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04話 「名前 その2」

 アニーキーは今年で8歳になる。さすがにこの歳になれば、言葉もだいたい理解出来ている。


 ハンサムとはこの国の言葉でモテる男という意味である。父は世間一般的に優れた容姿をしており、ダンディ=魅力的な男という新しい言葉を作った人物でもある。母も同様にレディー=魅力的な女性として名を馳せている。父にしろ母にしろ有名なのだ。


 父は弟にナンス家の伝統あるかっこいい名前を考えていると言っていたが……、そういう意味だったの? 褒め言葉を名前にするとか伝統のでの字もない。頭の中で何を考えているんだろうか。


 母のテンシは天使のことだろう。例えとして天使のようにかわいいなら多少わかる。小さい弟を見ているとそんな気持ちにはなる。が、天使とは一般的に種族のことだ。一応そういう力を持つ人は存在するが、人に名付ける言葉ではない。


 人間を人間、犬を犬、猫を猫と名付けるのと同じだと母は気づいているのだろうか? いや、あの目はあきらかにおかしい。


 アルティメットとは基準でいう最高より上、究極である。この世界の意味としては単位の一つであり、名前で使うことはまずない。論外である。



 アニーキーは弟に付けられる名前を見た一瞬でこのように気づいたのである。



 タクシーはアニーキーを見て、これで大丈夫ですよと笑みを浮かべている。


 アニーキーがちらりとカフェを見るとタクシーと同じような顔をしていた。そっくりな顔である。それもそのはず、タクシーとカフェは代々ナンス家に仕える使用人の親子なのだ。


 タクシーの娘であるカフェは、今年メイド長になったばかりである。先代のメイド長はタクシーの妻でありカフェの母親であるが腰を痛めて引退し、今ではナンス家の相談役になっていた。そして、この一族は非常に優秀なのだが少しだけポンコツなところがあった。


 アニーキーは思った。いやいやいや、冗談でしょ??? 両親のテンションがおかしいのを見抜いた頼れる使用人だと思ってたよ、さっきまで本当に。


 で、なんで最後の最後でボケたの? どや顔してこっちみないでよ。アルティメットがみんなの総意とかふざけすぎじゃない? 誰の意見なの? 絶対採用しちゃダメだよ!!!


 ダメだこの親子も父さん母さんと同じポンコツだ……。



「いかがでしょうか旦那様、奥様。素晴らしい名前を考えるとこれが一番かと」

「はっはっは、なかなかではないか! 候補としては素晴らしではないか」

「あら~よく考えたものね。短くしたらアルちゃんって呼べるわ」

「あ、あの~、父さん母さんそれだと名前ではなく単位ではないでしょうか? タクシーさん、カフェさんも冗談ですよね?」



 アニーキ―が弟を守るために発言する!!



「アニーキ―様、これは伝統を守っている由緒正しきお名前なのですよ」

「え? どこが??」

「アニーキ―様もアーネ様も”あ”から始まるお名前です。おかしいことは何一つもありません」

「うっ!?」



 カフェがアニーキ―を撃破した。肝心なところでポンコツなのに無駄なところで力を発揮して邪魔をするのだ。



「はっはっは、この3つの中から決めようじゃないか」

「そうね。多数決で決めましょうか? でも私の子供たちは、お母さんの意見を選ぶと思うけわよ」

「アニーキ―様、アーネ様、自分が一番だというものを選べばよいのですよ。私やカフェ使用人代表として、しっかりと見届けさせていただきます」

「アーネね、お兄ちゃんと一緒がいい。お兄ちゃんどれがいいの?」



 ごめんな弟よ、兄ちゃんの力じゃ守れなかったよ……。




「お、お、お、おんぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」




 ◆




 目が覚めたら大変なことになっていた。


 ハンサム? テンシ? アルティメット??


 ふざけすぎてて泣くしかないおんぎゃああああああああああああああ!!


 しゃべりたい、嫌だと伝えたいが泣くしかできずもどかしい。普通の名前をください。使用人達はふざけた名前を付けるし誰もつっこむ人いないじゃないですか! みんな興奮していてマタニティハイなんじゃないかな? これを新生児にどうしろというんですか!!


 泣いている私を母があやす。



「よちよち~。おなかすいたのかしら」



 いえ違います。名前を変えてほしいんです。切実な願いなのです。本当に。



「起きてしまったか。泣き止むまでちょっと中断しよう」



 父親の一言でいったん名前決めが中止になった。このとき一番ほっとしたのはアニーキ―だったのは言うまでもない。


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