだと理解してくれましたね!


 目の前におっぱいがあるからそれを舐めちゃう、それが赤ちゃんという生き物です。決して僕はただの変態ではありありませんよ?


 メイドさんも赤ちゃんのお世話で大変なのです。ちやほやされているように見えるけど必死に頑張っているだけですからね。だから僕がおっぱい舐めたり、スカートの中に入るのも当たり前なのです。これは普通の遊びなのですよ。へへーん、僕は間違ったことはしていませんね!



 メンテは老若男女問わず誰にでも愛されるのであった。そして、次の目標はスキルだ! と意気込んだという。


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