59話 「幼馴染と遊ぼう!」
前回までのお話
じいじは孫に遊ばれた。
祖父母とレンタカーさんが来てからナンス家に来るお客様も増えました。昔はこのお家に住んでいたので、この町には知り合いが多いそうですよ。今は3人とも王都住んでいて、王都にナンス家の支店があるみたいなことを言ってたよ。
隠居しているのかと思ったけど違いましたね。
それと祖父母は、昔この畳の部屋に住んでいたんだって。だからここを使うんだなと納得しました。このお家も最初はこの畳の部屋と同じ大きさの普通の一軒家だったそうです。そこからだんだん家が大きくなっていったんだね。それを忘れないようにこの部屋を作ったのと、昔から畳が好きだって言ってたよ。
なんか祖父母の初心を忘れないところは尊敬しちゃいますね。僕は祖父母もこの部屋も大好きですよ!
現在僕は畳の部屋にいます。お客様と祖父母とナンス家が全員一緒にです。
本日のお客様は町長さんとその家族です。僕は忘れていないけど念のために心のメモを引っ張ってみますよ!
【フルク・オッサーナ】
ダンディと古くからの親友、親しみやすそうな顔のおじさん、現在はこの町長
【チクバ・オッサーナ】
レディーの竹馬の友、優しそうな雰囲気、現在はフルクの妻
【ナジミ・オッサーナ】
フルクとチクバの娘、年齢は僕より1か月ほど下
チクバさんとナジミは何回か会ってますが、フルクさんは最初の1回しか会ったことがないです。きっと忙しいのでしょうね。
そして、今現在僕はナジミは向かい合っています。互いの親が遊ばせようと面白がって近づけるのです。幼馴染だから仲良くしようねという魂胆でしょう。ナジミとは直接遊んだことがないのでどう反応したらいいかわかりません。でも僕の目的はただ一つ。
僕に本物の赤ちゃんっぽさを教えて!
◆
まずはナジミを観察です。
「「……」」
ナジミも僕と同様に見てきます。これはどちらかが動かないとダメかな? まずは僕から相手を呼んでみましょう。
「うーぐー?(ナジミちゃん?)」
「あ~」
「え、えぐぅ~(こ、こんにちは)」
「あう~」
「「……」」
……どうしよう。何を言っているのかさっぱり分かりません。まあお互い赤ちゃんですからね。とりあえずナジミが反応するまで話しかけてみましょう。
「んぐ~(僕メンテだよ)」
「あーあー?」
「うぐぅ(一緒に遊ぼうよ)」
「うーあー」
「あぐぅ?(え? 何?)」
「……」
「えっぐ!(おっぱい!)」
「……うううー」
急にナジミが僕から目を逸らしました。泣きそうな顔でチクバさんに助けを求めます。
あれれ? 僕変な事言ったかな??
大人+子供2人が僕たちの様子を見て笑っています。アーネとアニーキーが大人ゾーンにいてもう子供じゃない感出してますよ。数年前なら二人ともこっちの立場だったでしょうに。
「ナジミは人見知りなのよ」
「私も最近まで人見知りされてたよ」
この声は、チクバさんとフルクさんです。フルクさんはパパ見知りされて大変だったようですね。
どうやらナジミは、僕を人見知りしているようです。どうりで話しかけても反応がおかしかったわけですよ。僕が困らせたわけではなかったので安心しました。
「フフッ、大変ね。メンテちゃんが初めて人見知りしたのは3か月ぐらいだったかしら。一週間程で慣れちゃったようだけど」
「はっはっは、今では誰にでも人懐っこいぞ」
確かその頃は、メイドが多すぎて名前が分らないから困惑していた時期ですね。だって日替わり定食みたいにメイドが入れ替わるんだもの。顔や胸で覚えたら楽だと気付いて今に至ります。
「あたいもびっくりしたわよ。普通はナジミちゃんみたいな反応するのにねえ」
「わしもじゃ。アニーキーとアーネには人見知りされた思い出があっての」
「わたし人見知りしてたのー?」
「アーネはね、俺と父さんとタクシーさん以外の男の人が近づいたら泣いてたよ」
「えへへ、全然おぼえてないよー」
周りが騒がしいですがもう一度チャレンジしてみましょう。ナジミは恥ずかしがり屋なのです。慣れたら僕も受け入れてくれるはずです。
「……えっぐ!(遊ぼうよ!)」
「うあああああああん」
ナジミがハイハイでチクバさんのところに逃げて行きました。話しかけたのが悪かったのかも?
僕は言葉を理解しています。ですが、ナジミの言ってることは分かりませんでした。つまりナジミはまだ本当に赤ちゃんということでしょう。言葉を覚えていないため会話するのはまだ早いということなのです。これが偽りなしの赤ちゃんですか。
まあナジミからしたら見ず知らずの人が突然外国語でしゃべりかけてくるようなもんです。赤ちゃんとか大人とか関係なく驚いちゃうでしょ? そういうことですよ。
そういえばなんで猫とは会話出来たのかな? 不思議ですね。
「はいはい、泣かないの。メンテくんは怖くないよ」
「うああああん」
「えへへへへ、メンテが泣かしたー」
「あれは戸惑ってるだけだよ」
兄貴とアーネは笑っていますが、言ってることは的確な気がしますよ。同じ子供だから何となく感じるものがあるのでしょうね。
「……んぐぅ?!(……ってあれは?!)」
驚愕です。僕より年下な赤ちゃんがつかまり立ちしていたのです! 今更気づきましたが、僕よりナジミのほうが体デカくないですか?!
もしかして僕の方が赤ちゃんなのでは???
いやいや、そんなはずはないです。確かめなければとナジミにハイハイで接近します。ナジミはチクバさんの腕にしがみついて泣いてますが、チクバさんは抱っこしないようですよ。この状況を楽しんでいますね。僕だったらすぐおっぱいタイムが始まるのにね。今のうちに近づいてサイズを確認しますよ。
「ナジミ~。メンテくんが来たわよ」
「うあああああん」
「えぐぅ……」
じぃーっとナジミを見ます。僕より全体的に足も腕も太いです。祖父母の僕の体は小さいという話は本当だったようですね。
それに普通に立っているように見えます。つかめるものがあればどこでも立てるみたいですね。足だけでなく腕の力も必要かな? ふむふむ、参考になります。つかまり立ち以外は、僕と変わらないと思いますね。1か月違いなら誤差ですよ!
僕も抱っこしてとチクバさんにもっと近づいてみましょうか。
「うぐぅー」
「メンテくんごめんね。ナジミも本当は遊びたいのよ。でも恥ずかしいみたいなの」
「うああああああああああああん!」
僕が近づくとナジミはもっと暴れ始めました。そうか! これは嫉妬だね!
僕に母親が取られると嫌がっているのでしょう。この反応が純粋な赤ちゃんなのですね。まさに本能のまま生きる。これは参考になります。
そっか赤ちゃんに我慢は必要ないんだ。それなら僕も負けられませんね。
よし、僕もやるぞー!
このまま近づくと僕はナジミにビシバシ叩かれてしまいそうです。本能で危ないと感じたので、僕はハイハイで母に突撃します。
「んぐうううううう!」
「フフッ、メンテちゃんが戻って来たわ」
「あっぐぅー!」
「えっ?! またなの」
母の服をめくって胸に侵入成功しました。そのままおっぱいタイムです!
こうなった僕は自重しませんよ!
幼馴染と遊んだメンテはいろいろ学んだという。そんな演技をしなくても赤ちゃんっぽいことに本人は気付いていないのであった。