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206話 「職場体験 その2」

 学生さんと僕は店の中を案内されています。騒がしいですが大目に見てね。



「ここがこの店の工房のひとつ、魔道具作りをする部屋になります。一人ひとり作業がし易いように部屋を分けています」

「おー、すげー!」

「広~い」

「あそこで何してるんだろう」

「ソノヒトさん、近づいて見てもいいですか!!」

「どうぞ。ただし邪魔だけはしないように」

「「「「「ざわざわ」」」」」



 僕もだいたい行ったことかあるので店の工房について説明しますね。おおまかに個人個人で何かを作る部屋、大量生産するために人がいっぱいな部屋と2種類あります。人がいっぱいな方で学生さんは仕事体験をするんだって。


 今いるのは個人個人のところです。ひとりで自由に使ってるのは職人として一流のあかしです。



「ここでは魔道具の品質の確認をしています。合格の出た魔道具は包装をして店に並べたり、各地へ出荷されます。今回の職場体験ではやりませんが、魔道具を作る・売る以外にも他の支店やお客様のもとまで運ぶという仕事もあります。世界を見回りたい、旅をしたいという方には向いているでしょう」

「馬車は苦手だからずっと魔道具作っていたいなあ」

「移動時間が長いと退屈だから私に向いてなさそうかな。あ、あれ見たことあるやつだ!」

「いっぱいあるね」

「うわ、あそこのやつ割れそう。あれの確認はしたくないぜ……」

「壊したら弁償しなくちゃと思うと怖いよね」

「包装も大事な仕事なんだなあ」

「「「「「ざわざわ」」」」」



 僕がここに来ると触っちゃダメとよく言われる部屋です。大人しく見学しましょう。



「ここより先は魔道具の新商品の開発をしている部屋です。このドアより先は関係者以外立ち入り禁止となります」

「少し見るのは……?」

「ダメです」

「ちょっとだけでも?」

「ダメです」



 ここより先は父の工房があります。ここのドアを開けると廊下があるだけなので、実はちょっとだけ見るなら大丈夫だったります。



「はいはい! ここで武器を作っているという噂は本当なのでしょうか?」



 学生の一人が質問すると、みんな興味深そうな顔でソノヒトさんを見ます。ついでの僕一緒にソノヒトさんを見ます。お目目キラキラ~。



「みなさん、どこで聞いたのかは分かりませんが根も葉もない噂なので忘れてください。ここでは主に日常生活に役に立つ魔道具を作って販売しています。最近ではいろいろなジャンルに挑戦しているので勘違いする人が多いのでしょう」

「そうなんだ」

「確かに実際に見るのと聞くのだと印象違うよね」

「「「「「ざわざわ」」」」」



 悪い噂を払拭したいソノヒトさん。よく聞かれるんだよって頭を抱えるような表情をしています。実際父はそんな魔道具を作っていません。世界を平和にするおもちゃの開発をしています。


 学生さんが噂は嘘だったと納得しそうなときに限って、我が家の執事ことタクシーさんがやって来ました。ある意味神がかった完璧なタイミング。嫌な予感がします。



「ほほっ、今回は良い目をした若者が多いですな。おや? メンテ様もご一緒ですか。楽しそうで何より。ソノヒト、あとは任せます。では失礼しますぞ」



 おや、普通の対応でしたね。僕の勘も間違えることはあるさ。


 タクシーが立ち入り禁止のドアを開けて中に入ったとき、父の声が聞こえて来ました。というかだんだんこっちに近づいているのか声が大きくなっていきますね。


 ……あれれ?? ドアが少し開いているぞ~。声が丸聞こえじゃないですか。



「はっはっは! 出来たぞー!! うおおおお!!!」

「ほほっ、今戻りましたぞ」

「おお、タクシー。丁度いいところに。もう終わったのか?」

「ゴミは掃除しておきました。学生を狙った誘拐を企てていましたな。学生の中にメンテ様もいたことですし皆殺しにして正解ですな。馬鹿な依頼主も明日までには片付くことでしょう」

「あー、少し遅かったか。実はこれを試して欲しかったんだが」

「おや、もう完成なされたですか?」

「そうだ。ついに威力は十分だった破壊魔法を広範囲に拡散する兵器が完成したんだ!」

「素晴らしい! これで何だろうと消し炭ですな!!」

「おもちゃは勝手にやって来るからな。魔物でも戦争でもいいから何か起きれば実験し放題だ。早く試し打ちしたいものだな」

「それは楽しみですな」

「はっはっはっはっは!!!!」「ほほほほほっ!!!!」



 ガチャン。ドアは静かに閉まりました。どうやらこのドアは建付けが悪いみたいですね。



「「「「「……」」」」」←学生

「……」←メンテ

「……多少の武力、身も守るぐらいなら魔道具で解決出来ます。では皆さんの働く場所を案内しますのでついて来て下さい」



 何とも言えない沈黙が流れました。学生さんはソノヒトさんを見ますが誰とも目を合わせす移動しまていきます。この原因は僕のせいじゃないです。知らんぷりしとこうっと。



 ◆



「ここか」

「うわー。何もないね」

「でも広いな」



 人数の割に少し大きめの部屋に案内される学生さん。この部屋を自由に使ってくれ、荷物はあっちとか話をしていくソノヒトさん。



「最後にみなさんに課題をあたえます」

「課題?」

「何それ」

「聞いてないよな?」

「「「「「ざわざわ」」」」」



 戸惑う学生さん。僕も課題は何か知らないのです。



「今日を含めて平日の5日間、仕事の手伝いだけでなくある物を作って頂きます。というのも土日にはイベントがあり、普段よりも多くのお客様がお見えになります。そこで必要になるものです。それをみなさんの力だけで作ることが課題です」

「イベント?」

「みんな知ってた?」

「いや、初めて聞いた」

「えぐぅ~?」



 僕も初めて聞いた感を出しつつソノヒトさんの話を聞きます。



「まずは1つ目の課題は、手のひらサイズの小さな物。最低でも同じ物を20個は作るように。2つ目の課題は、自分の力で作った魔道具を用意すること。みなさんが持参した物でも今から作る物、どちらでも構いません。こちらは個数やサイズの指定はありません」



 以上、では質問がある人はどうぞと学生さんの質問タイムが始まりました。



「手のひらサイズの物とは具体的に何を作ればよいのでしょうか?」

「そこを話していませんでしたね。小さな物はイベント期間中にやって来るお客様に配布されます。こちらからの指定は特にありません。自分で考えて作るように」


「小さい魔道具を作れってことですか? まだそんな難しいことは出来ないのですが……」

「魔道具の有無は問いません。私から出せるヒントとしはお客様に喜ばれるような物が良いでしょう。ただで配っても要らないと思われたのならそれに価値はありません。この意味は当日になれば分かるでしょう」


「どこで作業をすればよいのですか?」

「この部屋です。材料に関してですが、後で全員に同じ金額のお金を渡します。必要な物は町で探しましょう。予算内に抑える、これも仕事の一環です。またこちらで用意した木材もあります。こちらは全て無料ですので自由に使ってください」


「もし20個作れなかった場合は?」

「この中でひとりだけ20個作れなかった場合、一番目立つのは誰でしょうか? そのことをよく理解出来るのなら自ずと答えが分かるはずです」



 このように1つ目の課題、小さな物については色々と質問がありました。僕が思うに20個作れなかった場合は仕事が遅い、約束を守れねえのかと信頼の問題に繋がると思うんだけどね。学生さんはそこを理解しているのかな?



「2つ目の持参した、または作った魔道具は何に使うのでしょうか?」

「土日の2日間だけ特別販売します。値段も各自で考えて付けましょう。店内で一番目立つ場所に置く予定です。自分の魔道具の価値を正しく理解しているのかが問われますね」


「魔道具を用意出来なかった場合はどうなりますか?」

「こちらの課題は自由参加となります。1つ目の課題で時間的に厳しい方は無理に用意をする必要はございません」

「では何のためにこの課題を?」

「こちらの課題は、自分で作った魔道具がどのように売れるのか。お客様の反応を実際に見て聞くことにあります。イベント期間なのでたくさんの人が目にするので貴重な体験となるでしょう」



 2つ目の課題はストレートにものを売ることにあるようです。店を持っていない人にはぜひともチャレンジしたい内容だね。



「あくまで1番大事なのか1つ目の課題です。忘れずに。では今日の予定の話をしましょう。今から作業着に着替えてお昼までは魔道具作りの仕事をします。場所は先程案内しましたね。お昼休憩の後は自由時間となります。魔道具作りの手伝いをしてもよし、店の中を見回ってもよし、課題に備えて町で買い物をするのもよいでしょう。時間を有意義に使いましょう」



 こうして仕事の体験を始めた学生さん。1日目の午前中は何事もなく終わりました。


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