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240話 「黒蝶は宇宙を舞う その2」

 ……あれ? なんか急に話が飛んだような??


 まあ気のせいでしょう。


 それより僕の目の前にある謎のモヤモヤ。急におとなしくなりました。


 よーく見ると何か見覚えがあるような形をしているんだよなあ……。


 あ! あれだあれ。僕が空間を壊してるとき勝手に出来るヒビ割れ。なんとなく似てない?




「え? 次から出し入れ自由にしていいの?」




 急にこいつ何言ってるんだと思う方がいるかもしれませんので一応弁明しますね。何らかの力を使ってモヤモヤが僕に必死に訴えてきたんです。言葉じゃないしジェスチャーでもテレパシーでもない。なのに不思議と理解出来ちゃったから返事をしたのです。


 決して独り言をする変な猫じゃないですよ。


 ん? 別に声を出さなくても会話が出来るって?


 それなら心で話を続けましょう。


 君生き物なの? へえ、違うんだ。


 そもそも自分が何かすら分かっていないのか。僕が確かめてあげようか?


 でも変なことしたら……そのときは分かってるよね? 具体的には命だよ。


 うんうん。さっそく遊ばせてもらうよ。




 とまあこんな感じでモヤモヤと交渉が成立? しました。


 さっきの吸い込むやつは敵意からの行動ではない。ただそういう現象が起こっただけなので許してほしいってさ。


 まあ僕も何が何やら状況が分かっていなので一応納得したフリをしておこう。賢い猫アピールである。



「わんもあ」



 もう一度しっぽを伸ばして実験再開だ!


 謎のモヤモヤに触れるとしっぽが消えました。一旦引っこ抜くと消えた部分が普通にあります。途切れていません。


 お? これはあれかな。あのモヤモヤの中に何らかの広い空間があるってことかもしれない。


 何度かしっぽを出し入れしたけど問題なさそうだね。モヤモヤが約束を守ってくれて一安心です。



「安全なのかな? なら……」



 しっぽに魔力を込めます。


 んぐぐぐっ。


 うん、しっかり意識をすれば感覚はあるみたい。


 さっきは捨て駒みたいにしっぽを使っていましたが、今度は神経がしっかり通っているイメージのしっぽに変更してみます。


 すると謎の空間に入っていてもしっぽの先端まであると認識出来るようになりました。


 もしかしてこのモヤモヤあれじゃない? 空間と空間を繋げて遠くまで移動出来るやつの出入口。ファンタジーであるあるなやつ。


 それなら僕のしっぽの先端はどこか違う場所に出ているのかもしれないぞ。



「面白くなってきた……!」



 よし、しっぽの先端に目を付けよう!


 魔力で出来たしっぽをいじる僕。しっぽの先端に目玉を付けました。


 どこだどこだ~?



「何も見えない……」



 真っ暗で手掛かりゼロ!


 僕って暗くても普通に見える体質なんだよね。それなのに見えない場所ってどこさ?



「あ、そうだ!」



 目玉だけじゃ分かりません。それならしっぽの先端に猫の身体を全部作っちゃいましょう。


 昔ね、毛を飛ばしてくる犬と戦ったときに一度だけやったことあるんだ。あのときは囮として使いました。今回は僕の分身というかアバター感覚で作ってみよう。



 ……よしよし、上手にいったぞー!



 イメージしたのはゲームで使われる有線コントローラー。しっぽが有線みたいな役割になっています。無線だと繋がらないから有線で直接繋いで分身を操作しちゃえばいいかなって。


 これで僕が謎のモヤモヤに入らずとも向こうの世界を探索出来ます!


 いやあ工夫すれば何でも出来るね。しっぽが切れたらコントロール出来なくなるのが欠点だけど。



「どこに繋がっているんだろ。え? あぶなっ」



 魔法で出来たしっぽ先端の分身は、猫の身体機能をそのまま完全再現しています。なのでモヤモヤの中に入った分身は、あちらの世界で本体と全く同じ行動をとるのです。


 つまり無意識に呼吸するんだ。


 それが出来ませんでした。ということは向こうの世界に空気がありません。もし何も知らずに飲み込まれていたら息が出来ずに死んでいた可能性が高いということ。


 このモヤモヤ危険だったようだ。さっき言ったよね? 次ふざけたら死刑だよ。まったくもー。


 でもしっぽの分身は、魔法で出来た魔力のかたまり。息が出来なくても死ぬことはありませんのでご安心を。モヤモヤくんは反省しようね。



 今度は分身の足を動かしてみます。


 バタバタさせたけど何にもぶつかりません。地面がどこにあるのか見えないし触れないのか。今の分身は右に向いてるつもりが下を向いてたとかそんなレベルで操作不能すよ。


 あと水辺は違うはず。水中にいるときのあの独特の抵抗力を全く感じないからさ。


 手掛かりがなさすぎてどこに繋がっているのか推測すら出来ないや。困ったもんだねえ。これ以上僕にどうしろと言うんだい?



 ん? 頭の片隅に何かが引っかかっている。空気がなくて上下左右不明で真っ暗な場所?




 ……宇宙じゃね??




 いやいや、まさかとは思うけど可能性あるぞ。


 これ前世の知識がなかったら思いつかなかっただろうなあ。


 もし仮に宇宙だとしてもだよ? なんでこの謎のモヤモヤと繋がってるのだろう。ここ地上だよ?



「まあいいか」



 いろいろ考えたけど僕は赤ちゃん。細かいこと気にせず楽しんじゃおっと。


 むしろこれはラッキーだと思うんだ。


 宇宙に出ずに宇宙の実験が出来るなんて一生に一度きりのチャンスじゃない?

 


 ぐへへ、何して遊んじゃおうかな。じゅるり。



 ……おや? 謎のモヤモヤが消えそうな気配がする。今回たまたまここに現れただけで二度と会えるかは分からない? それは急すぎるって。まだ遊び足りないよ。



 実験は次で最後だろうなあ。僕は何をするのか即行で決断する。



 よし、地上では絶対にやれないことをやろう!



 試しに思いっきり力を解き放ってみてるか。宇宙なら広いし誰にも被害出ないよね? やりたい放題出来るなんて最高じゃないか。




「にゃーははは!」




 しっぽにありったけの魔力を込めちゃえ。


 どうせなら分身の猫を超絶パワーアップさせてやるー!


 今までライオンとかトラをイメージしたことはあるけど、宇宙をイメージしてみよう。


 楽しくなってきたー!



 飛翔せよ、宇宙猫!!



 邪魔者は全て消し去るがよい。



 ひゃっはぁああああああああー!!




 あ、謎のモヤモヤが閉じちゃった。完全に消滅したみたい。残念。


 宇宙猫もどこか飛んでっちゃったよ。せっかく暗い原因を吹き飛ばして光ってるもの見つけたところだったのになあ……。


 まあ魔法をぶっ放してスッキリいい気分なので許します。


 たくさん魔力を使っちゃったけど家に帰る分はちゃんと残してあるのでご安心下さい。




 ふう、今日もたくさんの面白いことに出会えました。これだから猫の夜遊びはやめられないね!


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