19話 「異世界の絵本 その1」
前回までのお話
アニーキ―の秘密を知ったよ!
僕の部屋には、絵本がいっぱいあります。よく姉のアーネが読みに来ます。
「これはむかしって書いてあるの。これはくまさん」
アーネは僕に文字を教えようと絵本を近づけます。でも寝ている僕からは絵本の表紙しか見えないのですよ。最近は4歳になって姉らしく振舞っていますね。お誕生日会があったらしいのですが、僕はずっと寝ていたそうです。参加出来なくて残念した。
「えぐううう(痛いよ)」
「ねえメンテ、ちゃんと見てよ」
「アーネちゃん、メンテくんの顔に本を押しつけてはダメです」
カフェさんが僕からアーネと本をどかしてくれました。僕はついつい持っていた魔力ボールを投げ捨てます。だって痛かったんだもん。
「ふうぅぅん、えっぐぅ……」
「大丈夫よ~。ほら、よしよし抱っこしようか」
「メンテ痛かった? ごめんね」
僕が嘘泣きを始めるとカフェさんが抱っこしてくれます。アーネはピュアハートなので、しっかりと謝ることの出来るいい子なのです。
今日は、カフェさんと新人メイドが5人と人がいっぱいですね。僕はナンス家のメイドさんが多すぎて名前を把握できていません。その理由は、使用人の家族がバイトのように働きに来ているからです。お金が必要になった、子どもが成長したので働かせたい、仕事の体験をさせたいなどなど理由は様々あります。そういうときは、ナンス家がメイドとして雇ってくれるそうです。才能があればお店で働くこともあるようですよ。男性の場合は、屋敷の外の管理やら警備をするそうです。
長々と語ってしまいましたが、今日はメイドさんいっぱいです!
5人いますが全員新人です。そのため僕やアーネと遊んだことがなく、接し方に困っているようですよ。
「アーネちゃんは弟のメンテくんに、絵本を朗読しようと頑張っておられます。しかし、少し難しそうなので誰かお手伝いできませんか?」
アーネは最近文字を勉強しています。きっと姉は本が読めるんだぞと威厳を示したいのですね。兄も同じようなことしてきましたよ。似たもの兄弟ですね。
「私に任せて!」
一人のメイドさんが声を上げました。どう考えても年齢が兄貴ぐらいな気がします。あきらかに子供ですよね。
そのメイドさんはアーネに近づくとよろしくねと挨拶をしました。そして、アーネの耳元で何かをつぶやきました。
「私はモドコ・キスイダっていうの。モドコでいいよ」
「モドコ? さん、よろしくお願いします」
「うん、モドコよ。実はね、あなたのお兄ちゃんにあなたの面倒をみてと頼まれたの」
「え?! ほんとーなの?」
「そういうわけでよろしくね。アーネちゃんこっちで絵本読もーよ」
「うん!」
僕にはなぜか声が普通に聞こえましたよ。小さい声だったようですが、僕には聞き取れちゃうのです。それより兄貴に異性のお友達がいることの方がびっくりです。あと他のメイドさんより年齢が近いせいかアーネが恥ずかしがってました。年の近いお姉さん的なね。
「残った方々はメンテくんのお世話をしますよ」
「「「「かしこまりました」」」」
◆
それからは、最近見た新人さんへの指導と同じでしたね。
みなさん子供や赤ちゃんと遊んだことがないらしいので、まず一度やってみろと体験させます。難しいと理解させると、次にお手本を見せていくという定番の流れです。
「今日はメンテくんのお世話に慣れているメイドを紹介します。しっかり見習ってくださいね。ニーホさん、入ってきなさい」
扉が開くとニーホさんがこちらに来ます。みなさんお忘れかもしれませんが、ニーホ・ヤモリンさんですよ。どうやら二週間ぐらい先輩のニーホさんがお手本を見せるようです。なんだかいつもと違う雰囲気です。私できるメイドですよえへん! とカッコつけてますな。
僕とニーホさんのしっぽを使った遊びを始めました。
「しっぽ握れるかな? ほらほら~」
「だあぶう~」
僕が握る前にしっぽがスルっと抜けていきます。目の前に動くしっぽがあると、僕の体が勝手に動いちゃうのです。ついつい笑顔になってしまいますね。
「これはニーホさんの必殺技、しっぽ掴みゲームです。これが始まるとメンテくんは、笑いがとまらなくなるのです」
カフェさんの解説付きです。なんという茶番なんでしょうね! でも僕も手伝ってたね!!
あとはカフェさんとニーホさんがこうしたらいいよと説明していきます。あとは実践あるのみだそうです。毎回同じようなことを言っている雰囲気がしますね。きっとこれが黄金パータンなのでしょう。
カフェさん指導のもと新人が新人を育てる環境があるようです。
「ではみなさん、メンテくんと遊びましょう」
カフェさんの言葉で僕の目が光ります。
さあ、みなさんお待ちかねのおっぱいタイムです! さあ僕を抱っこして甘えさせて!!!!
「メンテー、絵本読むからこっちきてー」
Oh……。