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43話 「離乳食 その3」

 シェフさんが僕の離乳食を並べました。カラフルな色の食べ物がありますね。



「これはデスキャロットをペーストしたものだ。そして、ブラッドカボチャとポテキーのジャカイモも同じように用意したぜ。これならメンテの坊ちゃんでも大丈夫だろう」



 食材の名前は異世界風ですが、なんとなく何か分かりますね。多分ですがにんじん、かぼちゃ、じゃがいもでしょう。歯がない僕のために柔らかい食べ物を選んだようですよ。



「んぐぅ」指ぷいっ

「これが食べたいの?」

「だぁぶう!」



 まずは、このにんじんから食べてみましょう。最初は口に入ってくるスプーンに戸惑いました。これからもしばらくあーん生活が続くので、早く慣れていきたいところです。



「メンテちゃん、あ~ん」

「だぁー、ぱくっ」



 デスキャロットは普通のにんじんですね。僕がなんだこれと咀嚼していると、シェフさんは説明してくれました。シェフさんは料理の事となるとよくしゃべります。



「デスキャロットは人参のモンスターだな。普段は人参の姿で、騙されて人参を採ろうと近づいたものに攻撃することで有名だ。普通に育てた人参より味は甘いため、何度も食べたいと虜になる人が多いのだとか。だが今回用意したのは甘さ控えめの個体だから安心してれ」

「ちょうどいい甘さってことかしら」

「甘い物を知ったら他の物を食べなくなるからね。メンテくんがグルメな赤ちゃんになったら嫌よ」

「ごほっごほっ。えっぐうううう!」

「メンテちゃん大丈夫? 背中トントンするからね」



 ぼ、僕は何も味を知らない普通の赤ちゃんですからね! 


 ……これ続けないとダメなのか。次から初めて食べた感を存分にアピールしましょう。よし、次はあれだと指を向けますよ。



「今度はこっちね」

「それはブラッドカボチャだね。血で育つ珍しい野菜だが味はおいしいのさ」

「うぐぅ?(何の血?)」

「はい、あ~ん」

「だぁー、ぱくり」



 何の血なのかはわかりませんが食べてみます。にんじんとは触感が違います。これも少し甘いですね。ふむふむ、赤ちゃんにもなかなか悪くない味ですよ。で、何の血が栄養なんですか?



「うんだあああ!(何の血なの!)」バシバシ

「今度はポテキー食べたいのね。もう何でも興味津々で可愛いわあ~」

「えっぐうう!(違うよ!)」バンバンバンバンッ

「はいはい、あ~んして」

「だぁー、ぱくぱく……」



 何だかんだ言っても抗えませんでした。あ、これ味は薄いですがポテトですね。この世界にポテトチップが存在するなら作って貰いたいです!



「ポテキーを好きな子どもが多いですよ。この芋は、収穫の時期になると何もしなくても勝手に土から出ます。育てるのが簡単と芋農家に人気の品種ですな。それと今食べた3種類を合わせた野菜のスープもありますのでご一緒にどうぞ」

「あら、おいしそうね」



 シェフさんは僕と母の前にスープを置きます。どろっとしているのでポタージュみたいな感じです。本当は母のスープが飲みたいけど、僕は何も知らない設定の赤ちゃんです。ここは目の前にある薄味スープで我慢しましょう。



「うっぐ~?」

「野菜のスープですって。ママが食べてみるから見ててね。フフッ、おいしいわよ。メンテちゃんも食べましょうね」

「えっぐー!」バタバタ



 興味津々の演技をしている赤ちゃんは一口ごくりです。ふむ、これは味がしっかりあっておいしいですな。固形物より食べやすいので、赤ちゃんには汁物は嬉しいです。



「げふぅ~」

「メンテちゃんゲップ出ちゃったわね。おいしかったのかしら?」

「んぐぅうううううううう!」ダンダンッ!



 大喜びでみんなにおいしかったアピールをします。ついつい机を叩いちゃったよ。



「まだいっぱいあるわよ。もっと食べましょうか」

「えっぐう!」



 それからいっぱい食べたり飲んだりしました。これを作ったシェフさんはすごいですねえ。記憶では知っている懐かしい味を思い出させるのですよ。遊ぶ機会があれば甘えちゃおう!



 ◆



 みなさん食べ終わってちょっと休憩中なのです。僕も満足しました。



「メンテちゃんが離乳食を嫌がらなくて良かったわ」

「本当ね~。スープも飲めたし今ならミルクも大丈夫よ!」

「フフッ、そうね。そろそろ乳離れしてもおかしくないよね?」

「ごほっ、ごふぅうう?!」

「またむせちゃったの。ほらほら、大丈夫よ」



 いきなり大ピンチになりました。ついつい食べ過ぎてしまいましたよ。これを乗り切る、それが僕に与えられた試練でしょう。さあ神よ、僕を見ていてください!



「えっぐううううう!」

「メンテちゃんもミルクが気になるのかしら?」

「んだぁ」←母を見つめながら両手をあげる

「こっちに来たいのかな」

「んぐうう!」←足をバタバタさせる

「きっとレディーに抱っこして欲しいのよ」

「やっぱりそう見えるかしら……」



 なんとか抱っこしてアピール成功です。



「シェフ、メンテくんのためにミルク作って来て」

「了解だぜ。急いで作ってくるよ」

「お願いね」



 くそおおおお。キッサさん余計なことを言わないでよ!


 ふうー、落ち着きましょう。ここで焦ったらおしまいなのです。ここは早く抱っこしての演技をしましょう。



「ん~だん。ん~だん」←両手で机をバンバン叩く

「ご機嫌ねえ」

「きっと待ち遠しいのよ」

「……?」



 ……あれれ? 母は抱っこしてくれませんね。この選択は間違っていたようです。こうなったら機嫌の良い振りをしながらシェフさんを待つ作戦に変更しましょう。



「ミルク出来ましたよー」

「んだあ!」←笑顔で机をバンバン叩く

「あら早かったわね。ご苦労様」

「シェフさんありがとう」

「いえいえ、俺もメンテ坊ちゃんのミルクを飲む姿が見たいんですよ」

「母さん、実は俺も見たかったです」

「わたしも見たいなー」

「はっはっは。ついにミルクデビューか」

「男の子のミルクはアニーキ―様以来ですね。私も興味があります」



 みんなが僕に注目します。タクシーさんも無言でうんうんと頷いていました。これは僕のアピールが出来る絶好の機会ですね。やってやりましょう!



「んぐぅ~」



 期待してるよと母を見つめます。目をキラキラ光らせながら首を少し傾けます。これで可愛い赤ちゃんがミルクを求めるように見えるでしょ?



「よいしょ。こっちにおいで」

「んだぁー」



 やっと母が僕を椅子から出してくれました。ミルクが飲みやすいように横向きで抱っこです。さあ勝負の時間ですよ!



「メンテちゃん、あ~んしてね」

「だぁー、ぐぅうううおおおおおおお!!!!!」



 バシンッ!!!!!!



「「「「「「「「?!」」」」」」」」



 ミルクを飲むとみせかけた僕は、全力でパンチをして哺乳瓶をぶっ飛ばしました。さっき覚えたパンチです。みなさんポカーンとしていますね。さっきまで笑顔だった赤ちゃんが別人のように豹変したのです。



「んぐぅ!(今だ!)」

「えっ?」



 僕は母の服の中に素早く潜り込みます。そのままおっぱいタイムです。



「メンテちゃん、ミルクはどうしたの」

「……ちゅぱちゅぱ」

「ほらほらミルクはこっちですよ……って全然聞いてないわ。どうしましょ」

「メンテくんそっちじゃないわよー」

「ちょっと胸から離すわね。よいしょ……あれ? メンテちゃんが全然離れないわ」

「レディー私がやるわ。痛いかもしれないけどごめんね、ふんぬ!」

「……キッサさん?」

「す、すごい力でレディーにくっ付いてるわよ。どこにこんな力が……」



 僕のおっぱいタイムの邪魔は許しません。何をされても全力で抵抗するのみです。



「次はパパがやるよ。キッサさんちょっと離れてくれ」

「シェフとタクシーは離れてて」



 二人は状況を察して部屋の外に出ました。おっぱいが見えちゃうのでね。これで力の強い二人は消えました。あとは父をどうにかするだけです!



「いくぞー。ふん!」

「うえええええええええええええええええええええええん!」



 僕は父によって母から剥がされてしまいました。そうはさせまいと父にバシバシバシバシと本気のパンチとかキックをします。赤ちゃんが泣き叫びながら大暴れします。父はたまらず元の位置(レディーのおっぱい)に戻しました。僕のおっぱいタイムの邪魔は許すまじ!!!



「ちょ、痛い痛いって」

「うんぎゃああああああ……ちゅぱちゅぱちゅぱ~」←おっぱいを吸い出すと急に落ち着くメンテ

「「「「「……」」」」」


「ミルクはまだ早かったようね……」

「そうみたいね。メンテちゃんのお口を拭いてないから体がベトベトよ……」

「はっはっは……。ママ、今日は諦めよう。ここまで嫌がるメンテは初めて見たよ」



 ダンディの言葉に皆が頷いた。皆にまだ卒業するのは早かった、もしくはミルクは嫌いと結論づけられたのである。こうしてメンテはおっぱいタイムを死守したのであった。



 ちなみに離乳食は昼と夜の2回になりました。食べた後は必ずおっぱいタイムを楽しみます。メンテは授乳の多い赤ちゃんなのです。



メンテ必殺の猫パンチです。本人はただのパンチだと思ってます。

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