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197話 「子猫の死闘 その2」

 目の前にいるでっかい魔物は僕を逃がすつもりはないようです。この世界で初めての戦いとなります。よし、猫魔法を使い猫らしい攻撃で倒そう!



「猫の牙!」



 子猫の僕は一応歯が生え揃っています。これ乳歯だと思うんだけどね。それを猫魔法で空中に具現化させて相手に嚙みつかせます。



「がぶり~」

「――グゥ?!」



 魔物はいきなりの魔法攻撃に驚いて目を見開きます。その隙に牙は可愛くグサリっと首元に噛みつけました。にゃんにゃん。そのまま牙は皮膚の下まで貫通すると思いきや、魔物の毛がゾワリと動いて猫の牙を粉砕。岩をも砕くあの牙をこんな簡単に防ぐとは……。



「……」サッ



 魔物はすかさず後ろにバックステップ。僕から距離を取りました。よし、今だ!



「猫の爪!」



 僕はその隙を見逃さず、爪を牙と同じように感じで空中に具現化させます。先程魔物の目を狙った爪は、僕の指先から直接伸ばしての攻撃でした。今回は体から離れた場所に猫魔法で爪を作成し、それを振り回して相手が着地した瞬間の足元を狙って切り裂きます。これぞ牙と爪のコンボ攻撃!


 爪を切れば体から離れます。歯も抜ければ体から離れます。離れても元は猫の体の一部だし具現化ぐらい出来るよね? というなんとも猫っぽい魔法ですよね!



「やー!」ヒュン

「――グォ?!」



 あの魔物は僕から離れれば爪の攻撃は来ないと油断していたみたい。計算通りです。これは決まった! と思ったら魔物は空中で体をひねり、前足を下から上に突き上げます。いわゆるアッパーの要領で僕の爪を一撃で砕きます。


 ええ?! あの魔物の身体能力どうなってるんだよ?!


 そのまま魔物は地面に降りた途端、僕に向かってジャンプしてきました。色々切り替えるのはやっ?!



「うわっ?!」



 魔物は巨大な前足を使って僕ごと地面に押しつぶそうとしてきました。僕は咄嗟に横に避け、すれ違いざまに猫の爪を叩き込みます。しかし、魔物の体に当たった途端に砕け散りました。



「あの毛どうなんてるんだ……?!」



 僕の攻撃が全く通じません。あの毛が当たった瞬間に魔法が役目を終えたかのように粉々になっていくのです。なぜだろと思いつつ、僕は魔物から距離を取ります。


 さらに魔物の攻撃は続きます。僕を潰そうと何度も何度も前足を叩きつけてきます。僕は身体強化して逃げ回ります。



 バキバキバキッ!



 魔物のぶっとい前足は近くにある木をへし折りました。折れた木の傍に立ち止まる僕。折れた木には尖った部分があるから踏めば痛いだろう。そう思ったのですが、魔物は痛みを感じないのか折れた木も僕も全部狙って叩き潰しにきます。僕がその攻撃を避けると、木は完全に地面に埋まっていました。


 木の傍に逃げれば攻撃しづらい、あわよくば反撃もしてやろうと思っていました。でも魔物はそんな事関係なく攻撃してきます。完全に僕の考えが甘かったみたい。さらに魔物は近くの木々を爪でスパスパと切り裂いていきます。まるで豆腐でも切っているかのように。



 シュシュ。


「――うわっ?!」



 魔物は倒れる直前の木に毛を飛ばし、僕に向かって倒れるように角度を調整します。さらに倒れる木を避けようとする僕に向かっても毛を飛ばしてきました。ひええええ、怖いよー。僕が木と毛の攻撃を避けるたびに魔物との距離がどんどん近くなっていきます。



「まずい!? 猫の爪!!」



 このままではまずいと僕も魔法を使って倒れてくる木々を切り裂き、魔物と距離を置きます。ふう、危なかった。あのまま全てを避けていたら僕は死んでいました。あの魔物、雑にただ僕を攻撃しているように見えて計算された場所に誘導していたのです。途中で気付かなかったら今ので終わってたよ。


 ここで魔物の攻撃は一旦止みます。ここで僕に近づかず、魔物はこっちを見ながら何かを考えているようです。


 人間は弱い。そんな人間が生き延びているのは頭が良かったから。つまり賢さが武器になっているのわけです。僕も今の見た目は猫ですが元々人間ですからね。その武器をあの魔物も持っているように見えます。



 これはまずい。ただでさえ身体能力も負けているのに頭脳も高い。僕のアドバンテージが何もないぞ……。



 落ち着け僕。よーく考えろ。なぜ魔物は近づいてこないのか。多分僕と同じことを考えているはず。




 ()()()()()()()()()




 そう、僕とあの魔物は同じ力を持っている。なぜなら魔物の毛から魔力を感じたから。魔力を感じるということは魔法を使ったということ。つまりお互い何らかの切り札を持っている。


 あの魔物は、毛を飛ばしたり動かす何らかの力を持っている。僕の場合は牙と爪。その魔法の条件や効果が相手にとって未知数。だからうかつに近づくとヤバい。隠し玉に警戒しなくてはならないと物を遠くからぶつけて来ているのだ。



「……」

「……」



 魔物には先程のようにかかって来いよこのクソ猫という雰囲気がありません。明確に僕を敵に認定しています。僕はただお家に帰りたいだけなのですが……。


 この戦いから生き抜くにはまず相手を知らなくてはならい。見た感じあの魔物もそう思っているでしょう。つまりこれは真似して正解。本当は何も考えてなかったけど知らず知らずに正しい行動をしていたみたいだね。


 僕はこの世界の戦いに関してよく分かっていない。そりゃもう圧倒的に経験不足だもん。外出しているのだって夜だけの赤ちゃんだしさ。だがあの魔物は明らかに戦い慣れている。大人と子供ぐらい身体能力に差があるのに無理せず油断すらしない。これは僕にとっては最大のピンチとしか言いようがないよ。



「……」

「……」



 まだお互い動かない。相手の出方をうかがっている。今時間があるうちによく考えなくてはならない。相手の魔法とは? 毛の魔法。魔法? ……ん? 何か引っかかる。何か忘れているような……??




 ――――――――――――――――あっ、スキル?!




 もしかしてあの魔物は何かスキルを持っているのか?! つまりこういうことなのかもしれない。まだ予測の段階だけど。



=============

【でかいまもの】

 種族 不明


 所持スキル

 ・毛を飛ばす魔法

 ・毛を動かす魔法

=============



 猫ギフトが使えるおかげで気付くことが出来た。魔物も僕と同じなんじゃないかと。だから相手のギフトを僕は考えることにした。相手が猫ならば本当かどうか確かめられたのになあ。


 戦いとは相手のスキルを知ること。スキルが分かれば魔法の効果もなんとなく分かる。相手の魔法からスキルを予測し、その対策をしていく。それが魔物、いや魔法を使うもの同士の戦い。そういう意味では完全に情報戦。どうやらこの世界も前世でも情報は大事だったようだね。


 相手が何をして何が出来ないか、まずはそれを考えて動かなくてはならない。なるほどねえ。これがこの世界における戦闘かあ。実際に戦ってみるまで考えもしなかったよ。


 でもさ、今は色々と僕にとってチャンスじゃない? 魔法を思う存分使える相手なんて今までいなかったからね。この魔物と戦いで経験を積んで猫のスキルや魔法をもっと理解したいなあ。



 よし、戦いの方針は決まったぞー!! 相手の魔法を予測し、そこからスキルを知るようなカッコいい戦いをしてやろう。あの魔物もさぞかし驚くだろう。じゃあどんどん攻めちゃうぞー! まずはこれこれ。僕なりの先制精神攻撃。



「えぐえぐおっぱい」トントントン

「……グフッ」ニヤリ



 今度は僕が魔物を挑発する。魔物が僕に対して挑発したことを真似し、可愛く地面を叩く。それを見てニヤリとする魔物。なぜか嬉しそう。



「グルォーーーーー!!」



 魔物は大きく吠え、攻撃の構えをとった。次の攻撃は突進かジャンプか。それとも毛を飛ばすのかは分からない。僕も身体強化でいつでもどこでも動けるような構えととる。




「かかってこい」

「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」




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