34話 「ママ会に参加」
前回までのお話
ミルク? それよりおっぱいだ!
今日は、母とアーネと一緒に町にお出かけです。
「んぐうう!」
「えへへ~」
「フフッ、元気ね」
今ベビーカーの上には僕とアーネがいます。アーネが後ろから僕を抱きかかえているのです。
このベビーカーは、ぶっ壊れ性能を持つオリジナルなので重さ制限なんて関係ありません。そのため4歳になったアーネも普通に乗れるのです。
さすがに兄貴ぐらいの体格になるとサイズ的に無理でしたね。俺も乗りたかったとすごく残念そうな顔をしていたので、僕はおしゃぶりを何度も投げて一緒に遊びました。このおもちゃ(おしゃぶり)で遊ぶの楽しいアピールで、アニーキ―のご機嫌取りしましたよ。
「ママー、このベビーカーすごいよ。浮いてるのにすごく動くのー!」
「だあぶぅ!」
アーネは、浮いているのに地面をゴロゴロしたような振動があってすごいと言っています。
僕は何度も体験しているのでわかります。普通のベビーカーだと振動がすごくて乗り心地が悪かったりします。でもこのオリジナルの振動は違います。眠くなるような心地の良い揺れなのです。
「そろそろ到着するわよ」
「はーい!」
「えぐう!」
到着した場所は見覚えがありました。
「今日はママのお友達に会いに来たのよ。ママ友のお茶会よ」
きっとママ会だかママ友会みたいなものでしょう。
ここは町長さんの屋敷です。さあ、媚びる時間ですね!
◆
「こんにちは~。チクバちゃん、エンミちゃんお待たせ」
「レディー待ってたわ。アーネちゃんとメンテくん久しぶりね! こんにちは」
「チクバさんこんにちはー」
「うっぐー!」
これはチクバさんです。忘れているかもしれませんが町長の奥さんですよ。そして、もう一人の方は初めて見ます。
「はじめましてかな。アーネちゃん、メンテくん。私はエンミ・ミカクっていうの。エンミでもエンミおばさんでいいわ。これからよろしくね」
「はじめまして、アーネです。よろしくお願いします」
「あぶう!」
この人はエンミ・ミカクさんですね。母とは違う意味ですごく美人です。クール系といえばいいのでしょうか。大人のお姉さん的な感じです。優しくしてほしいから媚びましょう!
目をキラキラに輝かせてエンミさんを見つめます。首を少し傾けて母性本能をくすぶるように小さな声で一言。
「んぐぅ~?」お目目キラキラ~ン!
エンミさんの顔が少し赤くなりました。
「この子すごくかわいい、ちょっと欲しいかも」
よし、作戦成功ですよ!
僕の屋敷に住んでいる方々にもこれが効果抜群なのです。いや~、練習しておいて良かったですね。
エンミさんは僕の顔に手を近づけます。そして、優しく撫でてくれました。
「きゃきゃ!」
僕はすっごい笑顔ではっしゃぎます。それはもう最高に。これが赤ちゃんの僕にできる必殺技です!
「フフッ、私のメンテちゃんは天使みたいでしょ」
「男の子も悪くないわね……」
どうやらエンミさんも僕の魅力に取り憑かれたようですね。もうメロメロです。
挨拶はこれぐらいでいいでしょうね。お茶会のスタートです!
◆
部屋に入るとベビーカーが二つありました。
「今二人ともお昼寝しているのよ」
「へえー」
アーネが、部屋にあったベビーカーに近づいていきます。
「メンテと同じぐらいだー。この子の名前は?」
「この子はアマイ・ミカクよ。私の娘なの。これから仲良くしてね」
「いいよー。わたしアーネ。アマイちゃんよろしくね」
アーネはピュアですからね。見ていて心が安らぎます。
「こっちはナジミちゃんだよねー?」
「そうよ、アーネちゃん覚えていてくれたのね」
「えへへ、だってわたしはお姉ちゃんだもん!」
「もー、可愛い子ね。これからもナジミと仲良くしてね」
「いいよー」
本当にいい子ですなあ。
「このベビーカー、うちの店のと一緒~?」
「アーネちゃんよく分かったわね。あなたのママがプレゼントしてくれたの」
「私達もレディーさんに貰ったの。色も好きなものでいいって選べて嬉しかったわ」
アーネの疑問にチクバさんとエンミさんが答えてくれました。まあ浮いているベビーカーなんてあまり見ないよね。確か数日前に発売したはずです。カラーも豊富なのは知ってます。
「発売前に試して貰ったお礼よ。これが思った以上に好評でね」
母は語ります。小さな子どもがいる知り合いに試作品のテストをして貰ったそうです。その様子をたまたま見た人が騒ぎを起こし、ナンス家からすごい商品が出ると噂になったという。そのため発売前に予約が殺到したようですね。
迷惑を掛けてしまった家族に、ナンス家は無料でプレゼントしたんだって。ちょっとラッキーだね。
「自分の魔力使わずに浮いている時点で革命よ。それに急に眠たくなってもベッドの代わりになるもの。さすがナンスだわ」
チクバさんがめっちゃ誉めます。なんだか僕も嬉しくなりますね。そういえば父は魔石をどうたら言っていましたが忘れました。これってすごい技術だったんだね。
「でもメンテのベビーカーだけかわいくないよー」
アーネが何やら不満そうです。僕のベビーカーは黒っぽいですね。ナジミは黄色、アマイはピンク色ですから僕のは地味です。きっと女の子ですから色が気になるのでしょう。まあ僕はあまり気にしませんが。
「これはオリジナルだから色は付けてないのよ」
「それがオリジナルなの?」
「へえー」
チクバさんとエンミさんが僕のベビーカーを覗きこんできました。ついでなので首をかしげながら目をキラキラさせますよ!
「……やっぱり男の子もいいわね」
エンミさんは僕にメロメロですね。ちょろいです。
「それにしてもメンテくんってすごいわよね。全然人見知りしない子だね~」
チクバさんの言葉に僕は固まってしまいました。僕は赤ちゃんです。人見知りして当然なのをすっかり忘れていました。
完全にやってしまったと思いました。僕がの心が赤ちゃんじゃないのがバレてしまいます。
こ、こうなったらやるしかない!!!
「はぁ~ぐぅ」
まずは大きなあくびをします。僕は眠いよアピールをします。そして、次は母を呼びます。大きな声でね。
「うえええええええええん!!!!」
母がやってきて抱っこをしました。胸に飛び込み、そのまま顔をこすり付けます。匂いもくんくんします。これはおまけです。
ほら、泣きの演技は完璧だと思いませんか? あとはこの場にいる母親達に通じるかですね。
「よしよし、眠くなってきたのかな。このまま寝てもいいのよ~」
「うぐうううう!」
「ええっと、私のせい?」
「人見知りの泣き方ではないような気がしたわ。きっと眠いのね」
チクバさんが戸惑い、エンミさんは騙されました。
「フフッ、メンテちゃんは眠くなると泣いちゃうことがあるの。それに人見知りはないと思うわ。お家にいっぱい人がいるから慣れているのよ」
母が僕の言いたいことを伝えてくれました。ふう、これで一件落着ってやつです。僕の赤ちゃんっぽさをアピールで出来ました。
人見知りの件はこれで大丈夫でしょう!
その後、抱っこされたまま机の方に移動しました。机の上にはおやつが並べられました。母親たちやアーネは、お菓子を食べていますね。僕は眠い演技中なので話だけ聞いています。世間話とか子どもの話が多いですね。暇なので心のメモ帳にでも書いておきましょう。
眠い演技をしていたら本当に眠くなってきました。
次会うときはナジミとアマイが起きているといいですねえ。赤ちゃんってこんなだよという参考にしたいものです。僕の演技も上達するでしょう。
それではお休みなさい~。
メンテ心のメモ帳
【エンミ・ミカク】
レディーのママ友、クールビューティー、僕にメロメロ?
【アマイ・ミカク】
エンミの娘
今後アマイと仲良くなって赤ちゃんの演技を盗んじゃおう!
アマミだとナジミと似ているのでアマイです。