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63話 「カフェの勘違い」

前回までのお話

朝の日課があります。

 今僕はアーネが遊んでいる様子を見ています。



「次わたしこれー」

「では私はこちらの人形を使います」「じゃあ私はこの子で」「このわんちゃんのまま続けますね」

「えへへ、いいよー!」



 アーネとメイドさん達は、普通のお人形遊びをしています。今日はコケシさんがいないので人形が動くことはありません。僕の予想ですが、あの人形を動かす魔法がすごいのは何らかのスキルの影響かもしれませんね。


 僕はカフェさんに抱っこされて膝の上にいます。ただ遊びを見ているように思うでしょ? 実は目的があってそうしているのです。



「ういーん」タタタタッ!



 アーネが座りながら腕を上に伸ばして人形の位置を高くしていきます。どんどん高くなったと思うと、立ち上がってどこかに走りだしました。手に人形を持って空を飛んでいる姿を再現しているのかな。小っちゃな飛行機持って遊んでるみたいだ。そんなアーネをメイドさん達が慌てて追いかけます。ふむふむ、みんなバラバラだ。


 僕は人形遊びではなく、人が立つ様子を詳しく観察しているのです。決してパンツが見える位置だとか勘違いしないでね! バラバラなのはパンツの色ではなく立ち方ですよ。



 アーネは、左手を床に着いてから立ちます。右手に人形を掴みながらも軽々立てちゃうのですよ。さすが4歳ですね。キッサさんなんて立つときなんて毎回よっこらと言いますよ。子どもには掛け声なんて不要なのです。


 メイドさんもアーネと同じような感じですね。人形をつぶしながら立つ人もいれば、手を使わず普通に足だけで立つ人もいます。中には手ではなくしっぽで立っちゃうすごい人もいるのです。でも僕しっぽないからなあ。あとここにはいませんが、フウセンさんというメイドは常に浮いていてびっくりしました。はい、僕には絶対真似出来ません。



 僕はつかまり立ちの練習をしたいのですが、みんなが見張っていてコソコソ出来ません。見張っているというのはあれかもしれませんが、たまには仕事をサボってもいいんだよ? 僕はこっそり練習してみんなを驚かせたいのですよ。


 そういうわけでみんなの立ち方を見て、イメージトレーニングをしています。どうやれば感動的な演出になるのかを考えているわけですよ。



「んぐぅ~(困ったなあ)」

「メンテ様どうなさいましたか?」

「……」じぃー

「……えっと、アーネ様と一緒に遊びましょうか?」

「あーぐぅー(違うんだよね)」



 振り返って見て見ましたが、カフェさんに伝わりませんね。体の向きも変えてみます。そのままカフェさんに抱き着きます。ぎゅうっと両手両足でカフェさんを挟んで顔をスリスリします。



「これが噂の甘々モードですか……」

「えぐぅ?!(え、なにそれ?!)」



 また変な噂が広がっていました。なぜかこのお家では謎の噂が流行るのです。出どころが分らないし、聞きたくないのでこれはスルーしましょう。



「あーだぁーあー(立つから支えてね)」

「……?」



 カフェさんは首をかしげました。僕はぎゅっとするのを止めて、カフェさんの太ももの上で膝立ちの状態になります。これは全体重をカフェさんに預けているので出来るのです。僕だけの力ではありませんぞ。



「うーだぁー」

「……あららら」



 カフェさんは少しのけ反りました。片方の手は床に、もう片方は僕の体を支えています。


 このまま続けると僕が頭から落ちて危ないと判断したのでしょう。これは好都合なのですよ。そのままカフェさんの太ももに僕の小さな足の裏をつけます。そのまま立とうと頑張ってみます。


 カフェさんの上に僕が覆いかぶさるように乗っているだけな気がするでしょう? 一応これはつかまり立ちの練習なのですよ。角度があるので倒れこんでいるように見えても意外と足を使うのです。


 足が完全に伸びているせいか少し高いところに届いちゃいますね。おかげで僕の目の前にカフェさんの首が見えますよ。いつもなら僕の正面はおっぱいなのです。すごい違いでしょ~?



「えっぐー!(立てたよー!)」足バタバタ

「誰か奥様を呼んできてください。出来るだけ早くお願いします」

「――?! 私が言ってきます!」



 メイドさんが母を呼びに行きました。もしかしてカフェさんは、僕がつかまり立ちをしたのに気付いたのかもしれません。それで他の誰かに急ぐよう指示したのでしょう。


 僕が落ちないようにカフェさんは必死に支えてくれます。これは初めて立った僕の姿をありのまま母に見せようとしているに間違いありません!


 この状態をキープするには結構大変です。僕が何もしなくても感動の演出をしてくれているカフェさん。なんて素敵な方なのでしょう。若くしてメイド長なのも納得の心遣いですよ。もっとスリスリして甘えますね!



「ど、どうしたの?」



 母がやっていました。結構早く来ましたね。



「えっぐううううう!(僕を見てーーーー!)」バンバン

「奥様こっちです……」



 さあ母よ、褒めてください。僕、カフェさんにつかまって立てましたよ!



「えっと……。これはどういう状況なのかしら?」

「メンテ様がおっぱいを求めて暴れています」

「うんぐぅうううう?!」



 ふえっ?! カフェさん何を勘違いしてるのかな?



「え?! メンテちゃんさっきあげたじゃないの」

「えぐえぐ(違うよ)」バンバン

「ほ、ほら奥様。おっぱいを叩いて早くしてとアピールしています。このままではぎゃん泣きしてしまいます」

「あーぐうううう!(カフェさあああああん!)」



 そういえば、カフェさんは勘違い系のポンコツでしたね。色々とやらかすタクシーさんと違ってあまり実害がないのですが、大事なときに限ってこれなのです。僕の力ではどうしようもないね……。


 こうして僕の初つかまり立ち? はなかったことになりました。悲しくなったのでおっぱいタイムで気を紛らわしましたよ。



 演出とか余計なことをしないで、普通に立とうと思うメンテであった。



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