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194話 「子猫とハジメの森 その2」

「シロ先生、遊びに行かない?」

「今から? お腹いっぱいだからパスするわ」

「わかったー」



 といわけで僕1人で外出しております。今回の目的地はハジメの森。179話 「猫の縄張り その8」に出てきた森の名前ですよ。忘れてた人は読み返してね!



 今の僕は可愛い赤ちゃん猫の姿。なので猫魔法が使えます。ガイドブックを魔力で出来たしっぽでグルグル巻きにして持って行きます。地図が正しいのか確かめなきゃね! さらに空中に猫結界を作り、その上に乗って歩くことで空中散歩をします。下にある町を眺めながらハジメの森を探しましょう。魔法って本当便利~。



「なるほどねえ。ガイドブックにある地図、これまあまあ正確かも」



 ただこの世界の地図には北とか南とか方角が書かれていないんだよねえ。だから実際町を目で見た方が位置を楽に説明出来ます。まずはこの町の川が流れるところを目指せばいいでしょう。なので上空から目視しながら進んで行きます。



「あったあった」



 川が見えてきました。地図によるとこの近辺にこの町の入り口があるみたいですね。そこを目指しましょう!


 しばらく空中を歩くとそれらしきものが見えてきました。おや? あれってこの町の門番がいたところですね。昔来たことがありますよ。ハジメの森に行くにはこの門から出るのが一番早いみたいです。



「この門を抜けて少し進むと森があるらしいね。それにしても上空から進めば門番とか全く意味ないねえ。出入り自由じゃん。これ空中から魔物が来たら町終わるんじゃない?」



 この町の警備事情に不安を感じつつも僕は町を出ます。地図によるとこの門から出て徒歩で何分か進んだらハジメの森が見えてくるそうです。なんか遠くにそれっぽいのがありますね。もう人はいないので地面に降りて移動しましょう。



「ん? この風景どこかで……」



 どこかで見たことがあるようなないような……、あっ! 昔パパとタクシーに連れられて魔物……じゃなくて狼に魔法の実験をしたときの道に似ていますね。忘れている方は23話 「雨の日の出来事 その1」とその続きを読んでね!



「もしかしてハジメの森ってあそこ?!」




 ◆



 ハジメの森に着きました。時間短縮のため身体強化の魔法ったらすぐでした。



「ここがハジメの森……」



 僕は森の入り口を見上げます。多分1回来たことがあるけど、目の前の森は初めて見る景色です。確かあのとき人気のない森の奥まで行ったんでしたねえ。あの時は森の中だなあと思ったけどこの場所はちょっと違います。違和感があるのです。



「これ森っていう公園じゃない?」



 確かに木がいっぱいあります。が、明らかに人間の手が入ってるので林ですね。ご丁寧に道まで整備されています。それでですね、みなさん木がいっぱいある公園をイメージしてください。緑がいっぱいあるあれです。自然公園と言えば分かるでしょうか。子供達がはしゃいじゃう人気の観光スポットです。もうそれが目の前に広がっているのですよ。



「わお、ベンチまであるよ。自由に休憩出来るじゃん」



 う~ん。思っていた森と違いました。前来た森とは別なのでしょうか?? 魔物が出るかもと警戒していた僕がバカたっだのかもしれません。まあ危険があっても魔法を使って逃げれば問題ないと思います。猫は逃げ足が速いのです。



「とりあえず探索してみよう!」



 僕は気を取り直して森の中に進んで行きます。普通に整備されて歩ける道があるね。もうただの公園やないかーいと思いながらも緩やかな坂を上ります。坂が終わると開けた場所に出てきました。



「ん? 何か匂うぞ……」



 急に何かを焼いたおいしそうな匂いがしてきました。僕は匂いを辿って移動します。



「――っ?!」



 な、なんだってー?! めっちゃ人間いるじゃん?!!!


 そう、目の前には大勢の人間が肉や野菜を焼いて楽しんでいる姿が見えたのです!! んー、あのブロックみたいな大きな肉は何の肉でしょうか。僕はまだ食べたことがないので分かりませんね。匂い的にうまいこと間違いないでしょう!


 肉は専門外ですが、野菜に関しては当てる自信があります。この世界の野菜と前世の野菜の名前は基本的にほぼ同じなのです。だから今焼いているであろう野菜はトウモロコシです。今誰かがタレを塗り始めました。この匂いは醤油でしょうか? 反則的ですよ。


 やっぱこの世界って前世の日本って結構そっくりな文化なんですよねえ。明確に違うのは魔法があることだと僕は認識してます。


 話が少し脱線したので戻しますね。あの人間達が今野菜や肉を焼いている部分ですが、あれは土魔法で作ったのではないでしょうか。レンガみたいに積み重なって出来ているせいか自作のコンロって感じですね。その場で作ったのかな? ちょっと不格好な形なんだよね。まあバーベキュー用の網はどこかから持って来た感がありますが。さすがに魔法で簡単に作れなさそうだし。


 それとですが、家族連れなのか子供の姿もバッチリ確認出来ました。僕と同じような年齢の子供もいますよ。ワイワイと騒いでいて楽しそうですねえ。もしこのお話があるとしたら夏休みだろうなあ。




 ……うん。ここ完全にキャンプ場じゃん。




 驚きつつも誰かに見つかる前にそっとキャンプ場から離れます。まさか本当に人間がいるとは思わなかったのです。猫探知に反応がなかったのと匂いに釣られて油断した僕のミスなのです。


 ……ん? よく見るとあそこに何か置いてあるね。なんだあれ?? 何かの力を感じるけど感じない不思議な感覚。もしかするとあれって魔道具かもしれません。僕の猫探知は気配を感じる魔法ですが全然反応しなかったもんね。僕のお店にあんな物なかったよね?


 まあ僕ってサバイバルしたことないもん。まだ赤ちゃんだしさ。この世界ではあの魔道具を使うことが一般的な常識だったりするのかもしれません。お家に帰ったら調べよう。まだまだ勉強不足だね!


 新たな課題を見つけつつ、僕は誰にも見つかることなく移動出来ました。ふう助かったー。ここから離れて誰もいなさそうなところに行った方がいいかもね。こういうときこそガイドブックの出番です。ちなみに僕はどんなに暗くても本を読めちゃう子猫です。



「ふむふむ、ここは森の入口から入って少しの休憩所ってところかな。ご丁寧にベンチとか机がいっぱい並んでいるよ」



 やたら森の内容が詳しく書かれていると思ったらこういうことでしたか。人間の手が加わりまくってるので安全だと。まさしく公園じゃん。



「よし、場所を変えよう。この薬草があるってところに行こう!」



 僕この場所が気になっていたんですよねえ。薬草って異世界だと定番だからね。キャンプ場から少し移動すると人工的な建物が見えてきましたよ。屋根付きの広場みたいなやつね。ご丁寧にベンチもあるよ! 森としてはおかしいだろってツッコみたいのですが、人の気配はないので近づいてみます。



「お、草がある。これかな?」



 なんだか普通の雑草みたいな草が生えていますね。これが薬草かな? よく見ると草が色々と区切られて細々と生えています。この薬草以外にお花も植えてあるんですが、こちらはきれいに色分けされています。お見事と言いたいです。だってここにあるお花って僕のお家で育てている花とそっくりですもん。アーネがよく水やりしているけどここまで規模は大きくないからね。素晴らしい!



 ……ここ花壇じゃん。



 なんじゃここと思いながら屋根付き広場で黒板? を発見しました。字を書いたり消したりしているのか古びていました。それを読んでみるとびっくりしました。



「薬草の生える場所。日当たりが良いと生えやすい品種と暗くジメジメした場所を好む草品種がある。これらは見た目が似ているが違う薬草である。さらに同じ品種でも生息する場所によっては効果が変わる」



 これを見た後に花壇を見るとあーって思いました。こっちの花壇は森の中のような感じに作られ、その隣は砂場、さらにその隣は岩場でしょうか。多分ですがこの花壇は薬草の環境を再現したと思われるような作りになっていますね。んー、ここは森にある植物の知識を付ける場所的なところかな?


 誰かがここで薬草を栽培している感じはないですねえ。むしろお花がいっぱいで薬草はおまけです。割合でいうと花99の薬草1です。ガイドブックにはここに薬草があると書かれているので騙される人多いんじゃない? まあ栽培してたら盗まれると思うからこれが正解だろうけどさ。もし花がきれいじゃなかったら猫ブレスで破壊してましたよ。



 よし、別の場所に行くぞ! と道を進んで行くと、最初に見た森の入口に戻っていました。なるほどね、整備された道を進むとハジメの森をぐるっと一周して元の入り口に到着するんだねえ。長々とせずむしろ健康に良さそうな距離でした。ちゃんと考えられています。



 ……ただのお散歩コースじゃん。



 というわけでハジメの森は自然の豊かな公園でした。違う、そうじゃないんだ。僕の求めていた森はもっと冒険心をくすぐるような何かがあると思ったの!!


 ただね、お散歩コースからちょっと離れた所の木々は手付かずなんだよね。なら本当の自然はもっと奥の方にあるよね。うんうん、間違いないよ!




「よし、もっと奥に行こう!」




 ◆




 ハジメの公園……じゃなくてハジメの森の奥に来ると、そこはまごうことなき普通の森でした。どうやら森の浅いところは人の手で整備されているだけですね。これこれ、これだよ僕が求めていたの。ここからが本番です!



「猫探知!」



 生き物の気配を探してみます。するとどうでしょう。小さな気配をいっぱい感じます。でもいちばん大きいものでも僕より小さな生き物です。この周辺には大きい生物はいないみたいです。本当に魔物なんているのでしょうか??


 でも考えようによっては僕の住んでいる町は安全ってことですね。森でキャンプするぐらいだしなあ。



「もっと奥に行けば何かいるかな? よし、今日は時間あるし行ってみよう!」



 僕は軽い気持ちでハジメの森の奥に進んで行きました。そして、あれと出会ったのです。



少し夏っぽい要素を入れてみた。次回から子猫がヤバい。

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