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219話 「料理を知ろう」

前回までのお話

農業について調べた

 僕メンテ。1歳後半の男の子。最近は大人達について回ってこの世界の情報を集めています。


 今日の午前中は農業について調べました。農業のレベルは似たようなものでしたが、前世と違って魔法や魔道具で問題を解決していました。どっちの方が技術的に進んでいるのか比較しようにもなんとも言えない僕です。


 おかげで頭が良いでしょと知識お披露目することが出来ませんでしたね。知識無双をして褒めて褒めてしてもらう予定がなくなっちゃったよ。


 で、少し考えました。魔法や魔道具を使っても前世とあまり変わらないものは何か。答えはすぐ浮かんだよ。料理だ!


 料理なら火や水の魔法を使ったりしても完成する料理は同じ。もし短期間に熟成させるという魔法があってもそれは調理方法のひとつ。料理の工程が違っても出来上がる料理の結果はあまり変わらないのでは? とね。


 料理に関してなら僕も知識無双が出来るかもしれない。なんだか今日はやれるという自信に満ちあふれているせいでテンションがおかしいのだ。異世界で初めての無双ってやつを見せてやろう。わーははは、リベンジだー!!



「キッチャ。あちっー(キッサ。あっち行こう)」

「ごめんねメンテくん。ちょっとお仕事があるの。他の人が遊んでくれるわよ」

「……ううう。ぉぱぃ(ボソッ」

「――?! そ、その仕事私たちが代わりにやるのでお任せ下さい」←メイドA

「キッサさんはメンテくんのお相手をどうぞ。ほらほら遠慮なさらずに」←メイドB

「メ、メンテくん大丈夫だよ~。今からキッサのおばあちゃんが遊んでくれるって」←メイドC

「ど、どうしたの急に……??」←キッサ



 よく分からないけど僕が噓泣きを始めた途端に周りのメイド達も援護し始めた。対応の早さが素晴らしい。僕の家のメイドは優秀だ。



「(おっぱい卒業を言えない人は邪魔です)」←目で会話するメイド達

「(メンテくんの機嫌悪いのが分かりませんか?)」

「(キッサさん、早くしないとまた暴れ始めますよ)」

「あなたたちねえ……」



 僕の可愛さが伝わったのか午後もキッサさんと一緒に行動することになったよ。



「やちゃい(野菜)」

「やちゃい? ……ああ、やさい。野菜ね」

「んち」←土から引っこ抜くジェスチャー

「ええっと、さっき収穫した野菜のことかしら?」

「あえは?」←キョロキョロ見回す

「さっき収穫した野菜が見たいのね」

「はーい!」

「じゃあ野菜を見に行くわよ」



 言葉が分からなくても体の動きで完璧に伝えられる僕です。


 歩くのに疲れた僕はキッサさんに抱っこを要求しながらお家の厨房に向かった。どうやら僕が畑からいなくなった後、誰かの手で収穫物が家の中まで運ばれていたらしい。外に出て野菜を厨房持って行けという手間が省けたのはラッキーである。


 厨房に入るとシェフがキッサさんに気付いて話しかけて来た。シェフは僕のお家の料理長的なおじさんである。さっそく料理をしているところを見て見よう!



「お、キッサさん。準備出来てますよ」

「あら、じゃあさっそく……メンテくん、一度降ろしてもいい?」

「だんめ(ダメ)」

「一緒にこれやってみる?」

「やう(やる)」

「じゃあ降りなきゃね。抱っこ止めたら一緒に出来るわよ」

「はーい!」



 僕も作業を手伝って良いらしい。見てるだけかと思っていたので意外だ。



「今から漬物を作るわよ。包丁は危ないからシェフが切って頂戴。私がメンテくんを見ているから」

「んぐぅ~?」



 とりあえず何も分かっていない子の可愛いピュアピュアボイスを出す僕。あー、そっちか。料理というか食品を作る手伝いをしているのね。どおりで水で土の汚れを落とした野菜がいっぱいあるわけだ。まあ火は危ないから僕にやらせるわけがないよね。



「それにしてもいっぱい獲れましたね」

「今年は想像以上に順調に育ったのよ。全部食べれないだろうから漬物をいっぱい作るわよ」

「はーい!」

「あら、メンテくんもやる気ね」

「みんなやるわよ」

「「「「おー!」」」」「はーい!!」



 今年は豊作なのでシェフおよび近くの料理人も手伝うことになりました。みんなの会話を聞いていたら普段はキッサさん一人で漬物を作っているらしい。それも趣味で。



「そういえばメンテくんって漬物食べたことあるの?」

「いえ、出したことはないですね。でも薄っすーい味なら食べられるかもしれませんね。大人用のは塩分がきついので食べさせませんが」

「じゃあメンテくん用に何個か作っちゃいましょうか」

「え?! 食べますかね」

「たべう」←メンテ

「ほら、食べるっていてるわよ」

「……食べたいのか。メンテの坊ちゃんは何でもがっつくな」

「はーい!」

「出来たら食べましょうね」

「今日中には出来ますよ。期待していてください」



 濃い味の料理は食べさせてくれないんだよね。夕飯の楽しみが増えたよ。



「メンテくん、まずはこのキュウリをここに置きましょう。では塩をかけて下さい」

「はーい!」



 野菜はシェフおよび料理人達が皮をむいたり切ったものを使います。僕はキッサさんの指示通りに動けばお手伝い出来るってわけですよ。



「塩をかけれたね。偉い偉い。次はキュウリをゴロゴロさせてね」

「はーい!」ズシンスジン!

「ストッープ?!」

「えぐ~?」

「叩かないでこうやってこうするの。優しくゴロゴロよ。出来るかな?」

「はーい!」ゴロゴロ

「そうそう、その調子よ。次はこのツボの中に野菜を入れていってね」

「はーい!」ポイ。ポト

「メンテくん、中に入ってないわよ。拾いましょうか」

「えぐぅ~?」



 この世界にはプラスチック製の袋や容器はないようです。なので前世の日本では昔ながらの道具を使っていきます。



「最後はこうやって水を入れます。塩漬けの完成よ」

「きゃきゃー!」



 キッサさんが魔法を使って水をツボの中に入れて強引に完成させます。そのままツボを浮かせて誰かにパス。力持ちの誰かが保存場所に置くという流れ作業をやっていきます。



「次は白菜ね。これは天日干ししたものよ。白菜は水分が多いから……」



 と長々に説明していくキッサさん。白菜を塩漬けにしたら落しぶたをして重しの石を魔法で浮かせてドーンと載せます。1日経ったら重し取って水気を抜いてまた塩漬け。そのとき白菜と一緒に唐辛子や昆布を入れてから重しをして数日後に完成らしい。とうがらしとこんぶ。この世界にもあったんだねえ。


 こんな風にテキパキと漬物を作っていきました。量が多いので結構時間掛かったけど魔法のおかげで後片付けは早かった。でもそろそろ日が暮れそうだ。


 残った野菜は腐る前にみんなで食べちゃうらしい。というわけで今日のメニューはシンプルに野菜炒めに決定したみたい。



「だっこ(抱っこ)」

「しょうがないねえ」



 普段見れない料理している姿を間近で見たい僕。キッサさんが抱っこしている間は厨房に入れるので利用しちゃいます。


 この厨房は魔道具で出来ています。ほぼ前世と同じことが出来ると思ってください。ちなみに店でお値段を見たらうん百万のものだらけですよ。最新のキッチンをふんだんに使えるのは魔道具を売っている側の特権です。この家に生まれてきて良かったなあと思うよ本当。



「味付けはどうしようか……」

「まんだ?(まだ?)」

「まだアイディアが浮かんでないんだろうね。もうちょっとしたら料理しているところが見れるよ」



 シェフはうんうん言っていて料理をする様子ではなかった。僕は知っている。この家の料理はレベルが高い。焼く、煮る、茹でる、揚げる、炒める、蒸すなどなど。前世と同じぐらい調理法を多用している。初めての方法を探すのが難しいぐらい料理に熱心なのだ。だが考え気味のシェフの顔を見たとき僕は思った。




 ピキーン! 今が僕の知識を生かせるところだあああ!!




「ちお(塩)」

「塩味ねえ。まあ普通だなあ」



 こっちを見てないけど僕の声に反応するシェフ。ここだ、ここしかない!!



「こちょう(胡椒)」

「塩胡椒は定番だからな。別の物がいいかもと思ってるんだが」



 まあ想定通りの答えです。でも本番は次から。僕の直観では最大のチャンスが訪れたといっている。知識無双スタートだ!



「ちょーゆ(醤油)」

「まあ醤油は使うよなあ」



 え、この世界に醤油あるの?! なら別の調味料を。



「みちょ(味噌)」

「ああ、甘辛いのもありだな」



 ん? 異世界に醤油や味噌がないのは定番だよね? この世界では違うのか??



「ごみゃあぶら(ごま油)」

「あの匂いはたまらんなあ」



 あれ~、普通に使われているぞ?!



「かえー(カレー)」

「カレー風味も人気あるんだよなあ」



 なにいい、お馴染みの味だと?!



「とりぎゃらちゅーっぷのもと(鶏ガラスープの素)」

「そういえば昨日仕入れたな」



 ぜ、絶対ないと思ったけど同じ名前のものがあるだと……?!



「おいちゅたーちょーちゅ(オイスターソース)」

「ソースは好き好みがあるな。ウスターソースがいいとかいうが野菜炒めならオイスター派だ」



 違うソースの名前まで先に言われた?!



「ちゃけ(酒)、みいん(みりん)、ぽんじゅ(ポン酢)、めんちゅう(めんつゆ)、にんにきゅ(にんにく)、ねぎ……」



 僕が言ったものは全部知っているぞ的な返事をするシェフ。調味料以外のアイディアも出したが普通に返事されて困った。もう味付けなんでもいいんじゃないの??



「ドラゴンの爪もいいか」

「どだごん?」



 んん~? 僕の知らないものが出て来たぞ。



「メティルノーワやタケンジェルを合わせてもいいなあ」

「??」



 なんじゃそれー?? もはやシェフについていけなくなる僕です。


 あれれ、この世界って思った以上に料理が発展しまくってるぞ~。あはははは~、僕の知識なんて不要じゃないか?? 知らない言葉が出て来た瞬間に心がポキっと折れたよ。


 その後もブツブツとしゃべるシェフ。全然味付けが決まらないようだった。知識量が違い過ぎる。そのせいか作業が遅い。敗北感を味わう僕にキッサが話しかけて来た。



「メンテくん。いっぱい言葉知ってるんだねえ」

「……えぐ~?」←焦るメンテ

「どこで覚えたんだい?」

「……ちぇぷ(シェフ)」

「本当に?」

「えぐ」



 全てシェフから聞いたことにした。これだけ独り言をしゃべっているから僕は勝手に覚えちゃったという設定で。疑われることはないであろう。


 その後、いつまで経っても料理をしなさそうなのでキッサさんと家庭菜園をもう一度見回った。朝とは違う作業があるらしい。それと夕食に出た漬物はとでもおいしかったです。





 以上、異世界で知識無双しようと思ったら逆に無双されたでござるってお話でした。次は料理以外のことを調べよっと。


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