50話 「祖父母が来た その1」
前回までのお話
子供部屋をハイハイした。
「メンテちゃん。おめかしするわよ~」
「んぐぅ?」
僕はいつも同じような服を着ています。赤ちゃんの快適な服ってやつですね。それの色違いを着まわしているという状況です。ですが、今日はおめかしをするそうです。生まれて初めてじゃないでしょうか?
もしかして今日は僕の誕生日なのか?!
「えっぐ~」バタバタ
「ちょっと動かないでメンテちゃん」
さて、何があるのでしょう?
◆
ナンス家一同とたくさんの使用人が家の前に並んでいます。僕はベビーカーに座ってぼけーっと観察中です。おめかしした服は動きづらいけどカッコいいのかな? 赤ちゃんにスーツ着せるのはどうなんでしょうね。
「今日はばあばとじいじが遊びに来るのよ。失礼のないようにね」
「ばあばとじいじが来るんだ。やったー!」
「俺は魔法を見てもらいたいな」
「わたしもなんか欲しいー!」
「はっはっは、二人ともおねだりするなら考えておけよ。パパは何か素材が欲しいな。もちろん高いやつをな」
「みんな、おねだりするときはさり気なくやるのよ。わかった?」
「「はーい」」「わかってるさ」
「……んぐぅ?」
おねだりするのは絶対なようです。それより父も一緒にねだるってどういうことかな。なぜか母も止めませんし。祖父母がどんな人なのか余計に気になっちゃいますよね。
ふ~ん、今日は僕の誕生日ではないのですね。ちょっとがっかりです。でも祖父母に会えるのは楽しみですね!
「馬車が来たわよ」
「はっはっは。よし、みんなで出迎えするぞー。準備はいいかー!」
「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」
「……んだぁ?」
何だか盛り上がっていますね。使用人達も何かするのかな?
馬車が止まると人が下りてきました。あの人は老人に見えません。いったい誰でしょう?
「こんにちは。みなさんお久しぶりです」
「はっはっは、レンタカーが御者をしていたのか。久しぶりだな。元気にしてたか?」
「レンタさん久しぶりね」
「お久しぶりです。私は主の執事ですから何でもしますよ。今回はどちらかといえば付添い人になりますね」
「はっはっは、タクシーもいるし親子水入らずでゆっくり休むといいぞ」
「ありがとうございます。では主を呼んできますのでお待ちください」
この人はタクシーさんの息子なのかな? 名前的に絶対そうだよね!
レンタカーさんが馬車の扉を開けました。馬車の中でコソコソしゃべっていますが、僕には丸聞こえですよ。なんか揉めてる? みたいです。
「マダム、ミスター。到着しましたよ」
「マダムだなんて恥ずかしいわ。いつも通り名前で呼んで頂戴」
「いっそのわしらのことは呼び捨てでもいいんだがな」
「えー。威厳を示したいって言うからずっと一緒に練習したじゃないですか」
「今見えを張ってもいつかはバレるわよ。可愛い孫の前で格好をつけてずっと慣れないことをしていたってバレたときの方が余計に恥ずかしい思いをするから嫌よ」
「……それもそうじゃ。マダムとミスターは禁止だレンタカー。今まで通り呼びなさい」
「なんで今ここで言うんですか。もー分かったのでそろそろ行きましょうよ。遅いと俺が父に怒られちゃいますよ」
「怒られてもいいじゃないの別に。ねえ?」「うむ、そうだな」
「このジジイとババアがっ!!」
……どうしよう。これ聞いちゃダメの残念なやつだね。
「早く行きますよ。可愛いお孫さん達が待ってますよ~」
「よいしょとー。はいはい、行きますよ。あなたも後ろについて来てね」
「分かっとるよ」
「さあ、孫を可愛がってじじばばの立場を良い物にしちゃうわよ!」
「わしも多少はカッコつけてもいいだろうか?」
「いいんじゃない? あたいも理想のお婆ちゃんらしく振舞うから協力しなさいよ」
「わかった。では行こう」
「だからここで会議しないでください。あと俺も協力するんで頑張りましょうよ。一緒にお孫さんにいいとこ見せましょうよ。ね?」
「うう、ありがとうレンタカー」「お前を連れてきて良かったよ」
「う、なんで今泣くんですか……」
……やっぱり聞かなかったことにしてもいいかな?
どうやら孫に理想のおじいちゃんとおばあちゃんと思われたいようです。今の会話を聞く限り、僕の祖父母は案外チョロそうな人かもと思いました。多分僕の両親はこのことを知ってるけど黙ってますね。むしろ利用していると思うな。
よし、僕は赤ちゃんとして全力で祖父母をもてなしましょう。僕の理想の孫っぷりを二人に見せつけてやりますよ!
そうですねえ、まずは祖父母の名前から教えてほしいかなあ。