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20話 「異世界の絵本 その2」

 僕はアーネに服を引っ張られて無理やり方向転換させられました。ニーホさんが僕を抱っこしていたので、そのまま一緒にGOです。



「わたしおねーちゃんだからこの絵本読んであげるね! メンテ見ててー」



 僕はアーネの方を向きながらニーホさんの膝の上に座っています。本当はニーホさんのほうに顔を向きたいのですが、今日は我慢します。他のメイドさんたちも絵本が見える位置にスタンバイです。姉の頑張りを見ましょう!



「むかし あるところに とても大きな村がありました。その村は 人がたくさんいて とてもにぎやかな場所でした。ある日 村の近くに とてもとても大きな くまおーがあらわれました。人々は とても大きなくまおーに おどろいて 村から逃げていきました」



 くまおー? 熊男かな??



「くまおーは 村を」

「待って待ってアーネちゃん、ページ飛んでるから戻ろうか」

「あ、ほんとーだ」



 アーネはまだ4歳ですからね。いきなり最後のページまで飛ばしてもおかしくはありません。



「ここからですよー」

「モドコありがとー。えっと村に残った 男の子と いもーとの女の子は その大きなくまおーが 本当に 存在することが 信じられませんでした。男の子は 村人たちが うそをついて 出て行ったのだと 妹に言いました。どお? できてる?」

「アーネちゃん上手だよ。ほらメンテくんも見てるしー」

「えぐぅ」

「えへへ~」



 僕はアーネにうまく読めてるねと誉めましたよ。このお話は思ったよりも普通そうです。



「次いくねー。ある日の夜 男の子は くまおーに会いにいくことにしました。女の子は 会いたくないと 反対でしたが ひとりはいやだと いっしょに行くことになりました。村の近くに 大きな山がありました。 くまおーは その大きな山にいるらしいです。二人は くらーい夜道を 歩いて行きました。すると 目の前にくまおーが あらわれました」



 ペラッっとページをめくります。



「突然あらわれたくまおーに 二人はおどろきました。しかし くまおーは 二人に気づいていません。二人はすぐに村に帰り くまおーが出たと 村の人たちに伝えました。次の日 村の人たちは くまおーを退治しに 森に入っていきました。その日の夜 くまおーは 退治され 村は平和になりました。しかし、二人は くまおーが 退治されたとは 思いませんでした」



 ふむ、長いです。それともうひとつ問題が。



「んぐううううう」

「きゃ、メンテくんどうしたの?」



 寝返りの要領で暴れます。今までは僕の頭にニーホさんの胸が少し当たっているだけでした。しかし、彼女の胸は小さいというかほぼないのです。僕はもっと大きいおっぱいの方が嬉しいのです!



「ぐう~!!」

「ちょっとお尻がつらかったのかな」

「そうですねえ、順番にメンテくんをに抱っこしましょうか。今日はたくさん人がいますので甘えたいのかもしれません」



 お、さすがカフェさんですね。僕の気持ちをしっかりわかっているようです!!!



「もー、メンテきいてよー」

「アーネちゃん、一回休憩しよーよ」

「まだ終わってないの!!」

「でも一回メンテくん見て見て」


「えぐうううううううう!!(おっぱいいいいいいいい!!)」


「ほら、暴れているでしょ? きっと疲れてると思うの」

「……うん、そうだね」

「メンテくんの機嫌が良くなったらまた読もう? 私も手伝うからさ」

「わかった、そうする!」



 ひどい理由で赤ちゃんは暴れ叫んでいましたとさ。



 ◆



 今の僕の顔は胸と胸に挟まれた素晴らしい状態になりました。胸と表現していますが簡単に言えばおっぱいです。パフパフとか呼ばれるあれです!



「ぐふふぅ~(ゲヘヘ~)」



 新人メイドさんが順番に僕を抱っこしてくれました。恒例のおっぱいダイブからのクンクン匂いを嗅ぎ、ほっぺをスリスリして楽しみます。無意識に服の上からちゅぱちゅぱしていたような気がしますが、それはきっと気のせいでしょう。しばらくしたら落ち着きました。



「アーネちゃん、これすごいね」

「わんちゃんだよー」

「ぶふぅー?!」



 黄色い犬が本から飛び出しています。立体映像のようなあれはまるでホログラムのようです。彼女たちが見ているのは図鑑でしょうか。ここは異世界です、本に魔道具が付いていても何もおかしくはありませんね。魔法を使ったところは本当に発展しています。


 正直絵本よりそっちのほうが見たいです。よし、アーネに伝えよう!!



「えぐうううううううう!」

「もう終わった? 絵本よんでいいー?」

「だぶううう」

「いいの? じゃあさっきの続きからね」

「ぶう……」



 僕の気持ちは全く伝わりませんでした。機嫌がよくなったベイビィとしか思われていませんでした。


 僕なりに絵本のお話をまとめるとこうですね。でかい熊が村の近くにあらわれてパニックに。二人の子供が見に行ったら本当に熊がいて退治することになり、無事に退治できた。でも死んでいないと男の子は思っていた。簡単にいうとこんな感じです。


 どうせあの熊が守り神やら復讐に来てとかそんな感じかな。子どもが見るものだし教訓的な話が多いと思いますよ? こんなこと考える赤ちゃんは僕だけでしょう。



「メンテこっち見てってばー」バシバシ

「ぐぅ?!」

「アーネちゃん、本はダメ!!」



 考え事をしていたらアーネに絵本で叩かれてしまいました。子どもって手加減知らないよね。


 アーネがモドコさんに怒られながらも朗読スタートです。モドコさんは、僕の後ろから抱きついています。逃げられないようにしている感じと、子供が大好きな気持ちが伝わってくるね。



「男の子と女の子は パパとママに内緒で 山に くまおーがいないか 確認に行きました。山は 火が放たれたため 焼けています。森の奥へと 二人は 進んでいきます。すると 森の中に ひらけた場所に たどり着きました。そこには 大きな熊が 倒れていました」


 ペラッ。


「男の子は 熊が生きているか 確認をしました。すると くまおーは 生きていました。男の子はとどめを刺そうとしましたが 女の子は 悪いことしてないのにかわいそうと くまおーを助けるとになりました」


 ペラッ。


「それから 二人で くまおーを治療しました。くまおーは 動けるようになると どこかに消えていきました。それからしばらくして 村の近くに たくさんの食べ物が 置かれるようになりました。男の子と女の子は これはくまおーが持ってきた と広めました。すると 大人たちは くまおーにひどいことをしたと 反省しました」



 これは助けるからのお礼という定番の展開ですね。最後がどうなるか楽しみですよ。ペラッ。



「くまおーは 毎日のように 村に食べ物を持ってきました。村の人たちは くまおーに 感謝をささげました。それからしばらくして くまおーが 村にやってきました。くまおーの隣には 小さなコグマが います。村人たちが集まって くまおーに ケガをさせてしまったことを あやまりました」


 ペラッ。


「その日 ひとつの村が 消えてしまいました。くまおーは ただのクマではなく ()()()()だったのです。決して手を出しては いけなかったのです。おしまい」



 パチパチパチ~。



「んぐぅ?(は?)」



 このラスト展開が予想外でした。最後楽しみとか言ってけど、怖すぎてトラウマものですわ。熊が人間を養殖してたって。


 日本の昔話では、昔と今では話が違うことがありましたね。時代と共に内容が変化するとかいうあれです。この異世界では内容も変わらずにずっと続いているのかもね。だってみんな拍手してるし、そういう話だよねみたいな雰囲気だもん。



 みなさんアーネが上手だったと誉めています。僕も笑顔を送りましょう!




「あ、メンテくんがおしっこもらしてます。誰かオムツくださーい」

「えぐぅ……」



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