62話 「ダンディと僕の朝の日課」
前回までのお話
今後の目標を決めた。
「んぐぅ~」
「えっとだなメンテ?」
「あぐぅ~」
「パパは仕事に行きたいんだ」
「うぐぅ~」スリスリ
「すまないがもうおしまいだ」
「うううう……」←嘘泣き
「はっはっは、パパがいいのか」
「えっぐうぅああああ」スリスリ
ここは父と母の寝室。メンテはダンディに甘えまくっていた。
「丁度いいからメンテちゃん見ててね。ママはアーネの身支度を整えてくるから」
「わかったよ、ママ。タクシーにこの部屋に来るよう伝えてくれ」
「はいはい、行くわよアーネ」
「……うん」←眠いアーネ
レディーとアーネは部屋から出て行った。レディーは、メンテちゃん預けられるし私の時間が増えてラッキーねと思っているのは秘密である。
「ママ行っちゃったからパパと遊ぼうな」
「ぐぅー」
「パパ疲れたからベットに座ろうかな。おろしてもいいかな?」
「うううう……」←嘘泣き
「立ったままの抱っこがいいのかな?」
「ぐうううううう!」ぎゅっ
ダンディは寝起きのこの時間、メンテを抱っこしないと泣いてしまうと分かっていた。抱っこの途中でママに押し付けたらすごく泣いて大変だったと怒られたことがあるのだ。このときのメンテは、ただ店に行きたいと駄々をこねていただけなのだが、誰にも気付かれることはなかった。
どこでもいいから外出したいメンテ。泣けば連れて行ってもらえるかもとの魂胆で毎朝実践しているのだ。そのため抱っこをしてもらうことが大好きで甘えん坊な赤ちゃんと思われるようになってしまったという。それはそれで利用しちゃおうと今に至っている。とても賢い赤ちゃんである。
「もうそろそろ時間だな。下ろしていいかな?」
「ううううぅ……」←嘘泣き
「もうちょっと遊ぼうかな?」
「んぐううう」スリスリ
「ママもタクシーも遅いなあ」
「うーだぁー」
「パパはもう時間だから一人でお仕事に行っちゃおうかな~?」
「ううううぅ……」←嘘泣き
「はっはっは、やっぱり今日は休もうかな」
「えっぐうううう!」スリスリ
このように抱っこをやめようとしたり、仕事に行こうとするとメンテは泣いてしまうのである。実は毎朝メンテとダンディはこのように遊んでいるのだ。毎朝このような茶番劇を見ていたレディーは、また変な遊びをしているわね程度にしか思っていない。
ダンディはメンテを甘やかしまくっていた。今日も絶好調である。
コンコン。
「タクシーか。入ってくれ」
「失礼しますぞ。ほほっ、今日も旦那様とメンテ様は楽しそうですな」
「んぐぅうおお!(タクシーおはよう!)」
タクシーが部屋にやって来た。この執事はこれを毎朝見慣れているのでいつもの微笑ましい光景だと思っていた。
「わたしもメンテ様を抱っこしてもよいですかな?」
「うううう……」←嘘泣き
「タクシーに抱っこしてもらおうか」
「うぐうううう」ぎゅうううううううううう
「はっはっは、今は嫌みたいだ」
「ほほっ、やはり親が一番ですな。私の娘も小さい頃はずっと抱っこしてと可愛かったものです」
この流れもいつもの茶番である。なおレディーのまた3人で変な遊びをしているとの発言が噂となり屋敷中に広がっていった。だが、この3人は噂など知らなかったりする。噂される側なので。
「それにしてもメンテ様は感情が豊かになりましたな」
「はっはっは、そうだな。今ではいろいろ覚えたようだぞ」
「生まれたばかりでは泣くだけですからね。今では喜びや悲しみも感じるようですな」
「メンテも少しずつ大きくなってるな。パパは嬉しいぞ」
「んぐぅ~」ぎゅっ
これは茶番ではなく初めての展開である。メンテは少し照れていた。
「そろそろですな。奥様も遊びが終わったら食べに来るように言ってましたよ」
「今日の抱っこはおしまいだ。ママのところに行くぞメンテ!」
「えっぐ~」ぎゅっ
レディーにバトンタッチしたダンディは仕事に行くのであった。このふれ合いがここ最近のダンディとメンテの朝の日課である!
ちなみに朝食後は、恒例のおっぱいタイムが始まる。この至福の時間だけはメンテのパパを利用して外に出るよりも優先されるのであった。