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45話 「鏡を見た」

前回までのお話

人形遊びのクオリティは高かった。

 僕はごろーんと寝返りの運動をしています。最近では、ハイハイもスムーズに進めるようになってきました。もうそろそろ立てそうな気がするけど、構ってほしいのであまり出来ない演技を頑張っています!




 今日もお風呂を楽しみました。それからしばらくして、僕の寝る時間が近づいてまいりました。


 兄貴以外のナンス家のみんなは寝室にいます。ここは父と母の部屋で、僕とアーネと両親の4人がいつも寝ている場所なんだ。兄貴はそこそこ大きい子供だから自分の部屋で寝られるんだよ。僕とアーネはまだ幼いから親にくっついて寝てるね。



「最近のメンテちゃんはよく動くわね~」

「はっはっは、成長したってことさ」

「私もゴロゴロできるよー」

「んっだあ!」



 寝る前の会話を楽しんでいるとコンコンと扉がなりました。父の許可が出るとガチャっと扉が開いてタクシーさんが入って来ました。



「旦那様、例のあれをお持ちしましたよ」

「おお、届いたか。そこに置いておいてくれ。タクシーありがとう」



 ニッコリ笑うタクシーさんは、箱を置いて部屋から出て行きました。何でしょうあの箱は?



「あら、何を頼んだの?」

「新しいおもちゃー?」

「んぐぅ?」

「はっはっは。みんな気になるかい? いいよ、開けてごらん」

「やったー!」



 アーネが走って箱に飛びつきました。躊躇(ちゅうちょ)なく箱を開けました。すると中から銀色の何かが出てきましたよ。四角いコンパクトサイズのあれはもしかして……?



「えー、なにこれー?」

「鏡かしら?」

「はっはっは、鏡で正解だ!」

「えぐぅ?」



 そういえばこの異世界で鏡を見る機会がほとんどありませんでした。一応あるといえばこの屋敷にもあります。ただぼやけるのであまりはっきりと見えませんがね。一度だけ自分の顔をじっくり見たのですが、髪の色が黒っぽいことしか分かりませんでした。



「あ、これすごくきれいに見えるよー!」

「高級な手鏡ね」



 アーネと母は自分を見て楽しんでいます。僕にも見せてーとバタバタ暴れます。



「メンテちゃんはこの鏡を使って見るのは初めてね」

「そういえばそうだな。この屋敷は全て安いものに変えたんだったな」

「みんな鏡の前だとついついポーズとかしちゃうのよね」

「はっはっは、男は魔法を使った姿を確認したいものなのさ。でもママはポーズしなくても綺麗だよ」

「……もうパパったら」



 高級な鏡の前でカッコつけたり、魔法の練習をして割れてしまうそうです。なんとなくやりたくなる気持ちは分かりますよ。みんなも鏡の前でいろいろでチェックしちゃうでしょ?


 そして、僕の目の前でイチャつく両親でした。もはや見慣れたいつもの光景です。



「メンテみてみてー」



 アーネが僕の顔の前に鏡を持ってきました。そして、僕は自分の姿を初めて認識しました。



 おお……、ただの可愛らしい赤ちゃんだね!



 服の色を変えるだけで男か女かわからないような赤ちゃんです。見た感じそんな顔ですよ。


 髪は母親に似ていて黒なのは知っていました。でも髪が細いせいか真っ黒ではないですね。あとカッコいいのかと言われると分りません。まだ赤ちゃんなので可愛いもんですよ。この世界ではどのようなタイプがモテるのかな?


 じぃーっと鏡を見ていると周りで笑い声が聞こえました。



「フフッ、メンテちゃん驚いてるわね」

「これ自分の顔だよー」

「はっはっは。やっぱりメンテは面白いな」



 そりゃ初めてはっきりと自分の顔を見れましたからね。前世の鏡と同じように見えるから感動は少な目です。でもこの世界では珍しい体験をしたように思われてるようです。僕赤ちゃんだから何も知らない演技を忘れてはいけませんね。



「実はこの鏡をいじって魔道具にしたんだ」

「えぐ?!」



 な、なんだってー?! それは早く行って下さい!!


 僕はアーネから鏡を奪います。よこしなさい。そのまま触りまくったり押しても叩いても何も起きません。くそっ、何がスイッチなんだ? こうか、こうかな?



「あ、メンテなめてるー」

「フフッ、そこに映っているのはメンテちゃんよ」

「はっはっは!」



 そこには、ただ可愛い赤ちゃんがいたという。メンテの可愛さは天然なのだ。演技しなくてもそう思われるのである。なお本人は全然気付いていないのであった。



「ほらメンテ。パパに貸してごらん」

「んぐ」すぅ



 僕は素直に渡します。魔法が見たいので!



「この鏡の裏側は薄い魔石になっていてな。どこでもいいから魔力を流すとこうなる!」

「あら素敵じゃない」

「ふええ~。明るいね」

「だぁ?」



 なんと鏡が光りました。僕はで? という顔で父を見ます。続きはやく!



「部屋の明かりを消すぞ~」



 カチッという音とともに暗くなりました。



「あ! すごーい」

「これはすごく便利ね。お家の鏡は全部これにしましょう!」

「……んぐ」



 暗いところでも画面が見える鏡になりました。みんな興奮していますね。確かにこの世界では素晴らしい鏡だと思いますよ。でもどうしてもこれだけは言いたいのです。あのサイズで暗いところでも画面がはっきり見える、そんな便利な物が前世にあったのです。




「えっぐううううううう!!!(スマホかよ!!!)」




「フフッ。メンテちゃんもすごいって」

「パパ、私これ欲しい」

「はっはっは。みんな驚いてくれたから良かったよ。残念ながらまだ研究中だからひとつしかないんだ」

「パパ頑張って! ママ全力で応援しちゃうわよ」




 この日はみんな興奮して寝るのが遅くなったという。後日、兄貴がみんなずるいと怒ったとか。



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