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229話 「ぱいすとーりー6 あふたー」

 これはイヤイヤ期記念の祝賀会の後のお話。お腹いっぱいになったアニーキーとアーネは話をしていた。



「いやー。びっくりしたね。急にカフェさんが迎えに来たから」

「今日みんなと遊んでて良かったよねー」

「そうだね」



 アニーキーとアーネが話しているのは”、神の一撃”が放たれる前の話だ。たまたま教会に行っており、仲の良い友達と外で遊んでいた二人は騒動から逃れられたのだ。ついでにカフェも二人を呼びに行っていたので運よく助かったのだとか。


 今回はこの三人だけが得をしたという。アニーキーが巻き込まれないなんて珍しい。



「でも食事おいしかったよー」

「普段より豪華だったね。それよりイヤイヤ期記念ってなんだよ。嬉しいことなの?」

「知らなーい」



 いつもメンテに巻き込まれ哀れな被害者となる兄弟。今回はただただラッキーであった。



「まああれだよ。母さんが悪いよね」

「ねー」

「みんなを監視しておっぱい止めろって言わせようとしたんでしょ? そりゃあみんなやる気なくなるし、メンテだって怒るに決まってるじゃん」

「メンテってママいないとすごいもんねー」

「本当そうだよ。母さんがいるときといないときの差が激しいんだよ。あの暴れっぷりを母さんは知らないから頭の悪い命令をするんだよ」

「言っても信じて貰えないよねー」

「本当それ。なんだかんだで母さんはメンテに甘いからね」



 この兄弟はメンテの生態をよく分かっている。母親がいなくなった途端にとんでもない邪悪なモンスターになることを。


 母親が近くにいると常に可愛い。泣いて暴れていても普通の赤ちゃん。だが、母親がいないと分かると裏の顔が出て来る。誰も手に負えない悪魔。メンテはとんでもない猫かぶりなのだ。



「まあ父さんも聞いた限りあれだけど」

「パパってアホなのー?」

「母さんがやれやれ言うから焦ったんじゃない? でも酷い言い訳で俺も笑っちゃったよ」

「パパやばいよねー」



 神の一撃をくらったダンディが正気を取り戻したのは、騒動が終わってからである。冷静に考えて自分は混乱していた、メンテが可愛すぎるからいけないんだと謝ったという。


 アニーキーが言う酷い言い訳はメンテが可愛すぎるという部分。当然ながら甘やかすなと怒られたという。



「そのうち終わるのに母さんが刺激するからいつまで経ってもメンテはおっぱい止めないんだよ」

「ママもメンテもおっぱいおっぱいうるさいよねー」

「本当迷惑だよ」



「ちょっと。さっきっから聞こえているわよ」



「お兄ちゃん、ママいるよー」

「えー。じゃあ今の話全部なかったことにしよう。聞こえるとうるさそうだし」

「わかったー」



「それも全部聞こえているわよ」



 子供達の会話に入って来たのはレディー。二人の母親である。メンテを抱っこしながら近づいて来た。


 聞き耳を立てたとかそういうわけではなく、子供の声は大きいので普通に聞こえていただけという。



「あれ? メンテ寝てるのー」

「うわ、危なっ。メンテに聞かれるところだったよ」

「ママはあなたたちの悪口ずっと聞こえていたからね?」



 誰も聞いてないだろうと子供達は言いたい放題であった。ナンス家は貴族でも王族でもない。ただの魔道具屋の子供だから生意気なところがあっても仕方がない。一般人だもの。これが普通だよ。


 そんなわけで子供たちの多少の暴言なら許す。器の広いレディーであった。



「そういえばママ知ってるー? メンテってね、寝てるときも面白いんだよー」

「そうなの? それは知らないわね」

「ママ、メンテ抱っこしながら座ってー。見てて見てて!」



 メンテに近づくアーネ。そして、寝ているメンテに向かって話しかけた。



「メンテ、一番好きな人は誰?」

「……まんま」


「ママとパパだとどっちが好きー?」

「……まんまちゅぴ~。ぐぅ~」


「おっぱいとママ、どっちが好き?」

「……まんま。ぐぅ~ちゅぴ~」



 寝ているのに返事をしちゃうメンテ。ほぼ本音で返事するようだ。かわいい。



「ね? すごくないー? 最近お昼寝してるときにこれで遊んでるの」

「へえ。寝てるのに言葉に反応するなんて面白いね。俺もやってみていい?」

「いいよー」



 アーネからアニーキーにバトンタッチ。今度はアニーキーがメンテに話しかけた。その様子をレディーは、メンテちゃんは寝ててもチョロすぎるわねと微笑ましく見ていたのだが……。



「メンテ―。おっぱいの時間だよ。母さんいるよ。早くしないと母さん帰っちゃうよ」

「……んぐぅ」ちゅぱちゅぱ

「(……ん?)」←レディー



 口をちゅぱちゅぱするメンテ。



「やっぱおっぱいないって。早くやめたら? みんな嫌がってるよ。俺も嫌だよ」

「……んぐ、んぐぅうううう」

「(……んん?)」←レディー



 突然うなりながら暴れ始めるメンテ。



「メンテ、今の冗談。本当はおっぱいあるよ。良かったね。俺のおかげだよ? 感謝して」

「んぐうううう…………ぐぅ~ちゅぴ~」

「(……アニーキー?!)」←レディー



 多少暴れたが、落ち着いたのかぐっすりと寝始めるメンテ。寝ているのに反応しまくっていた。


 この様子を見ていたレディーは思った。メンテちゃんが怒る原因をアニーキーが作ってるだけなんじゃないかと。やたらとアニーキーに怒ることが多いメンテ。その原因を垣間見たという。


 アニーキーの言葉はド直球すぎてデリカシーなんてものはない。言いたいことは言っちゃうタイプなのだ。



「こら、二人とも。メンテちゃんで遊ぶのやめなさい。起きちゃうでしょ?」

「「えー」」

「夜遅くなる前にあなたたちも早く寝なさい。分かりましたか?」

「「はーい」」



 レディーは子供達から離れ、メンテを寝室に運ぶことにした。これ以上遊ばれたら目を覚ましちゃうわねと思ったからだ。


 ベッドにメンテを下ろした後、レディーはため息をついた。今日は本当疲れたわと。



「まったくもう。アニーキーはああいうところがダメね。子供だからしょうがないかもしれないけどしっかり教えなきゃいけないわ。それにしてもメンテちゃんはいつまで赤ちゃんなの?」

「……ぐぅ~ちゅぴ~」



 寝ている我が子の姿は可愛いく映る物。この顔を見ていると多少の疲れなど吹き飛ぶ。それが親ってものだ。


 ふと先程アーネがやっていた遊びを思い出すレディー。ちょっと私もやってみたいなといたずらごころがわいたという。母親だってそういう気分になるものだ。



「メンテちゃん」

「……ぐぅ~ちゅぴ~」


「メンテちゃん」

「……ぐぅ~ちゅぴ~」


「メンテちゃん(おっぱいないわよ)」

「んぐううううううう」



 急にうなり始めるメンテ。



「メンテちゃん(嘘よ)」

「んぐううう……ぐぅ~ちゅぴ~」



 なぜか落ち着くメンテ。



「メンテちゃんは可愛いわね(今日メンテちゃんはおっぱいを卒業しました)」

「えぐぅ?!」



 ビクッと反応したメンテは目を開けた。寝ながら心の声が聞こえたのだろうか。凄まじい勘の良さである。そして、静かにレディーを見つめ始めた。



「……嘘よ」

「……………………んぐぅ。ぐぅ~」



 何事もなかったかのように寝始めるメンテ。寝ぼけていたのか、それともたまたま目が開いちゃったのか。はたまた安心しての熟睡なのか。よく分からないがゆったりとした寝息が寝室になり始める。これはメンテのいびきだ。


 おねむを通り越したらもう寝るだけ。朝までぐっすりコース。メンテの赤ちゃん感はすごい。



「……この子どうなってるのかしら? ママちょっと心配よ」

「ぐぅ~ちゅぴ~」

「早く卒業しましょうね」

「ぐぅ~ちゅぴ~」

「あら? 聞こえていないのかしら。早く卒業しましょうね。メンテちゃんママの話聞こえてますかー?」

「ぐぅ~ちゅぴ~」



 こんな感じでメンテの知らないところで激しい攻防があったという。


 メンテは可愛い赤ちゃんのままでいて欲しいけどおっぱいは早くやめて欲しいレディー。この悩みが解消される日はいつになるやら。今日も二人の戦いは続く。


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